ブロードバンド環境と組み合わせたPCは、ネット上の膨大な音楽ライブラリへの入り口である。日本でも昨年から音楽配信サービスが本格始動し、ジャンルや利用方法も急速に多様化しているので、インターネットとリンクした新しい音楽市場がまさに開かれようとしてる。特に本機のような高音質仕様のPCは、音にこだわった音楽配信サービスで本領を発揮する。

その代表的なものが、オンキョーが昨年夏に開始した「e-onkyo music store」である。MP3のような圧縮率の高い音声フォーマットではなく、24bit/96kHzまたは16bit/44.1kHzのWMAロスレス形式での配信を実現した注目の高音質配信サービスで、数はまだ少ないが、ポピュラー、ジャズ、クラシックの高音質コンテンツが揃っている。会員・非会員いずれも1曲単位でオンライン購入が可能で、音楽データはPCのHDD上にダウンロードし、PCで再生して楽しむという利用スタイルが基本だ。

「e-onkyo music store」には24bit/96kHzソースをはじめ、高音質な楽曲データが揃っている 24bit/96kHzソースだけを集めた特設コーナーも用意 楽曲の詳細データを閲覧することもできる

本機から同サイトにアクセスし、オクタヴィアレコードやナクソスの高音質音源を中心に試聴してみる。高圧縮の配信サイトに比べるとデータ量が多いとはいえ、ダウンロードに要する時間は僅かで、ライセンスの発行もスムーズに行われた。

試聴中の筆者

24bit/96kHzフォーマットで配信された曲の再生音は、倍音領域まで自然に伸びたレンジ感があり、ステージの前後と奥行き方向の広がりまでしっかりと描写してくる。PCの再生音とは思えない空間表現力は、おそらく周波数レンジの広さに由来するものだろう。音の立ち上がりが俊敏で残響の見通しが良いことも特筆すべき点である。楽器編成の小さい室内楽曲では、奏者の呼吸や身体の動きのような微妙なニュアンスまで再現し、音楽の流れや緊張感が途切れない。圧縮音声とロスレス音声の最大の違いは、まさにそこにある。そうした微妙なニュアンスの有無によって、音楽の味わいはまるで変わってくるのである。

16bit/44.1kHz形式のソースは、CDで聴きなれたバランスの良い響きに良さがある。やはり圧縮音声とは質感が大きく異なり、空間再現はもちろん、声や弦楽器の響きの持続感や、音色のテクスチャーに期待通りの違いを聴き取ることができた。

急速に増えている動画配信サイトにも接続してみた。ハイビジョンコンテンツをフラットディスプレイに表示すると、デジタル放送に迫る精緻な画面が現れて驚かされる。いまはまだ内容を伴うプログラムが少ないのが難点だが、可能性を秘めたメディアであることは間違いない。