試聴は恵比寿のマランツショールームで行った
今回、試聴は恵比寿のマランツショールームにて行った。“CINEMARIUM”「ES7001」を専用ラック「RM7001」に設置。サブウーファー「SW7001」もセットしてあったが、基本的にはオフの状態で試聴した。

なお、試聴スペースは左側が壁、右側がオープン。普通に考えれば悪条件だが、反射を利用せず設置環境に影響されにくいというOPSODISのデモには逆に適している。

最初に聴いたのは、バイノーラル録音の環境音SACD。ES7001にはバイノーラル録音ソースに対応するモードが用意されており、ヘッドホン再生が前提のバイノーラルソースを、スピーカーで楽しむことができるのだ。

バイノーラル録音自体の特性もあるのだろうが、2chソースからこれだけの立体感を引き出せるとは想像を超えていた。夏の田園の夕暮れ時を思わせる、カエルの声、そして夕立の音の録音だったのだが、特に印象的だったのは雷鳴が空から聴こえてくることだ。「天井から」ではなく「空から」と表現したくなる、距離感というより、高さや遠さまでもが感じられた。バイノーラル録音のディスクを所有しているユーザーはあまり多くはないだろうが、ES7001の音場再現性を示す一例として参考にしていただきたい。

本機のリモコン
次に筆者がリファレンスとしているCD/SACDを聴いてみた。もちろんこれは通常のステレオ録音。ES7001でステレオソースを再生する場合にはOPSODIS技術によって一般的なステレオスピーカー配置(正三角形配置)がシミュレートされ、音場は実に自然に違和感なく広がる。

まずはJacintha「Lush Life」(SACD/ステレオトラック)。ベースやバスドラムの重量感はそれなりに確保されていると感じた。特にベースはうまく引き締められており、厚みなどを誇張していないところがよい。シンバルは無用に厚くならず、ドラムス全体の奥に引いた定位も的確。ボーカルがまとう湿度感も落とさない。

続いてFAKiE「To The Limit」(CD)でも、フラメンコギターを用いてのパーカッシブな奏法のキレを見事に再現。立ち上がりの早さと乾いた響き、コード各音の粒立ちもよい。サラウンド再生を主としたシステムではあるが、ステレオ再生のクオリティもかなりのものだ。

DVD/5.1chは「DEMONSTRATION DVD SURROUND.9 DTS」からのいくつかの作品・場面で確認した。

まずは「キル・ビル」。この作品はデフォルメされた効果音が多いが、そのサラウンド的・音色的な面白味を十分に楽しめる。ゴーゴー夕張が振り回す鉄球の効果音は眼前まで迫ってくるし、その鉄球と日本刀の金属的な効果音も切れ味鋭い。

「イノセンス」の食料品店の場面では、入り口の扉の開閉音に施された象徴的なエフェクトが、前方からの音だけでとは思えないほどに、左右から後方に“ぶわぁっ”と広がった。その後の高S/Nで微細な音が各所にちりばめられた異質な空間性も再現する。ほぐれよりも密度を感じるタイプで解像度は強調されないが、音数は多く、情報量は十分に確保。場面の緊張感も高い。

構築された空間に誇張感・違和感がないことも印象的。処理を最小化した効果と言われればなるほどである。

CINEMARIUMのように進化したフロントサラウンドシステムは、5.1chシステムの代用ではなく、音場表現的に異なるメリットを持つ選択肢として捉えるべきだ。後方への音の回り込みは5.1ch システムに及ばないが、全方位の音の自然なつながりは、リアスピーカーがない恩恵と捉えることもできるからだ。CINEMARIUM の音にはその可能性を感じさせる説得力があった。