アナログ停波後へ種まき
夏商戦を万全のラインナップで挑む


パナソニック(株)
役員
デジタルAVCマーケティング本部
本部長
西口史郎
   
  総合金賞受賞の“3D VIERA”シリーズ。写真はTH-P65VT2   同じく総合金賞を受賞した“3D DIGA”シリーズ。写真はDMR-BWT3000
 
今回のビジュアルグランプリでも、もっとも注目された「3D」。年末のエコポイント終了、2011年アナログ停波後へ向けて新たなニーズを掘り起こす起爆剤としても期待がかかる。業界に先駆けて3D関連商品を発売、市場に大きな話題をふりまいているパナソニックは、さまざまな角度からの需要喚起を狙う。
 
3Dで大きなインパクト。さらに2D画質で差を

―― 御社はこのたびのビジュアルグランプリでも数多くのジャンルにおいて金賞を、そして総合金賞も3DテレビとBDレコーダーについて受賞されています。そのご感想をお聞かせください。

西口 今回は3Dで特別金賞をいただけたということで、思いもひとしおです。業界の先陣を切って長い間開発に着手しておりました3Dを、事業として新しい柱にうちたて業界をリードして参りたいという気持ちでやって参りましたから、それを認めていただけたということで非常に有り難く思っております。

テレビでは先に発売しておりました50、54に加え、58、65インチモデルが当初予想をはるかに上回り、計画の倍のペースで販売が進んでおります。また6月に入って新たに42インチ、46インチのモデルを発表させていただくことができました。リビングのメインテレビのゾーンに、いよいよテレビを買い替えるなら3Dといった明確なメッセージを送れる体制が整ったと思います。

他社様も3Dテレビを発売され、3Dの道を開くという意味から非常に好ましい状況であり、市場をつくっていけるという感触をより確かなものにできました。

―― 審査会では、3Dの新カテゴリー創造のインパクトはもちろん、2Dテレビとしての基本性能の高さも注目の的でした。

西口 3Dの導入当初、まずその画質を体感していただく体感イベントや店頭展開を行いましたが、実際に購入される段階になると、2Dの画質のよさが決め手になってくるのですね。最高の2D画質、なおかつ3Dも楽しめて将来も安心ということを大きく評価していただいています。そして、これから本格的実需の段階に突入してきたと販売の状況を見て感じているところです。

―― 総合金賞は3D対応BDレコーダーも受賞していますが、テレビ以外で受賞したというのは非常に久しぶりのことです。

西口 MPEG-4 MVC規格化が技術賞も頂戴することができました。当社の提案が国際標準規格となったことのご評価と感じています。テレビと同じように、3Dのブルーレイも当社がリードするかたちで規格化を成功させ、ここまでくることができました。BDレコーダーでも、これからは3Dという世界で市場を創造してまいります。

―― テレビでは録画機能付モデルのジャンルができましたが、御社のHDDとBD内蔵のスリーインワンモデルが高く評価されています。まずハードディスクに録るという考え方が、初心者の方にも非常に使いやすい内容になったと思います。

西口 これは録画機内蔵ということでの付加価値アップ、単価アップにつなげたいという思惑があり、一歩踏み込んでBD内蔵ということを使い勝手も含めてより進んだ形で提案しました。

私どもの商品づくりの基本はお客様目線というところにあります。ご評価いただきましたとおり、録画においてこういう形がもっともユーザーフレンドリーで誤操作を防ぐものであるという意図がありました。録画機能付はどういうお客様が使われるかということを想定した上であえて機能を絞り込み、創り込んだということです。ご販売店様の評価も高く、ぜひ台数アップ、そして単価アップにつなげていただきたいと思います。

―― 今回から「エコグランプリ」という賞が新設されました。消費電力やCo2排出量といったスペックばかりが重視されがちな視点とは違った、総合的な角度からの評価をめざそうとしたものです。御社の商品も数多く受賞されました。

西口 当社の「エコナビ」を含め総合的に評価していただけたということで、非常に有り難い思いです。時代はエコですし、我々は環境革新企業として、取り組んでいますから、大変心強いです。

 

