この度、東京・新宿のAKM本社試聴室にて、サウンドボード“Koto”及びニュー・リファレンスの“Ongaku”を比較試聴する機会に恵まれた。高層ビルの内部に広大なスペースを持つ各種デバイスのテストルームがあり、その一角にデバイスメーカーとしては異例とも言える本格的なオーディオ専用試聴室が設けられている。再生装置は、その先進的なサウンドに定評があるDALI社のスピーカーシステム「Helicon 400」を中心に構成されたマニア志向のシステムである。
AKMが本社に構えるオーディオ専用試聴室。ブランドの音づくりに対する意気込みの強さが感じられる、充実した設備を備える(≫写真はクリックで拡大します)
スピーカーシステムにはDALI社の「Helicon 400」をセレクト(≫写真はクリックで拡大します)
今回はサウンドボード“Ongaku”と“Koto”を聴き比べ、それぞれの個性を明らかにしていった(≫写真はクリックで拡大します)

サウンドボード“Koto”及びニュー・リファレンスの“Ongaku”の比較試聴では、圧倒的なパフォーマンスの違いが実証され、同時にAKMのサウンドボード製作テクノロジーの確かさ、デバイス自体の入力ソースに対する忠実度の高さや音楽描写性の高さなどが改めて確認できた。サウンドボード“Koto”では、聴感的な周波数レンジの拡がりは程よく抑えられ、低域から中低域の軽いエネルギーのふくらみと拡がりに高域の明るい輝きを対比させたメリハリとバランスが感じられた。低域はダイナミックで力強く押しだされ、中域音像はエネルギーの肉付きが良好だがフォーカシングは甘め、高域の粒立ちは感じられるが音の粒子感は粗め、音場空間は低域方向で豊かな傾向で、音像と融合する印象だ。

一方、ニュー・リファレンスの“Ongaku”では、聴感的な周波数レンジは両翼にスッキリと拡がり、帯域内にエネルギーを均一に肉付ける高密度のフラットバランスである。帯域内の音色・音質も均一で音の粒子はきめこまやかだ。低域音像は明瞭にフォーカスされて間接音成分との分離もよく、中域音像は輪郭の内側に音の粒子が一杯に詰め込まれ表情も豊かだ。高域は抜けがよく細やかな音の粒子が高密度に肉付き厚く、アコースティック感、及び雰囲気情報が豊かで空間も澄み切りクリーンな印象を受ける。サウンドボード自体の入力に対するカラリゼーションがなく、各ソースの録音環境の違いを忠実に映し出すコンポーネント品位だ。DAC自体の素直な性格が再生音に素直に反映する理想的なボードと紹介できる。
AKMのサウンドボードをプロデュースし、各デバイスのサウンドを決定するのは、同社において“サウンドマイスター”として活躍する佐藤氏の役割である(≫写真はクリックで拡大します) サウンドボードのニュー・リファレンス“Ongaku”を手に取る斎藤氏(≫写真はクリックで拡大します) “Ongaku”の試聴では、AK4396の優れた性能をあらためて確認することができた(≫写真はクリックで拡大します)
AKMのオーディオコンバーターは、世界で約30%(※1)を占める、業界でのトップ・シェアを実現してきた。今後はこのブランディングを契機にエンドユーザー、また、海外までの知名度向上が推進する。PCではインテル・ブランドに例えられるように、オーディオコンポーネントにもAKMのブランド・ロゴが貼られる時代が訪れる日は近いかもしれない。

※1 IMSリサーチ2005調べ