OPSODISも含めて、反射を利用しないタイプのフロントサラウンド技術の中核的な手法はクロストークキャンセルというものだ。
人間の聴覚は左右の耳に聴こえてくる音の差で音場を認識する(左右の目による立体視と同じようなことだ)。左右の耳に聴こえる音をうまく操作できれば、「聴覚をだます」ことで空間性を生み出すことができるわけだ。
その操作手法がクロストークキャンセル。単純化して言うと、右の耳に聴かせたくない音があれば、それと逆位相の制御信号を生成して左chから出すことで、聴かせたくない音を打ち消すというものだ。
ところがこの方法では、左の制御信号をさらに打ち消すために右の制御信号、それをさらに打ち消すために…という処理を何度も繰り返す必要がある。非効率的だし、打ち消すための信号が無数に生成されるためか、S/Nも悪くなる。
そこでOPSODISはクロストークキャンセルに新たな手法を採用している。逆相ではなく位相が90度異なる制御信号を生成することで、左右ch間に減算(相殺)だけではなく加算も発生させ、利用しているのだ。
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従来のクロストークキャンセルの方法。制御信号を打ち消す処理が無数に行われる |
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OPSODISでは音の位相が90度異なる制御信号を利用し、聞かせたい耳だけに音を届けることができる |
それによって処理は最小化され、音質への影響も最小化。ディスクに収録された本来の音を忠実に再現できるようになった。さらには試聴位置のスィートスポットも従来方式より広がっているという。
また、この独自のクロストークキャンセルの実現にはスピーカーユニットの配置も大きな役割を果たしているという。
CINEMARIUMでは中央から左右に広がるようにトゥイーター/ミッド/ウーファーとユニットが配されているが、これはOPSODISの理論に基づく厳密な配置となっている。従来のスピーカー配置(ユニットは縦一列、リスナーに対して正三角形の60度配置)では、左右間での位相の問題でリスナーの聴覚に届きにくい周波数がいくつも存在してしまうが、この配置ならばその問題を回避できるのだ。その優れた特性がベースにあってこそ、高精度かつ高効率なクロストークキャンセルが実現したのだ。 |