2011年以降もテレビが主役。3Dとリンクで新需要掘り起こす

―― 夏商戦に向け3Dテレビ販売の手ごたえはいかがでしょうか。

西口 3Dを投入して、大型化が顕著にすすんでいます。まず3Dによる単価アップがあり、なおかつ42インチを買う予定だったお客様が50インチを買ってくださるというようなインチアップも図れるという2段階の販売単価アップに貢献できているということです。

3Dを見るならより大きいサイズがいいという要望をお聞きします。従来37インチクラスを購入予定だったお客様に、3Dという選択が加わったことにより42インチ、さらに46インチ以上とより大型の方向に導くきっかけができたと思います。ぜひその効果をボーナス商戦で生かしていただきたいところです。

―― 2011年のアナログ停波後も、やはり主役はテレビであり、「フルHD 3D」という切り口が有効に機能しそうですね。またリンクの進化系であるDLNAを用いた「お部屋ジャンプリンク」も、需要押し上げのフックとなりそうです。

「お部屋ジャンプリンク」のイメージ図

西口 すでに薄型テレビに買い替えたお客様でも、3Dによってテレビの買い替えのサイクルをより縮めることも可能だと思います。

また使い勝手をより向上させる目的で進化させている当社のリンクは、DLNAを積極的に取り入れて「お部屋ジャンプリンク」としています。これでリンクが当初目指していたところにかなり近いところまできましたし、今回の新製品ラインナップでそこに対応した機種が小さいクラスまでそろいました。

10インチクラスのBD内蔵モデルに加えて、テレビ単体の商品も発売しましたが、17インチ、19インチというワイド画面の一番小さいテレビでも大きすぎるような場所に、家中くまなくテレビを置いて楽しんでいただけるラインナップにしました。こうして家中の色々な場所でテレビを使っていただけるという状況がつくれ、新たな需要を生み出せると思います。そういう風に、アナログ停波以降も需要の下落に歯止めをかけ上へと押し戻す効果を期待できます。

―― 地上デジタルテレビに買い替えなければならないということが決まったばかりの頃と今とでは、商品も市場の状況がまったく違ってきています。お客様のライフスタイルもテレビとのふれあい方も変わりました。地デジの需要が終わったらテレビの需要が終わるというのではなく、こうして変化した状況の中でまた新たな需要を掘り起こすことができそうです。

西口 まさにそういう世界をつくっていけると思いますし、そのためにも3Dを一番の核に据えながら、テレビを中心にリンクしていく商品を拡げていきます。またテレビも大画面だけでなく、小さいインチサイズもカバーしてテレビの市場とAV市場全体の底上げにつなげていきたいと思います。

3Dは世の中全体のアクセプタンスというか、受け入れていただく熱狂度合いをみると、当初の想定より早く定着することができると思います。

―― 夏商戦ではそれが本格的な熱狂になるわけですが。

西口 ちょうどいいタイミングにラインナップもそろいますので、是非それを核に、さらにお部屋ジャンプリンクを含めたリンクの訴求で夏商戦を盛り上げていただきたいと思います。単価下落にも歯止めをかけながら、数量的にも上げていくという世界をぜひ実現していただきたいと思います。

この夏商戦はテレビにおいて数量面では間違いなく業界全体として期待できると思いますし、さらに単価アップも図れ、さらに3Dのように2011年7月以降につながるような仕込みもできるような商戦にしていければと思います。

そういう意味でも2010年の夏商戦は今年の夏を乗り切るだけのものではなく、エコポイントの終了やアナログ停波の後にむけての種まきにもなる重要な商戦だと思います。パナソニックとしてはそれに十分貢献できるだけのラインナップを揃えることができました。

そしてビジュアルグランプリでありがたいことにご評価もいただきました。我々が意図したとおりの商品コンセプトを汲み取っていただきましたので、それをお客様に伝えていただければ自然と販売につながっていくと思います。よろしくお願い致します。

 

 

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西口史郎氏 プロフィール

1980年、松下電器産業(株)(現パナソニック(株))入社。その後、アメリカ松下へ出向。テレビ事業部国際部部長、テレビ事業部商品企画部部長、 LCDテレビビジネスユニット長を経て、2007年4月より、パナソニックマーケティング本部本部長に就任。2008年4月より役員。