差別化の実現に欠かせなくなる
方向性を示す“テレビの哲学"


日立コンシューマエレクトロニクス(株)
マーケティング事業部
マーケティング本部
担当本部長
須藤利昭
 
VGP 2010 SUMMERで審査員特別大賞を受賞した“Wooo”XP05シリーズ。写真は「P50-XP05」   “Wooo”録画テレビは5モデルが金賞を受賞した。写真は「L26-HP05」
 
テレビを取り巻く環境の劇的な変化に、メーカーにはこれまで以上に凛とした姿勢が求められている。そのような中、「将来のテレビはどうあるべきか」を常に問い続ける日立。その答えは、録画機能付きやDLNAによるネットワーク提案としていち早く具現化されてきた。注目を集める付加価値市場のトレンドリーダーは、今、何を見ているのか。
 
差別化し先手を打つ録画機能付き

―― ビジュアルグランプリ2010 SUMMERでXP05シリーズが審査員特別大賞を受賞されました。また、録画機能付きテレビとして5モデルが金賞を獲得されました。

須藤 日立では他社にない差別化機能として「録画」に取り組んできました。かつてのテレビデオのようにテレビとビデオが単に一体化したというのではなく、録画をテレビに欠かすことのできない機能として、利便性や使い勝手を追求してきました。

かつてVTRでも、画期的な番組検索や頭出し機能を実現した「テープナビ」など、お客様目線に立ち、どうすれば使いやすいのかを提案して参りました。そうしたエッセンスが全て注ぎ込まれた、この春の新商品が「XP05シリーズ」というわけです。

―― 地デジトリプルチューナーの搭載や、DLNAもクライアント機能のみならずサーバー機能まで有している点など、市場創造をリードする先進機能に対して「企画賞」にも選出されています。

須藤 他社からも録画機能付きのモデルがここにきて相次ぎ投入されていますが、私どもがきちんと差別化できている点をこのように高くご評価をいただき、大変うれしく思います。

―― DLNAによるネットワークの提案には大変力を入れていらっしゃいますね。

須藤 ネットワークに対するニーズは、今後、間違いなく高まってきます。光回線にしても、店頭でも数年前まではPCコーナーで展開されるものでしたが、現在は、テレビ売り場でテレビと一緒に紹介されるのが当たり前のようになっています。

課題は、ただ、現状では非常に難解であることだと思います。ホームネットワークを構築したいと思っても、誰にでも簡単に理解できるものではありませんし、「サーバー」や「ネットワーク」という私たちには聞きなれた用語も、一般のお客様からすれば何のことだかわかりません。誰にでも意味の通じるやさしい言葉に置き換えていくことも大事な作業と言えます。

現在、テレビをネットワークにつないでいただいているご家庭の割合はまだ2割そこそこに過ぎません。それだけ可能性も大きいわけですが、店頭でどのように展開していけばいいのか。まだまだ課題が残されているということですね。

Wooo XP05シリーズは録画した番組をほかのDLNA対応テレビなどに配信できる

―― 使い勝手という意味からは、無線LANの普及も期待されるのではないでしょうか。

須藤 LANケーブルが不要になるわけですから、訴え方としてはわかりやすくなると思います。ただ、より多くのお客様がにご家庭で導入していただくことを考えると、現時点ではまだ、LANケーブルでつないでいただくのが確実な方法と言えます。しかし、無線LANで電波を飛ばせれば、風呂用テレビといった展開も可能になりますから、コンテンツの楽しみ方の可能性はさらに広がってくると思います。

いずれにしても、家庭内へのネットワークの導入については、リテラシーの高い方が導入している段階で止まってしまっていて、その先へ、なかなか進めないでいるのが実情になります。

―― 録画機能やDLNAを搭載する機種が増えており、店頭においても、訴求するための環境構築を本気で検討していく必要がありますね。そのような中で、日立としてはどのような優位点があり、それを店頭でどのようにご理解いただこうと考えていらっしゃいますか。

録画テレビ“Wooo”はカセットHDD「iVDR-S(別売)」にも対応。追加購入することで、必要に応じて録画時間を増やすことができる

須藤 録画については、内蔵HDDのほかに、SAFIA技術による高度なコンテンツ保護により、ハイビジョン映像を「録る」だけでなく、「増やせる」「持ち出せる」という特長を備えたカセットHDD「iVDR-S(別売)」も使えることが挙げられます。加えて、XP05シリーズには、地デジ番組を見ながら、2つの別番組を同時に録画できる地デジトリプルチューナーを搭載しています。テレビに録画機能がついているのなら「こうあったら便利だな」と思えるこの2つの差別化ポイントを、きちんと訴えていきたいと思います。

