KEF、エントリー級アクティブスピーカー「Coda W」。上位機譲りのユニットや技術で“妥協なし”
編集部:松原ひな子KEFは、没入感あるピュアで正確なサウンドとシンプルで飽きのこないデザインを融合させたアクティブスピーカー「Coda W」を10月21日から順次発売する。価格は129,800円(ペア/税込)。カラーはミッドナイト・ブルー/ニッケル・グレー/モス・グリーン/ダーク・チタニウム/ヴィンテージ・バーガンディの5色を用意する。
Coda Wは、同ブランドのエントリークラスに位置付けられるアクティブスピーカー。独自の音響テクノロジーによる高いサウンドパフォーマンスと、有線およびワイヤレスの接続に両対応するシンプルで使いやすい操作性を追求しながら、価格は手が届きやすいレンジに抑えることで「Hi-Fiへのファーストステップ」となるモデルを目指したという。
メディア向けに実施された発表会には、ブランドの本拠地イギリスから音響開発チームのトップであるジョージ・パーキンス氏(以下、ジョージ氏)が来日。Coda Wの音響設計にあたっては、さまざまなパーツや技術の組み合わせを試作し、高音質と価格レンジのバランスを徹底的に追求したという。当日は開発コンセプトや搭載されたテクノロジーについて、詳細に解説してくれた。
ドライバーは独自の第12世代「Uni-Q」を投入。直径25mmのアルミニウムドームトゥイーター、直径130mmの合金製(マグネシウム/アルミニウム)ミッドレンジウーファーを各1基ずつ採用した2ウェイ構成となる。
トピックとなるのが、ミッドレンジウーファーに同ブランドのアクティブスピーカー “LS50シリーズ” と同一のドライバーを採用している点。Coda Wの価格レンジを考慮すると本来は高価なパーツだが、試作の結果、ミッドレンジに高精度のドライバーを採用してなるべく大きなUni-Qを搭載することが、サウンドパフォーマンスの向上にもっとも効果的だったのだという。
加えて、トゥイーターはCoda W専用に再設計を施した。高域の再生だけでなく、後述のDSPとの組み合わせによって全体のパフォーマンス向上を図っている。
Uni-Qはトゥイーターをウーファー/ミッドレンジコーンの音響中心部に配置することで、ドライバーを点音源として機能させて、試聴位置や姿勢に制約を受けにくい均一な拡散と正確なイメージングを確保するKEF独自の音響テクノロジー。スピーカーのタイプやラインナップの位置付けを問わず、同ブランドのほぼすべての製品に採用されている。
アンプはドライバー1基に対して1基、2ウェイ構成のため各スピーカーに2基ずつ搭載している。トゥイーターとウーファーそれぞれの特性に適した設計を施した。いずれもクラスDアンプを採用し、合計出力は200W。
ジョージ氏は「ミッドレンジの明瞭さ、ベースのインパクトなどに注力しています。コンパクトな容積に対して、驚くほど広いスケール感、また点音源による適切なイメージングをご体感いただけます」とコメントしていた。
さらに、本体にフォノイコ(MM型)を内蔵している点もうれしいポイント。本体背面のRCA端子とフォノイコ非搭載のアナログプレーヤーを直結して再生できる。RCAライン入力にも対応しており、フォノイコを内蔵したアナログプレーヤーの場合も、手軽にレコード再生を楽しむことができる。
音楽信号をインテリジェントに最適化する独自のDSPアルゴリズム「MIE(Music Integrity Engine)」も、Coda W専用にチューニングして投入。音量に適したクリアな再生を実現するとともに、サウンドのディテール、正確性を高めた。
またMIEは一般的なDSPと比べて、複雑なプロセスを経ずシンプルに再生につなげることで音質へ寄与しているという。ジョージ氏は「音楽再生にあたり、非常にジェントルな方法を取っています」と説明。クロスオーバー周波数の調整、ベースコレクションおよびベースエクステンションだけでなく、使い心地や操作に関するコントロールも担っている。
なお、プライマリースピーカー(R)とセカンダリースピーカー(L)は音響的に同一の構造設計を採用している。スピーカー間にはUSB Type-Cケーブルによる有線接続が必要で、最大96kHz/24bitの伝送に対応する。本体にはUSB Type-Cケーブル(3m)が付属する。
