待望の中級ハイブリッドイヤホン

AKG「N40」を3人の批評家がレビュー。“3つのAKG史上初”イヤホンの実力を徹底解剖

岩井 喬/野村ケンジ/山之内 正

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2016年07月29日
AKGから新たに登場したイヤホン「N40」は、3つの"AKG史上初”=「ハイレゾ対応」「MMCXリケーブル対応」「耳掛け式スタイル」を実現したモデルとして大きな注目を集めている。今回、「N40」を3人の評論家がレビュー。それぞれの視点から本機登場の意味とその魅力を解剖する。

AKG史上3つの“初”を持つイヤホン「N40」



岩井喬がレビュー

良いとこどりの新世代ハイブリッド機

AKGの新たなハイブリッド2ウェイモデル「N40」の誕生は、フラグシップ「K3003」以来となる久々の高価格帯イヤホンということもあり、音を聴く前から期待度は高かった。

実際にN40の音を聴くと、自然で伸び良い落ち着きあるK3003と地続きの上品なサウンドを継承していることに気づく。ここ数年、ダイナミック型ドライバーとBA型ドライバーを組み合わせたハイブリッド・マルチウェイ形式のイヤホンが数多く登場しているが、その完成形としていまだに多くのリスナーを虜にしているのが「K3003」だ。筆者もK3003を愛用しているが、N40はそのK3003の特長でもあったバランスの良さ、ネットワークを使わないアコースティックなサウンドチューニングによる鮮度の高い素直な空間性、シームレスな高域と低域の繋がりを引き継ぎながらもリケーブルまで対応させた、良いとこどりの新世代ハイブリッド機だ。

もちろん3ウェイから2ウェイ構成にまとめられているので、K3003と同等のサウンドを期待するのは難しいが、昨今増えてきたハイブリッド2ウェイモデルの中では抜きん出た質感表現力を持っている。

中高域用としてBA型ドライバーが1基、低域用に8mm口径のダイナミック型ドライバーが1基搭載されている

基本的に開放感高くヌケ良く爽やかなサウンド性で、ボーカルをはじめとした音像は適度な厚みを持ち、伸びやかで輪郭を素直に描く大人びた音色だ。クラシックの管弦楽器は倍音成分の艶やかさをほんのりと加えた潤い良く明瞭な響きで、低域方向の制動も高く、音場はクリアにまとめてくれる。しかしソリッドな傾向ではなく、ダイナミック型ドライバーがもたらすふくよかなボディの密度感も同時に味わえ、非常に充実したハーモニーを堪能できた。

ジャズピアノの響きも透明感があり、ハーモニクスを爽やかに表現。ウッドベースは弾力良く伸び、女性ボーカルは口元の艶をクールに描き出す。ボディ感をほんのりと加えた傾向で肉付き良く安定した存在感を放つ。様々な音楽ジャンルをバランス良く鳴らし込む許容範囲の広さもN40の魅力のひとつだ。

付属品ではないが、ケーブルを交換し、バランス駆動でも試してみたところ、S/N感の向上に加え、よりリアルさが増してきた。音像を引き締めて空間のクリアさを確保するとともに、解像感高く個々の音を丁寧にトレース。元来持ち合わせている品の良さも相まって、ナチュラルで有機的なサウンドを聴かせてくれる。基本スペックの高さによって、使用環境やリケーブルの効果も的確に表現する、ストイックな一面も持ち合わせているようだ。

リケーブルにもAKGイヤホンとして初対応。端子は汎用性の高いMMCX

K3003由来のメカニカル・チューニング・フィルターもユーザーライクであり、基本的な音色を変えることなく、高域方向の際立ちや低域のファットさをコントロールできる。

3種類のメカニカル・チューニングフィルターを交換して音をカスタマイズすることも可能

“HIGH BOOST"はホーンセクションやシンバルなどの響きがよりブライトなものとなり、ボーカルの輪郭感だけでなく、低域方向のアタックの芯も締まるように感じた。その分音場のクリアさもより感じやすく、高域方向の余韻の清々しさを満喫できるだろう。

一方“BASS BOOST"ではキックドラムやベースの帯域に置けるボディの太さ、密度感が増すイメージであるが、中高域のヌケ感を妨げることなく存在感を強く押し出す傾向だ。あからさまな低域ブーストではなく、穏やかな効き具合といった感触でとても品が良い。この丁寧なサウンド品質がAKGならではの特色といえるだろう。


続いて野村ケンジがレビュー

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