 

テレビの哲学が求められる時代

―― エコポイント制度と地デジ化で好調なテレビ市場ですが、一方では、その後の落ち込みを懸念する声も聞かれます。

須藤 エコポイント制度が切り替わる直前の今年3月には、テレビ売り場には、説明を聞くためにお客様が並び、さらに、購入するためにまた並んでという、今まで見たことのないような光景がどの多くの売り場でも見受けられました。私どもの今年度のテレビの需要予測も、当初の1,400万台を上方修正し、1,600万台としました。

中には2,000万台という声も聞かれますが、3月の売り場の混沌とした状況を見ていると、物理的にこれ以上上乗せするためには、販売時期をきちんと前倒ししていかないと厳しいのではないかと思います。

エコポイント制度の終了後も、地デジ化へのカウントダウンは刻一刻と進んでいますから、2011年1-3月に駆け込み需要がどれくらい出てくるかも注目されます。

今年の年末商戦はこのような状況ですから、店頭での商品説明の時間も限られ、製品自体がアイキャッチになっていかなければなりません。その意味では、デザインはこれまで以上に重要な要素になってくると思います。

反対に、2011年7月以降は、商品説明する時間の余裕が生まれてきますから、機能による差別化が重要なポイントになってくる。テレビの位置付けが変わってくるわけです。それまでは「薄いですよ」でもよかったわけですが、ブロードバンドのネットワーク環境も拡がる中で、メーカーにはこれまで以上に、テレビの哲学をきちんと示していく姿勢と、それを具現化した商品が求められる時代になると思います。

当然、技術力による差も出てきます。日立も録画やネットワークはもちろんのこと、超解像技術や3Dも、そうした技術的な差別化ポイントのひとつとして、さらに力を入れて参ります。より高度な機能や仕組みを提供していきたいですね。

―― 先日発表されたコンシューマー事業の中期計画の中で、薄型テレビ事業では、ラインナップの拡大や、省エネ・環境応用技術についての取り組み強化をあげられていました。

須藤 ラインナップについては、今後のマーケット拡大へ対応していくためには、録画機能付きで不要な機能を省いていくのではなく、DLNAのネットワーク機能を活かし、録画機能のないラインナップモデルをいかに充実させていくかが、戦略の中では重要ファクターを占めてくると考えています。

エコにつきましては、例えば、ある環境基準を達成するために、他の何か、例えば画質が犠牲になってしまっているというのでは、意味がないのではないでしょうか。ユーザーにとって何が大切なのかを、きちんと見極めて、進めていきたいと考えています。

―― 売り場にも、アフター・地デジをきちんと見据えた進化の道筋が求められますね。

須藤 店頭では、お客様が思わず足を止めてしまうような、商品を見ていただける環境作りがますます大切になってきます。3Dなどはそのよい例ですね。お客様に「この商品はいいな」と思い、買っていただくためには、支払う金額に見合ったパフォーマンスが求められます。録画機能付きというのは、それが非常にわかりやすかったですね。

テレビとしての「HITACHI」のブランドに対し、「日立ならいい」というお客様はたくさんいらっしゃいますが、「日立でなければだめだ」というお客様はまだまだ少ないと感じています。録画機能付きでは早くから取り組み、差別化して参りましたが、今後も、他社とは違う、この商品がどういう特長を持った商品なのかをアピールできる、魅力ある付加価値を提案していきたいと思います。

この夏は店頭でも、ビジュアルグランプリの受賞をアピールできる助成物を用意して、お客様にも「おう、なるほどね」とご納得いただけるような仕掛けを行って参ります。店頭でも是非、日立「Wooo」の差別化ポイントである特長を、お客様にご提案いただければと思います。

 

 

【関連リンク】

日立コンシューマエレクトロニクス
日立「Wooo」製品情報

 
須藤利昭氏 プロフィール

1956年4月13日生まれ。1980年 日立家電入社。営業、商品企画等を経て2007年より現職。テレビをはじめ、ビデオ、DVD、さらにビデオカメラまで、AV・デジタル機器全てに関わってきた。モットーは、仕事も遊びもやるからには「楽しく」。趣味はゴルフ。ホームセンターやゴルフショップ、カーショップ、ディスカウンター等の店巡り。