DVD/5.1chは「DEMONSTRATION DVD SURROUND.9 DTS」からのいくつかの作品・場面で確認した。
まずは「キル・ビル」。この作品はデフォルメされた効果音が多いが、そのサラウンド的・音色的な面白味を十分に楽しめる。ゴーゴー夕張が振り回す鉄球の効果音は眼前まで迫ってくるし、その鉄球と日本刀の金属的な効果音も切れ味鋭い。
「イノセンス」の食料品店の場面では、入り口の扉の開閉音に施された象徴的なエフェクトが、前方からの音だけでとは思えないほどに、左右から後方に“ぶわぁっ”と広がった。その後の高S/Nで微細な音が各所にちりばめられた異質な空間性も再現する。ほぐれよりも密度を感じるタイプで解像度は強調されないが、音数は多く、情報量は十分に確保。場面の緊張感も高い。
構築された空間に誇張感・違和感がないことも印象的。処理を最小化した効果と言われればなるほどである。
CINEMARIUMのように進化したフロントサラウンドシステムは、5.1chシステムの代用ではなく、音場表現的に異なるメリットを持つ選択肢として捉えるべきだ。後方への音の回り込みは5.1ch システムに及ばないが、全方位の音の自然なつながりは、リアスピーカーがない恩恵と捉えることもできるからだ。CINEMARIUM の音にはその可能性を感じさせる説得力があった。
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