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注目のニューモデルを徹底解剖

“CELL REGZA”がやって来る! − 評論家 貝山知弘氏×山之内正氏が語る「55X1」の魅力<第1回・発見編>

取材・対談/貝山知弘、山之内正 構成/Phile-web編集部

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2009年11月11日

◆貝山氏、山之内氏がアドバイス − 「CELL REGZAの映像はここをチェックしよう」

− 今のお二人の話の中にもあったように、“モンスターマシン”の呼び声も高い“CELL REGZA”は薄型テレビの今後の進化に大きな影響を及ぼす製品であることは間違いないと思います。同時に、本機が登場したことで薄型テレビの画質評価に新たなステージに到達したように感じます。オーディオ・ビジュアルファンが“CELL REGZA”の映像を店頭などでチェックする際に、お二人はどんな所を映像チェックのポイントとして注目して欲しいと考えていますか。


貝山 私は主に映画ソフトで評価を行っていますので、当然話はそこから始まるのですが、映画というのは非常に多様な表現を、常に要求してくるコンテンツだと思います。最近の薄型テレビの評価ポイントとして流行しつつあることのひとつに、細部の表現の究極、「映像に含まれるフィルムのグレインをいかに表現するか」という考え方があります。

フィルムのグレインについては、あいまいな言い方も多いのですが、敢えて言うならば「物理的な意味」のグレインの他に、もうひとつ「感覚的な意味」のグレインがあると思います。

「物理的な意味」のグレインは、例えば高感度なフィルムで撮られた映像はグレインが粗いというようなことは、映像を見ればすぐに分りますが、実際にはフィルムのグレインを使いこなしながら、カメラマンがどういうルックの映像をつくろうとしているかを知ることが一番大切なのです。

映像のルックでいうグレインの中には、撮影時の天候との関係、俳優のメイクとの関係など、あらゆる要素が織り込まれています。フィルムのグレインは想像以上にシビアで、非常に壊れやすく、ちょっとしたことで壊れてしまいます。撮影済みのフィルムを一度デュープ(複製)しただけでグレインが消えてしまうことは多いのです。フィルム自体でもこのようなことが起こり得るわけですから、パッケージ化した作品から作家が意図したグレインを見つけ出し、再現するのは非常に難しいことだと思います。

ただ、感覚的なグレインは、映画を見続けていれば自然に分かってくるものでもあります。それはある場合に人の顔の細かい肌の質感と結び付いたり、或いは情景の中で細かい雨の滴と結び付いたり、そういうところで効果を上げているわけです。それが叙情の表現につながったり、登場人物の情緒の表現なったりするのです。

こういったフィルム素材ならではの表現をディスプレイでいかに再現していくかというテーマについては、これからさらに追求されていくのだろうと思いますが、その際に私は先ほど申し上げましたように、「ソフトウェアの能力」が非常に大事になると考えています。映画というものを解析していく上で、ソフトウェアが今よりも、もっともっと緻密なものになって行かなければ、この辺の表現領域にはなかなか到達しないだろうと考えています。

今回私が“CELL REGZA”を視聴して、フィルムのグレインを効果的に感じた映像を例に挙げると、『コッポラの胡蝶の夢』に登場するヴェロニカという女性のクローズアップやフルショットに表れるグレインが印象的でした。劇中では女性がある霊に乗り移られたという設定があるわけですが、そういう背景が女性の肌に表現された細かいグレインを通して伝わってくるのです。このような作家の意図が分かってくると、ディスプレイに映し出されるどんな映像に注目して行けば良いのかが自然にわかっててきます。“CELL REGZA”は繊細なフィルムグレインの表現まで、かなりのレベルで実現してきた点も注目すべきだと思います。

− なるほど。

山之内 500万対1のダイナミックコントラストというスペックも“CELL REGZA”の魅力です。これは原色を使ったり極端なピークの明るさを表現した映像だけでなく、普通の映画作品を見ていても、その優れた性能は至るところでよく分かります。

新開発の「メガLEDパネル」を搭載。新規開発のLEDドライブ回路とLEDバックライトアレイを組み込み、さらにエリア駆動にも対応したことにより1,250カンデラのピーク輝度と500万対1のダイナミックコントラストを実現した

