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インタビュー

デジタルミュージック時代の音の入り口“リッピング”のクオリティアップ

技術者に訊く「PURE READ」 − 忠実なリッピングと原音再生を目指した機能の詳細を探る

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Phile-web編集部
2009年09月04日
先日山之内 正氏のレポートで検証した、パイオニアのCD/DVDドライブに搭載された「PURE READ」。“原音再生”を目指す本機能の詳細について、製品に関わったおふたりに山之内氏がインタビューした。

ホームエンタテインメントビジネスグループ
コンポーネンツ事業部 営業企画
マネージャー
近藤敏康氏:ドライブの企画を担当

ホームエンタテインメントビジネスグループ
コンポーネンツ事業部
第一技術部 設計一課
副主事
大下貴宏氏:PURE READの考案者。ドライブの設計を担当。

パイオニア(株)近藤敏康氏

パイオニア(株)大下貴宏氏


■PURE READってどんなもの?


山之内氏:私はいま自分のCDライブラリーをリッピングしてデータ化しているところなんです。いろいろなディスクドライブを使ってみましたが、どのドライブも少しずつ音が違うと感じます。

音の違いを楽しむ前提として、まず「高精度で元の音を読み取ってくれる」ことがとても重要になってくると思います。

近藤氏:そうですね。正確に元の音を読み取ることは大切です。プレーヤーやスピーカーでどんなに対策をしても、大元のデータがキチンとしていないことには意味がないと思います。

大下氏:一見綺麗に見えても、反っていたりピットの形状が歪んでいたり、傷がついていたりするディスクは多いんです。こういったディスクを読み取る際は、エラーが起こってしまいますよね。

PURE READの特徴は「パラメーターを変えてリトライすることで、なるべくデータ補間せずディスクに記録されたものを忠実に読み取る」ことです。

品質の悪いディスクや傷の付いたディスクまで忠実に読み取りを行い、信号を取り出すことができる

傷のせいで読めなかった部分は、従来だとドライブが前後の情報から予測して補間します。しかし何カ所も連続で読めない箇所が続いた場合は「前値ホールド」、つまり前の値をそのまま続けて入れてしまうんです。そして読み取れる場所が来るといきなり波形が大きく変わるので「プチッ」というノイズが発生してしまうんですね。

音楽を収めているCD-DAはエラー訂正能力がもともと低いため、エラーが発生しやすいんです。そしてどうしても訂正しきれない「C2エラー」が発生すると、データが全く読み取れなくなってしまいます。

■ハードウェア&ファームウェアの合わせ技で様々なエラーパターンをカバー

山之内氏:リッピングソフトにも速度を変えたりリトライを何度もかけたりできるものがありますが、それとはどう違うのでしょうか。

大下氏:エラーが発生した箇所を再読み取りするとき、同じ試行をただ繰り返すのではなく「違った方法でアプローチをしてみる」ところがポイントだと思います。

近藤氏:「補間したところをいかに自然にするか」ではなく「読めない部分を読めるようにする」のがPURE READ搭載ドライブの特徴です。ハードウェアとファームウェアを組み合わせてその目標を実現しています。

ハード面だけでは、個体差などの問題によりどうしても全てのパターンに対応しきれません。そこでファームウェアである「PURE READ」によるリードパラメーター制御を組み合わせることによって、さまざまなパターンをカバーすることが可能になるのです。

ハード面に加えファームウェア面からもアプローチすることで、多くのエラーをカバーすることができる

大下氏:指紋対策用、傷用、埃用などさまざまなアルゴリズムのパラメーターを変えてリトライを行います。ただ、闇雲に読み込み直しをかけるわけではありません。読めない傷を延々と読み込もうとしてしまったら、OSがエラーを起こしてしまいますから。

山之内氏:PURE READの効き具合は選べるのですか?

大下氏:ユーティリティソフトから、「パーフェクトモード」「マスターモード」「標準モード」のいずれかを選択することができます。デフォルト設定は標準トモードにしています。パーフェクトモードでは一切の補間をせず、一定回数リトライして駄目だったら読み込みを停止します。マスターモードでは、一定回数リトライしたのち、補間を行います。

反射して返ってきた光が乱れたときにどう処理するかがドライブメーカーの個性だと思います。ドライブメーカーは、放射状/円周上についた傷を模したテスト用ディスクを使って読み取り性能を検証していますが、実際のCDにつく傷というのはテストディスクとは違っていろいろな種類のものが混在しているんです。そういったさまざまな傷に、それぞれ違った対応が必要なわけですよね。全てに対応すればいいかというとそうでもなく、乱れた光をやり過ごすなど取捨選択をする必要があります。そこが技術者の力の見せ所ですね。


■今後の展開について

山之内氏:CD/DVDのマルチドライブではなく、CD専用ドライブにした場合は、性能的にもっとよくなる可能性はあるのでしょうか?

大下氏:CDとDVDの回路はもともと独立している部分もあって、そういったことはあまりないと思います。CD用にチップを作るくらいのところから始めれば、違うかもしれませんが。

ただ、BDとのマルチドライブの場合は変わってくると思います。ピックアップ部などの性能がより高くなっているので、読みにくかったディスクも読めるようになったり、読み込み時間が多少短縮でる可能性もあります。

山之内氏:いまはPC用のドライブとして単体で販売されていますが、いずれオーディオコンポにPURE READ搭載したモデルが出てくるといいですね。例えばカーオーディオで、内蔵HDDに直接CDをリッピングできるモデルがありますよね。ああいったものにもPURE READ搭載の製品があると、とてもいいなと思うのですが。

近藤氏:今後PCレスでの用途にも拡大できたら面白いですね。関連部門にもメッセージを伝えたいと思います。

山之内氏:今後を楽しみにしています。ありがとうございました。

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