開発エンジニアが語るKEF“新リファレンスシリーズ”の秘密

公開日 2007/01/26 15:55
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既報の通り、英KEFは最高級スピーカーシリーズ“REFERENCE(リファレンス)”の製品ラインナップを発表した。国内では、同シリーズの第1弾モデル「Model 203/2」(関連ニュース)が昨年末から発売されており、注目が集まっている。

今回、新リファレンスシリーズの開発を指揮した、GP Acoustics社シニア・アコースティック・エンジニアのアンドリュー・ワトソン氏が来日。音元出版を訪れ、新シリーズの概要を説明してくれた。

シニア・アコースティック・エンジニアのアンドリュー・ワトソン氏

KEF「Model 203/2」

同社スピーカーのコンセプトは、「ナチュラルな音作り」」というシンプルな言葉に要約できる。ただし、何をナチュラルに感じるかは聞く者によって異なる。このため、世界的にも最も早い時期に導入したコンピューター解析を駆使しながら、製品ごとに音作りがバラつくことのないよう、細心の注意をもって開発が行われている。

新リファレンスシリーズのハイライトは、何と言っても新しくなったUni Q(ユニキュー)ドライバーだ。開発コードネーム「オースティン」と呼ばれるもので、4年余りの歳月をかけて完成した。ワトソン氏は、「最近では他社も同軸ユニットを採用する例が増えているが、KEFは1988年に初めてのUni Qドライバーを開発して以来、今回のもので第8世代になる。主要なパテントも抑えているほか、蓄積したデータはかなりのものになる。簡単には追いつかれない」と自信を見せる。

Uni Qドライバー。左が旧型、右が新型

オースティンUni Qの構造図

オースティンUni Qには、さらなる高音質化を果たすべく、様々な改良が加えられている。一つは、ドーム形状の改善とモーター部の形状を変更したことにより、従来外付けであったハイパートゥイーターを取り込むことに成功し、Uni Qドライバー本来の点音源を実現。位相特性を高めた。

トゥイーター部は、背面に穴を空け、空気を抜けさせる構造に変更。なお、トゥイーター部のダイヤフラムは従来と同じくチタン。「ベリリウムも試したが、いくらコーティングしても、廃棄時にどうしても環境面で問題が出てしまう」(ワトソン氏)とのことで、採用を見送ったのだという。

ウーファー部は低域再生能力を改善。ワトソン氏は、「従来のウーファーの下限が400Hzだったところを300Hzに下げた。これによりツインドライブ化が可能になり、タイミングや能率が良くなった」と説明する。

横から見たところ。写真は旧型

同じく新型。ユニットの重量はかなり上がった

また、PPコーンの形状を浅くすることで、高域の拡散角度をさらに改善。スウィートスポットを広げる事に成功している。ただし、ウーファーを浅くすると強度が下がるため、「異なる素材を蒸着して強度を上げるなどの工夫をしている」(ワトソン氏)。

すでにおなじみの旧型Uni Qドライバー

新型ドライバー。ウーファーの形状が浅くなったことがわかる

なお、新リファレンスシリーズは、現在発売している203/2に続き、205/2、207/2、201/2の順で国内に投入される見込み。また、センタースピーカーやダイポール型サラウンドスピーカー、サブウーファーなども順次発売される予定だ。


ワトソン氏は超弩級のフラグシップ「Austin」の開発を進めている
最後に、KEFが現在開発中の、超弩級スピーカー「Austin」についてもご紹介しておこう。これは5年前から構想を始めたモデルで、高さは2m、質量は120kgを超える大型スピーカー。プロトタイプを昨年5月にミュンヘンで開かれた「HIGH END 2006」で鳴らしたところ、発売予定がないモデルであるにも関わらず、「ベスト・オブ・HIGH END 2006」賞を受賞したという。発売時期は「納得できるものができてから考える」とのことだから、まだ当分先になるだろうが、登場したら大きな話題を集めることは間違いない。

(Phile-web編集部)

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