先ほど貝山さんが例に挙げられた『コッポラの胡蝶の夢』にしても、この作品では逆光シーンの撮影が意図的に、かつ実に効果的に使われています。外光が入ってくる明るい窓を背景に、人物が座っている。その彼ら、彼女たちの表情をカメラがとらえるシーンでは、逆光の向こう側に、例えば海岸線を含む美しい景色が遠く彼方に浮かび上がる。これは十分な明るさとコントラストが、或いはまた同時に白側の階調が出せるディスプレイでなければ表現できない映像です。

他の作品では、例えば『天使と悪魔』の冒頭にバチカンが出てきて、システィーナ礼拝堂を含めてはるか上方の天井から光が入ってくる場面があります。この場所に行ったことのある方なら分かるかもしれませんが、ここは非常に特殊な光の空間ですが、実にリアルな光の再現を本機は実現していると感じました。この作品の中には、私たちがヨーロッパに足を運んだ際に「日本とは違う光だな」と感じるような、独特の光線を演出したシーンが他にも数多く出てきます。恐らく作家が意図してつくり出した映像なのだと思いますが、いずれのシーンでも“CELL REGZA”の優れたコントラスト性能を実感できるはずです。

『ベルナルド・ハイティンク指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ/マレイ・ペライア ≪シューマン ピアノ協奏曲 ブルックナー 交響曲第9番≫(以下:コンセルトヘボウ)』のコンサート映像では、会場の高い天井から射してくる独特な光の柔らかさや明るさ、光の微妙なグラデーションが“CELL REGZA”では巧みに表現されています。


このような“CELL REGZA”の優れたコントラスト性能は、店頭のデモ環境ではなかなか分かりにくいかもしれませんので、読者の方々で“CELL REGZA”の映像をご視聴される場合は、できればやはりショップを選んでいただいて、じっくりと家庭で見るような環境で視聴していただくと、今例に挙げたようなシーンで、本機の幅広い表現力が分かっていただけるのではないでしょうか。

“CELL REGZA”はバックライトのエリアを非常に細かく分割して緻密にコントロールしています。コントロールのソフトウェアも非常に進化しているように思います。ですので、先ほど申し上げたように、ただ映像のレンジ幅が広く再現されるかというだけでなく、さらにその奥を狙った映像表現が説得力を持ってくるかどうか、ご自分のレファレンスソフトで視聴される際に注意してご確認いただくと良いと思います。

LEDブロックアレイはクラス最高の「512分割」とし、表示される映像の明暗差をよりきめ細かく制御することで豊かな表現力を実現している


貝山 今の話に付け加えますが、今回は『オブセッション』という作品も視聴しました。本作は二人の黒人夫婦のところへ、白人の若い女性が割り込んできて、強引にその夫を奪取しようとするサスペンス映画です。この作品で難しいのは、黒人の肌色の表現です。黒人の肌色はいくら照明を当てても反射しないため、撮影の際に白人の顔色を落としてバランスを取っています。このニュアンスを調整で補うにはディスプレイの側に、「幅広い表現能力」と同様に、「幅広い映像調整機能」が必要になります。

先ほど山之内さんがおっしゃったように、店頭でデモを行う場合でも展示場の明るさに合わせた最適な調整値をメーカーからショップに推奨したり、或いは店頭でも画質調整が行えればとても素晴らしいのではないかと思います。

山之内 現場で調整できれば良いですよね。


貝山 『コンセルトヘボウ』の映像は、山之内さんも見事に言い当てられましたが、基本は「レンブラント光線」なんですよね。肌色で描かれた絵画にあるような光に仕立て上げていくと、あの演奏会のインティメイトで、家庭的な温かい雰囲気になるのです。これは音楽監督だったベルナルト・ハイティングが久しぶりに戻ってきて、かつての仲間と握手しながらつくりあげたコンサートです。「小澤征爾 VS ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」のような対決姿勢とはまったく違うわけですから。そういう目に見えないものも、映像では表現しているのです。ですので、このような表現をきちんと“CELL REGZA”で見せられる環境づくりも大事ではないかと私は思います。

