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公開日 2006/11/13 17:56

HD-PLC登場でAVライフはどう変わる?

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本日発表されたHD-PLC方式のPLCアダプター
本日、松下電器よりHD-PLC機器の発売がアナウンスされた。これにより、ようやく国内でもPLCを使った高速宅内ネットワーク構築が可能になる。

松下電器が提唱する「HD-PLC」規格は、「HD(High Definition)」と冠していることからも推察されるとおり、AVのHDコンテンツを伝送する用途としても期待されている。この項では、HD-PLCによって我々のAVライフがどう変わるのか、ということを考えてみたい。

●PLCとはそもそも何か

その前に、PLCとは何か、というところからかんたんに解説しよう。PLCは「Power Line Communication」の略で、直訳すると「電力線通信」。その名の通り、電力線を使って、データのやり取りを行う技術を指す。PLCは大まかに2種類に分けられる。一つは宅外の電力線を使って高速インターネットを行うもの。もう一つは、宅内ネットワークを宅内の配電線で行うものだ。

家庭内の様々な機器をネットワークに接続できる

電源コンセントでネットワークに接続

すでに海外ではPLCは実用化しているが、国内においては、短波無線など既存の電波との干渉が問題視され、なかなか実用化されなかった。その後、総務省の研究会で、短波無線と共存する許容値が繰り返し検討され、このような努力の結果、ようやく今年の10月に、屋内配電線を高速データ通信に使用しても良いという省令が出され、PLC機器の販売が可能になった。

PLCの規格は、今回松下電器が発売する製品が採用する「HD-PLC」のほか、シスコ・システムズや3com、Inteloなどが参加する「HomePlug」、主にヨーロッパ系のメーカーからなる業界団体「UPA」が推進する規格の3種類がある。それぞれ相互接続性はないが、松下電器では、PLCの規格をとりまとめるアライアンス「CEPCA」を通じ、米IEEEや欧ETSI、国内のPLC-Jなどに、異なるPLC方式が同一回線上で共存できる仕組みづくりを提案しているという。

ただし、HD-PLCを推進するCEPCAには、松下電器のほか、ソニーや日立製作所、東芝、三菱電機、ヤマハ、パイオニア、サンヨー、フィリップスなど、錚々たるAV機器メーカーが名を連ねている。このため、AV分野ではHD-PLC方式がデファクト・スタンダードとなる可能性が高そうだ。

●理論値で最大190Mbpsの伝送が可能なPLC

他項でも紹介しているが、HD-PLCでは、理論値で最大190Mbpsの通信が可能。実効速度は、通信プロトコルにUDPを使った場合で80Mbps、TCPを用いた場合で55Mbpsとなっている。マスター機器を含め、一つのネットワークに最大16台まで接続が可能だが、通信している機器が多ければ多いほど、実効速度は落ちる。

AVコンテンツの伝送にHD-PLCを使うメリットは、まずこの高速性にあると言える。現在、高速無線LAN規格にはIEEE802.11g/aの2規格があり、いずれも理論値で54Mbps程度の伝送速度を持つが、実効速度は11gの場合で最大32Mbps程度。また、遮蔽物によって速度が落ちるので、20Mbps程度のデジタル放送を伝送するとコマ落ちをする場合があった。

無線LANには新規格の「IEEE802.11n」も控えており、理論値で144Mbps、実効速度でも80Mbps程度の高速伝送を実現しているが、まだ規格が固まっておらず、正式な規格が策定されるのは2007年の後半になる予定。また、11g/aと同じく、遮蔽物による速度低下は無線LANの宿命として避けられない。

●家庭内ハイビジョン配信が可能に

このように見ていくと、HD-PLCが、HDコンテンツの伝送に最適なソリューションであることが分かるだろう。通信速度を目一杯使えば、複数のHDコンテンツを同時にストリーミングすることも可能で、サーバとクライアントの部屋が離れていても問題ない。また、鉄筋コンクリートなど、無線LANが苦手なシチュエーションにも難なく対応できる。

DLNA(DTCP-IP)規格を用いれば、著作権保護のかかったハイビジョンコンテンツをLANに配信することができるが、帯域の関係上、その場合は有線LANの使用が推奨されていた。だが、異なる部屋に有線LANを引き回すのは非常に難しく、これが原因で諦めていた方も多いはず。HD-PLCならばDLNA(DTCP-IP)宅内でのハイビジョン配信を手軽に行うことができ、このソリューションが一気にメジャーになる可能性もある。これによりネットワークメディアプレーヤーが再び勢いを増すことも考えられるし、PLCモジュールを組み込んだテレビやレコーダーが普及すれば、家庭内でのコンテンツ共有がごく自然に行われるようになるだろう。

ホームサーバーを核にしたコンテンツや家電機器の集中管理は、5〜6年前から繰り返し語られてきたが、パソコンやAV機器、果ては冷蔵庫や洗濯機、インターホンに至る様々な機器を、どうやってネットワークにつなぐかという問題は棚上げされてきた。HD-PLCの登場で、ようやくリアリティのある論議が行えるようになった、と言えそうだ。

また、HD-PLCには、設定がPCレスで行えるという魅力もある。たとえばターミナルを増設する場合、マスターとターミナルの各機器を同じコンセントにつなぎ、同時にボタンを押すだけで、機器の関連づけやAES128ビットの暗号化設定までワンタッチで完了する。無線LANの設定とは比べものにならないほど簡単だが、この簡便設計は家電を作り慣れた会社ならではのものだろう。

128ビットのAES暗号化技術を採用

セットアップボタンを押すだけでターミナルの登録が完了する

今回、パッケージ製品のほか、機器組込用のPLCモジュールも発表された。サンプル価格は数千円レベルで、無線LANなどに比べるとまだまだ高価だが、「将来的に個数が出るようになれば、無線LANと同程度の価格にすることは可能」(松下電器)という。そうなれば、テレビやレコーダー、ビデオカメラなどに、標準的にPLCが組み込まれる可能性が高い。HDコンテンツのやりとりをPLCで自然に行う未来は意外と早くやってきそうだ。

ただし、松下電器が「有線/無線LANとは競合するものではなく、互いに補完し合う関係」と説明するように、それぞれの利点もまた多い。電源ケーブルを通常あまり使わない、たとえばポータブルゲーム機などでは、PLCのメリットは活かせない。やはり無線LANがスタンダードになるだろう。また、有線LANにはギガビットイーサネットという超高速規格もあり、スピードを重視するならまだまだ敵はない、という状況だ。有線/無線LANと上手に組み合わせて、互いの長所をうまく引き出すことが必要になりそうだ。

●ピュアオーディオファンはノイズ対策が必須

ここまでHD-PLCのメリットばかりを強調してきたが、ピュアオーディオファンから見た場合、HD-PLCはあまり歓迎される技術ではないかもしれない。単純に言って、配電線内を4〜28MHzの高周波が流れるのだから、音質への影響は避けられないだろう。

HD-PLCによる信号は、通常は分電盤で20〜40dBほど減衰し、その後メーター、柱上トランスなどでそれぞれ減衰。トランスを超えたら「ほぼゼロ」になるのだという。マンションなどの場合は、一戸建てに比べて隣家のノイズが混入しやすい、ということになりそうだ。

家庭内でHD-PLCを使うピュアオーディオファンは、フィルターを内蔵した電源タップなどで対策をする必要が出てくるはずだ。とはいえ、HD-PLCがメジャーになれば、対策グッズは山のように出てくるはず。それらの性能を比較検討するのも新たな楽しみになるかもしれない。

(Phile-web編集部)

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