DALIの精粋を感じる、中核“OBERONシリーズ”の魅力。代表スピーカーの妥協なき音を聴く
岩出和美デンマークのスピーカーブランドであるDALI(ダリ)。
そこで本項では同社のスタンダードといっていい位置付けのOBE
ドライバーへの造詣とデザイン性
ダリのネーミングは「Danish Audiophile Loudspeaker Industries」の頭文字から取られている。創業は1983年で、グループの総帥ピーター・リンドルフが、お国柄といえる優れた電磁変換技術と木工を併せ持ち、音楽への変わらぬ情熱と、手頃な価格で高品質なスピーカーを、という思いで立ち上げられた。DALI HOLDINGS傘下のショップでは世界で名を馳せる製品を販売しているので、それらに負けない製品を作ろうという思いがあったと聞く。その対象のブランドのひとつがB&Wだったらしい。奇しくも現在同じ国内代理店に収まっているのは何か因縁めいている。
我が国でダリの存在を知らしめたのは、何といっても小型2ウェイのMENUETだった。1992年の販売で、ひときわ小型かつ安価、そして好ましい音という評判だったのを覚えている方も多いに違いない。その後ブランドのヘッドとなるラース・ウォーレ(Lars Worre)の手腕により、規模が拡大し、現在専業としては有数のラインを持つブランドに成長した。ここではその多数のラインの中から、アフォーダブルプライスレンジのOBERONシリーズの中からOBERON 3とOBERON 7を取り上げることにする。また加えて同シリーズに大きな影響を与えた、RUBIKOREシリーズから、RUBIKORE 2を参考に試聴紹介する。
OBERONはポールピース部にSMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)材を使用した独自の磁気回路をスタンダード・ラインとして初めて投入したシリーズ
ダリはピュアオーディオジャンルで、7つの製品群を持つ。フラッグシップのKOREとレジェンドとしてのMENUETを除いてである。OBERONシリーズは価格帯で言うと下から2番目で、同ブランドを体験するにはちょうどいいクラスといえよう。それは内容を見るとダリが培ってきた思想や技術が色濃く反映されているからだ。軽量強靱なウッドファイバーコーン、ダリ特許のSMC(ソフト・マグネティック・コンポジット)テクノロジー、そしてモダンな北欧デザインなどはその最たるものであろう。家庭においてマッチするデザインで、ダリクオリティが実現できるというわけだ。
RUBIKORE 2 暖かく親密で細やかな再現
まずはダリを代表する高級ブックシェルフRUBIKORE 2を聴いて、ダリサウンドの現在位置を確認することにする。RUBIKORE 2は16.5cmウーファーをベースにした2ウェイ機で、後ほど紹介するOBERON 3とほぼ同様の構成だ。磁性流体を使わない上級のトゥイーターやコンティニアスフレアのバスレフポートなど上級モデルらしい風格を備えている。
サウンドはその外観を裏切ることなく極めて上品で暖かみに溢れるものだった。リファレンスで確認していたB&Wの801 D4とはグレードの差こそあれ、当然のことながら方向性を異にするものだった。最初に聴いたのがマヤ・デライラの「ロング・ウェイ・ラウンド」。22歳女子の感受性の塊のようなヴォーカルを暖かめに親密に細やかに再現した。リファレンスでは克明精密であったので、このあたりに両ブランドの位相が聞こえて興味深かった。
最近よく聴いているエンジ「ULAAN」はモンゴルのオルティンドとジャズのフユージョン。エンジの良くのびる声は柔らかく、バックの低音も深く良くのびる。藤井郷子東京トリオ「ドリーム・ア・ドリーム」は欧州ツアーでのパリ録音。相変わらず原音むき出しの瞬発力が聴き所。藤井のピアノは明るく若干軽めのタッチだ。
北欧つながりで聴いたのがモニカ・セッテルンド「ワルツ・フォー・デビー」。リファレンスのアンプにヘーゲル「H400」を使用しているので、これはまさにヒュッゲの極み。モニカの抑揚のある暖かい声、ビル・エバンスの穏やかかつインパクトあるピアノは至福だった。
OBERON 3 暖かいタッチで音楽を楽しませてくれる
※2025年7月1日(火)より129,800円(ペア・税込)に価格改定
OBERON 3は18cmウーファーをベースにした2ウェイバスレフ機。ウーファーの口径は前述のモデルから比べ大きくなっており、当然低域の限界も若干拡張している。もちろん伝統のウッドファイバーコーンだ。トゥイーターも29mmソフトドームで、ともにダリのお家芸といえるドライバー技術の反映だ。
そのサウンドだが、5倍の価格差があるのでさすが上級と同じとはいえない。しかしそのエッセンスは確実に引き継がれている。それは音楽性といったら曖昧すぎるか。いずれのソースも豊かで暖かなタッチで、音楽を楽しませてくれる。「弦と打楽器……」の表現も深い。低音域の拡張のせいかもしれない。
マヤ・デライラやエンジのヴォーカルはウォームで聴きやすい。ダリの精粋を持ちながら、使いやすいサイズとデザイン、そしてプライスにまとめた点に注目したい。
※2025年7月1日(火)より82,500円(ペア・税込)に価格改定
OBERON 7 鳴りっぷりの良さが加わり広大な音場感を再現
※2025年7月1日(火)より129,800円(1本/ペア販売・税込)に価格改定
同口径のツインウーファーとしたのがOBERON 7。2ウェイ構成は同じだがクロスは若干下がっている。低音域の拡大と能率が向上し、のびのびとしたサウンドが期待できる。実際に聴いてみると、OBERON 3の美点に加えて鳴りっぷりの良さが加わった。エンジ「ULAAN」では声の柔らかさが増し、音場感がより広くなった。
藤井のピアノは深く沈み、ハイハットのインパクトも強く表現された。モニカ・セッテルンドでは声がよりふくよかになり、チャック・イスラエルのベースプレイを生き生きと際立たせてくれた。本機の評価ポイントとしては、普通の家庭でも使えるスリムな投影床面積のトールボーイでありながらパフォーマンスが高いという点だろう。
両機を試聴しての印象だが、世界のスピーカーが犇めく激戦価格帯にあって、積極的に選択すべき魅力があると思った。それはドライバーへの造詣、デザイン性、そしてなによりダリの音が反映されていることだ。
※2025年7月1日(火)より181,500円(ペア・税込)に価格改定
77,000円(1本・税込)
※2025年7月1日(火)より82,500円(1本・税込)に価格改定
※仕上げはDW(ダークウォルナット)と BA(ブラックアッシュ)、 LO(ライトオーク)、 WH(ホワイト)の4種類から選択が可能。「OBERON 9」のみはDW(ダークウォールナット)、BA(ブラックアッシュ)の2色で展開●DALIの取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス
OBERONシリーズは上位モデルと比較してもダリのエッセンスを十分に感じることができた
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー197号』からの転載です
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