ワイヤレス接続ではBluetooth Ver.5.4をサポート、コーデックはaptX Adaptiveのほか、最大44.1kHz/16bitの再生に対応するaptX Losslessにも対応している。
入力端子にはHDMI(ARC)×1基、光デジタル×1基、USB Type-C×1基、RCA×2基(1基はMM型フォノステージ搭載)を装備。USB Type-Cは最大192kHz/24bitまでのデコードに対応。ほかサブウーファー出力端子を装備しており、低音の強化も可能。
外観デザインはモダンクラシックをテーマに、シンプルながらHi-Fiスピーカーのトラディショナルなテイストも採り入れている。また、家のどこに置いてもフィットするサイズ感と仕上げを目指した。
ジョージ氏は「KEFにとって、デザインはサウンドと同じくらい重要な要素」と明かし、Coda Wについて「ミュージックラバーやオーディオマニアのみならず、ちょっといい音で音楽を楽しみたいというライト層にも受け入れていただけるよう仕上げました」と説明している。
天面に入力切り替えや音量が操作できるコントロールパネル、前面にスピーカーの状態を示すLEDインジゲーターを装備する。
ほかアプリ「KEF Connect App」では、入力の変更/ボリューム調整/電源のオンオフ/EQプリセットの選択などが操作できる。アプリは10月28日から使用が可能になる。
専用のオプションとして8mの長尺USB Type-Cケーブル「C-Link cable」、スピーカーグリルなどを用意するほか、スピーカースタンド「SQ1 Floor Stand」など、既存のラインナップにも対応。
再生周波数帯域は41Hz – 20kzHz。外形寸法(スピーカー単体)は168W×285H×268Dmm、質量(セット)は11.3kg。
エンジニアリングカンパニーとして妥協のない音に仕上げた
“Codaシリーズ” は、独自の音響テクノロジーを投入しつつ手の届きやすい価格帯のモデルに仕上げることをコンセプトに、1971年に発売されたオリジナルモデル「Coda」から進化を重ねてきたシリーズである。その後1990年代に発売された「Coda 7」は、当時のKEFの経済情勢を救うほどの人気モデルだったという。
Coda Wはそのシリーズ名を継承しつつ、パッシブタイプのブックシェルフ型スピーカーだった前モデルから、アンプ内蔵かつワイヤレス接続に対応するアクティブスピーカーとして刷新された。
ちなみにCoda Wの「W」は「Wireless」のWとのこと。Hi-Fiへのファーストステップとして、独自のテクノロジーによる高音質だけでなく、プラグアンドプレイが可能なシンプルな操作感を両立するためだという。
また、同ブランドは同じ価格帯にワイヤレスアクティブスピーカー「LSX II LT」をラインナップしている。LSX II LTが、Hi-Fiに敷居の高さを感じているようなユーザーに向けて、インテリアのように導入できるアイコニックなデザインとコンパクトサイズを備え、Wi-Fi対応によりステレオだけでなくマルチ構成でのストリーミング再生に適しているのに対して、Coda Wは、サイズの大きいUni-Qを搭載してサウンドパフォーマンスのアップグレードを図っているほか、フォノ端子を搭載、モダンクラシックなデザインに仕上げるなど、より趣味性の高い要素を採り入れた。
ジョージ氏はKEFで15年ほどエンジニアを務め、その間すべての製品の開発に携わってきたという。近年ではCoda Wに加えて、同ブランド初のサウンドバー「XIO」の開発における中心人物として活躍した。
KEFは「Hi-Fiの民生化」をブランドミッションとして掲げ、エントリーからフラグシップまですべての製品の音響設計を同じメンバーが担当するエンジニアリングカンパニー。ユーザーが「KEFのどの製品から手に取っても、魅力的なHi-Fiの世界が感じられるように」と、ラインナップの位置付けにかかわらず、エンジニアが納得するまでパフォーマンスを追求する姿勢を貫いている。Coda Wについても「妥協はない」と力を込めた。
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