HOME > インタビュー > 記事

インタビュー

キーマンインタビュー

2chヘッドホンでマルチch再生&リアルタイム処理も −「DTS Headphone:X」の現在と将来展望

ファイル・ウェブ編集部
2013年10月04日
DTSの新たなヘッドホン向けバーチャルサラウンド技術「DTS Headphone:X」。最大11.1chのマルチチャンネルサラウンドを、通常の2chヘッドホンでバーチャル再生できるという同技術は、具体的にユーザーへどのような体験を提供してくれるのか?現在の状況と将来展望をdts Japanの伊藤哲志氏と津村茂彦氏に訊いた。

マーケティング部シニア・マネージャーの伊藤氏(左)とフィールド・アプリケーション・エンジニアで工学博士の津村氏(右)

■リアルタイム処理にも対応 − FPSゲームで実際の音を体験

「DTS Headphone:X」は、前述のようにバーチャルサラウンド対応ヘッドホンではない通常のステレオヘッドホンで最大11.1chのマルチチャンネルサラウンドを味わえるというもの。1月に開催されたCESで発表された(関連ニュース)。また、クアルコムが「Snapdragon 800」プロセッサーに採用することが決定しており、今年後半に発売する同プロセッサー搭載スマートフォンでDTS Headphone:Xが使用可能になる。

伊藤氏は同技術について「ヘッドホンで聴いてるのにスピーカーを置いて聴いているように感じられるところにこだわっています」とコメント。実際のスピーカーによるマルチチャンネル再生に続いてHeadphone:Xでのバーチャルサラウンド再生を記者も体験してみたが、思わずヘッドホンを外してスピーカーからは音が出ていないことを確認してしまうほどリアルなサラウンドを体感できた。

各chを順番に再生する手順をスピーカーとヘッドホンそれぞれで行った

なお、CESでの発表時はHeadphone:X用に処理を施したコンテンツを使ってのデモを行っていたが、同技術はリアルタイム処理も可能。マルチチャンネルのソースに対してリアルタイム処理を行える。

今回の取材ではPS3用ゲーム「KILLZONE」をプレイし、同作品の5.1ch音声をパソコンへ入力してソフトでリアルタイム処理した上で出力するというデモを体験した。

PCでHeadphone:X処理を行ってアンプに出力

「KILLZONE」は近未来の戦争をテーマにしたFPS(First Person shooter)ゲームで、マルチチャンネルでプレーすると、敵がどの方向にいるのかなどといった情報を音でも感じられるというメリットがある。例えばチュートリアルで基地内を移動する場面では、前方から聞こえていた館内アナウンスが、移動するにしたがって後方から聞こえるようになったり、会話の途中で横を向くと相手の声もちゃんと横方向から聞こえるようになるなど、Headphone:Xの効果を実感できた。

なお同社では先日開催された東京ゲームショウでパブリッシャーなど関係者向けに同様のデモを実施。「部屋の広さや響きによって音の聴こえ方は変わるため『ルームプロファイル』という情報を持たせているのですが、例えば『フィールド』や『洞窟』などシーンに連動してルームプロファイルも切り替えられないか、などといったご意見も頂戴しました。このあたりは次世代Headphone:Xに向けた今後の宿題ですね」(伊藤氏)といったような様々なフィードバックを得られたという。

■対応スマホが間もなく登場見込み

前述のようにクアルコムが「Snapdragon 800」へのHeadphone:X採用を決定しており、対応スマートフォンもまもなく登場する見込み。なお、同プロセッサー搭載スマートフォンすべてがHeadphone:X対応になるのではなく、端末メーカー各社がHeadphone:X機能を有効にするか否かを選択することになる。

デモで使用したヘッドホン。「ハイエンドモデルではヘッドホンのおかげで音が良いのではないかと思われる可能性もあるため、あえてローエンドのモデルを選んだ」(伊藤氏)という

また、Snapdragonではルームプロファイルは1種類のみになる予定だとのことで、「スマートフォンではまずプレーンコーデッドされたVODや映像コンテンツをきちんとサラウンドで再生できるようにしようというところから始まるのではないでしょうか」(伊藤氏)という。ただ「マシンパワーとの兼ね合いになるので実際にどうなるかは分かりませんが、Snapdragon 800自体にはリアルタイム処理機能も乗る予定です」(津村氏)とのことだった。

そして伊藤氏は「CESでは複数の評論家の方に体験してもらったのですが、最初は『どうせバーチャルヘッドホンでしょ?』といった感じだったのが、試聴後は皆さん『見直したよ』という評価をいただけました」とコメント。一般来場者だけでなく評論家からも高い評価を集めたことを紹介した。

dts Japanの試聴室

なお、Headphone:X対応製品としては、ゲーム用ヘッドセットを多く手がけるTurtle Beach社も参入を表明済み。こちらには「おそらく複数のルームプロファイルを持たせて、好みのものを選べるようになるのではないか」(伊藤氏)という。製品の発売時期については「年内に対応製品を出す、というアナウンスは出ているのですが、具体的な時期や発売地域は不明です。アメリカ本国のスタッフは『日本でも出るんじゃない?』というようなことを言っているのですが…」とのことだった。

また、伊藤氏は「今回はサラウンドのソースを体験してもらいましたが、逆説的に、ステレオでのHeadphone:Xという考え方もあると思います」ともコメント。「今の若い世代の方々は最初からシリコンオーディオで音楽を聴くのが当たり前で、『家にラジカセやコンポがない』というのが普通ですよね。ステレオであっても、大きめのスピーカーを正面に置いてリスニングポイントで聴くという体験をしたことがない。Headphone:Xであれば、そういう体験をヘッドホンで再現可能なので、そういった提案も今後はアリなのではないかと思っています」と続け、マルチチャンネル以外でも活用できるという可能性に言及した。

そして「CESでの発表時は『プレーンコーデッドのコンテンツしかありません』という状態で、今回は『リアルタイム処理ができます』というフェーズになりました。そして今年の冬に実際の製品が登場するのがサードフェーズです。来年のCESにはもっと多くの製品が展開されるのではないでしょうか」とコメント。

また「モバイルでの動画はヘッドホンで聴くことが前提になっているので、例えば映画のディザー動画をHeadphone:X処理の上で配信してみてはどうかという提案も行っているところです」と、コンテンツサイドへの働きかけも行っていることにも言及。「VODにおけるサラウンドコンテンツの拡充というのも間接的にはHeadphone:Xに関わってくる事項ですから、ハードウェア側を攻めるだけでなく、我々の元々の強みであるコンテンツサイドへの働きかけも行っています」とし、ハードとソフトの両面からHeadphone:X普及のための活動を行っていると語った。

関連リンク

関連記事