山之内 今回はオペラ作品ですが『歌劇「ジュリオ・チェーザレ」グラインドボーン音楽祭2005』を見せていただきました。一般的にオペラのステージで使われている照明の光源は決まったものが多いので、「このブルーの光はこの光源だろう、この赤色はこれだろう」という具合に大体は想像できるものです。“CELL REGZA”を店頭でチェックする際には「映像モード」を使ってみることもお勧めします。先ほど本作を視聴した時にはモードを「映画プロ1」にして、ちょうど良いバランスに近づけられました。

− 「映像モード」を切り換えて、映像調整の実力を確認してみるのですね。


山之内 はい。これはオペラに限らずクラシック系、あるいはロック系などのコンサート映像でも良いので、何かステージものの作品を確認するときにぜひ注目していただくと、今薄型テレビの評価軸として話題になっている「色再現」と同時に、非常にハイコントラストなステージの対比が分かりやすくチェックできるので、店頭等で見る際にはとても参考になると感じました。

そして映像モードを変更してみて、自分の感性に一番近いものを探していく。本当に自分で体験したコンサートであればなお良いですが、パッケージの映像を見るだけでも大いに参考になり得ると思います。映画は周りの明るさにかなり左右される所がありますが、ステージものはそれよりは多少、明るい環境下でも“CELL REGZA”の実力を分かりやすく体験できるコンテンツではないかと思います。


貝山 優秀なディスプレイというものは、画質調整をかなり大きな範囲でいじっても基本的な画調が崩れないものです。また、細かく調整して思う画に行き着ける、そういうものだと私は思います。コントラスト性能がこれだけ高くなると、どうしても画質調整の自由度にも高い性能が求められてきますが、本機ではその辺りが非常にうまくできていると思います。

先ほどの『オブセッション』の視聴では、東芝の方に少し助言をいただいてLEDバックライトの明るさを上げて見てみると、私が期待していた画にかなり近づけることができました。このような映像調整は今までのディスプレイではなかなか考えつかない発想でしたが、“CELL REGZA”の場合はすっと簡単にできてしまう。これはとても良いことだと思います。

−対談・第2回「探求編」(11/19掲載予定)に続く−


【CELL REGZA 55X1 Specification】
●画面サイズ:55V型 ●パネル:広色域VA方式フルHDクリアパネル、白色直下型LEDバックライト ●解像度:1920×1080 ●ダイナミックコントラスト:500万対1 ●コントラスト:5,000対1 ●ピーク輝度:1,250カンデラ ●チューナー:地上デジタル×11、BS・110度CSデジタル×3、地上アナログ×1 ●内蔵HDD:3TB ●入出力端子(ディスプレイ):HDMI入力×1、D5入力×1、ビデオ入力×1、USB×1(サービス用)、ヘッドホン×1 ●入出力端子(ボックスユニット):HDMI入力×5、D5入力×1、S映像×1、ビデオ入力×3、光音声出力×1、音声出力×1、USB×3(汎用1/ 録画専用2)、LAN×1 ●消費電力:320W(ディスプレイ)、140W(ボックスユニット) ●外形寸法:1333W×963H×402Dmm(ディスプレイ、卓上スタンド取付時)、436W×109H×387Dmm(ボックスユニット) ●質量:44.0kg(ディスプレイ)、10.5kg(ボックスユニット)


◆筆者プロフィール 貝山 知弘 Tomohiro Kaiyama
鎌倉原住民。早稲田大学卒業後、東宝に入社。東宝とプロデュース契約を結び、13本の劇映画をプロデュースした。代表作は『狙撃』(1968)、『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1970)、『化石の森』(1973)、『雨のアムステルダム』(1975)、『はつ恋』(1975)。独立後、フジテレビ/学研製作の『南極物語』(1983)のチーフプロデューサー。この時の飛行距離は地球を6周半。アンプの自作から始まったオーディオ歴は50年以上。映画製作の経験を活かしたビデオの論評は、家庭における映画鑑賞の独自の視点を確立した。自称・美文家。ナイーヴな語り口をモットーとしている。

◆筆者プロフィール 山之内 正 Tadashi Yamanouchi
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。現在も市民オーケストラ「八雲オーケストラ」に所属し、定期演奏会も開催する。

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