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音質を高める技術的背景を開発者に聞く

「音の良いPC」を作るNECとヤマハ ー 豊岡工場で見た “こだわり” 技術

公開日 2014/09/09 10:24 コヤマタカヒロ
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初代となる2009年発売のVALUESTAR VWが採用したのも、バスレフ方式のひとつである、パッシブ(スイング)ラジエーターを採用したSR-Bassスピーカーだ。これはポートの出口にしなる振動板を設置し、スピーカー内の空気が排出されるときに、振動させることで低音を強化するものだ。ただし、「パッシブラジエーターは効率よく低音が出ますし、高音質なのですが、機構が複雑」(新井氏)という欠点があった。

このため、現在はもうひとつの方式である「ポート方式のバスレフ」を採用しているという。この「ポート方式」には当時、風きり音によるノイズ発生という問題があった。石田氏はその問題を解決すべく、数々のスピーカーを試作したという。

「PC用の小型スピーカーは非常に小さいため、ポートの径も小さくなる。その結果、風が強くなり、ポートの外に空気が渦輪のように飛び出してしまいます」(同)。

一般的なバスレフポートでは、渦輪状の空気が内外で発生する

この飛び出した空気が、スピーカーの前面を覆うグリルやフレームにぶつかったり、また、本体内でスピーカーユニットを背後から揺らしたりして、ノイズを生み出してしまうという。

羽根を使ってバスレフポートから放出される空気を実際にテストしている所。音をならすと羽根は勢いよく揺れる。これがノイズ源となる

その問題を解決したのが、現在採用している「FR-Port(フラット・ラジアル・ポート)方式」だ。FR-Portでは両端を開き、平坦にした形状を採用した。このことで、空気が出るときに渦輪にならず横方向に広がることで、ノイズの発生を防ぐことができたという。また、空気が勢いよく排出されず、FR-Portの中のみで振動することで、十分な音圧が得られているという。

「VALUESTAR N VN970/SSB」に採用しているスピーカーユニット。左からフルレンジユニット、ウーファー、そして中央部にある縦のスリットが低音を生み出す「FR-Port」だ

平たいラッパのような形状としたFR-Portでは放出される空気の形が崩れ、渦輪にはなっていない

最新のVALUESTAR Nでは32mm口径のフルレンジとウーファーによる2ウェイスピーカーを搭載している。フルレンジスピーカーにはボイスコイルの周りにダンパーとして磁性流体を採用。特定の周波数の歪みを正し、フルレンジでも振り切られることなく、十分な音圧を発揮できるという。

また、フルレンジとウーファーという構成にすることで、フルレンジ側は中高域の繊細な動きに集中することができる。さらに、振動を軽くするためにフルレンジスピーカーではボイスコイルにアルミの巻き線を採用するなど、オーディオ用のトゥイーターと同じようなプロセスで開発されている。

さらに小型ユニットによる2ウェイスピーカーという特性を生かすため、フルレンジとウーファーは電気的に並列で接続。通常はこのようなつなぎ方をするとフルレンジ側にノイズが発生してしまうが、磁性流体を採用していることで、周波数帯ごとの音圧特性がほとんどないためノイズなどの発生はなく、素直な音が出ているという。


■ハードの技術をソフトウェア化した「AudioEngine」

ヤマハは楽器メーカーとしての一面だけでなく、コンサートホールの設計などを行う、総合音響メーカーとしての一面がある。世界中にあるコンサートホールの音響の実測データを持っており、それらの情報を元にした高音質化技術を保有している。

次ページ高音質化のためにソフトウェアで採り入れた5つの技術

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