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公開日 2025/09/03 06:30
改めて知りたいオーディオ基礎知識解説 Powered by オーディオランド

“オーディオ観点”での「適正な音量設定」とは?

炭山アキラ

オーディオは実に奥深く、様々な要素が音に影響してくる。だからこそ楽しい趣味なのだが、初心者のうちは分からないことも多く、また熟練したファンであっても、詳しいことは意外と知らないなんてことがあるのではないだろうか。


そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項では、改めて知りたい「オーディオにおける音量設定」について紹介しよう。


オーディオにおける “適正音量” とは?


オーディオ仲間のリスニングルームを訪れて音を聴かせてもらうと、時にビックリするほど再生音量が小さかったり、そうかと思えば耳を押さえて逃げ出したくなるほど大きかったり。皆さんの中にも、そういう経験をされた人は少なくないのではないか。


実のところ、それはそう珍しいことではない。一人ひとりで耳の感度(同じ音量をどれくらいの大きさに感じるか)は違うものだし、また男女差も大きく、概して女性の方が男性よりずっと小さな音で音楽の全体像をつかむことができるようである。このように「適正音量」とは、非常に個人差の大きなものということができるだろう。


また、音楽のジャンルによっても音量、というかボリューム位置は変わらざるを得なくなってくる。例えば、ホールの空間全体をシンプルなマイクでとらえたクラシックなどでは、弱音と強音の音量差(ダイナミックレンジ)が大きく、ボリュームは大きめに合わせなければ聴き取りづらくなるし、一方、一般的なポップス系の音源では、平均音圧を大きく取るために強めのリミッターがかかっていることが多く、ボリュームをあまり上げるとむしろ耳に刺さるような音になりがちだ。



実際に、私が音楽評をする際のボリューム位置では、クラシック系とポップス系で6 - 10dBくらい音量が違うことが確認できる。さらに極端な話をすると、一切のリミッターが掛かっていないパーカッションのソフトなどをかける際には、我が家では通常のクラシックから15dB分ボリューム位置を上げて聴くこともある。そうしないと、至近距離で聴くティンパニーの、グランカッサの音と臨場感が再現できないからだ。


うっかり安易に「ボリューム位置」の話をしてしまったが、これもあまり他者の値が参考にならない。昔はプリメインアンプかしっかりしたプリを備えたセパレートアンプが主で、さらにスピーカーも大半が90 - 92dBくらいの出力音圧レベルだったから、オーディオ雑誌でボリューム位置について取り沙汰されることが多かった。


だが昨今のスピーカーは、82 - 92dBくらいと能率の範囲が広くなってしまったし、また現在製品数が増えている小型デジタルアンプなどは、基本的にボリューム付きパワーアンプという構成が多いから、プリアンプのゲインが含まれておらず、おのずとボリュームはプリメインアンプより大きく上げなければならない。かつてより遥かにボリューム位置はバラついている、といってよいだろう。


昨今はそんなことよりも隣家へ迷惑を及ぼさない範囲、という音量の決められ方が普通になっているのではないか。特に若い人たちが多く住む昨今のアパートは、防音にまるで気を遣われていない物件も多いと聞く。ヘッドホンを愛好する若者たちの多くが、なかなかスピーカーによるオーディオの世界へ入ってこられないのは、それが大きな原因の一つではないかと考えるのだが、どうだろう。


ひるがえって我が家はどうしているかというと、住宅密度が低い郊外の一戸建てで、ごく簡易な二重窓にしているだけだが、夜中まで仕事をしても今のところ隣家から苦情がきたことはない。


それでも常用音量で家の周辺を歩いてみると、外壁の近くでは小さく音楽が聴こえる。うちはお隣が鷹揚なご家庭だからお目こぼしにあずかっているだけかもしれないが、より完璧を期すならば、防音室を施工するのがよいだろう。あるメーカーの研究室兼試聴室は、ごく一般的な民家の一室をかなり厳密に防音したものだが、室内で夜中にドラムスを叩いてもまったく音が漏れない仕様が確保されているという。


一方、ある知人が施工した防音室はそこまで厳密ではないが、隣家どころか家人からも文句が出ないくらいの仕様で、6畳間を施工して「新車1台分くらい」だったというから、その圧倒的な効果を考えれば、さほど驚くほどの金額でもないのではないか。


それでは「そこまでできないよ」という人はどうすればよいのか。亡くなられたオーディオ評論家の長岡鉄男さんは、晩年に四重窓を有する要塞のようなシアタールーム「方舟」を建てられたが、それまでは一戸建てのリビング8畳間をリスニングルームに仕立てられており、二重窓にすらなさっていなかった。超絶爆音派だった長岡氏だが、それでも「遅くまで大きな音を出さないこと、近所付き合いをこまめにしておくこと。これで結構何とかなるものだよ」と微笑まれていた。




長岡鉄男氏の肖像



シアタールームの元祖「方舟」



音量の大小で音楽の表情がガラッと変わってしまうことは、決して珍しくない。皆さんも、お好きな音楽を好みの音量で楽しまれていることを願っている。


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(提供:オーディオランド)

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