公開日 2010/12/06 20:41

第15回「音の匠」は、活動弁士・澤登翠さん − 「"声"は、音の匠の真髄ともいえる」

片岡千恵蔵からチャップリンまでを演ずる
ファイル・ウェブ編集部
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(社)日本オーディオ協会は、トーマス・エジソンがフォノグラフを発明した12月6日を「音の日」と定め、音を通じて文化や生活に貢献した人々を「音の匠」として顕彰する活動を行っている。本日、都内で行われた「音の日」行事において、第15回「音の匠」顕彰式が開催された。

左から、(社)日本オーディオ協会会長・校條亮治氏、受賞者・澤登翠さん、(株)電波新聞社社長・平山哲生氏

冒頭では同協会 会長の校條亮治氏が挨拶を述べ、「エジソンが音を録音/再生する技術を発明したことにより、無機質な信号は音に変わり、最終的に"感動"へと変化する。デジタル化が進み、殺伐としたこの時代、まさにこの"感動"がもっと世の中に広がって欲しいと願ってやまない」と、来場者に語りかけた。

「世の中にもっと感動が広がって欲しい」と語る校條氏

本年度の音の匠に選ばれたのは、活動弁士・澤登翠(さわと・みどり)さん。海外でも高い評価を受ける澤登さんは、的確な作品解釈による多彩な語り口で、今まで500本以上の様々なジャンルの無声映画の活弁を努めている。また伝統話芸の後継者として、活弁を現代のホームエンターテインメントとして蘇らせた功績を評され、これまでにも平成14年度文化庁芸術祭優秀賞(園芸部門)など数々の賞を受賞している。

第15回「音の匠」・澤登翠さん

校條氏は今回の顕彰に際し「"声"というまさに音の匠の真髄ともいえる技で、"感動"を世の中に与え続けている」と、澤登さんの活動を讃えた。


日本オーディオ協会、および(株)電波新聞社から顕彰を受け壇上に上がった澤登さんは、「大先達の"声"があり、その中に現代の私たちが存在していると思っている。今回、声の文化が着目され評されたことは、終生忘れ得ないこと」と受賞の喜びを語り、「これからも私たちの活動を見守って欲しい」と結んだ。

顕彰式の後は、会場で実際に澤登さんの活弁が披露された。まず、澤登さんの一番弟子である片岡一郎氏が前座で登壇し、ラジオが普及しはじめた時代の一般家庭の風景や、放送局のラジオ収録風景を映した無声映像『ラジオの風景』を公演。続いて澤登さんが、片岡千恵蔵主演『番場の忠太郎 瞼の母』や伊藤大輔監督『血煙 高田の馬場』を演ずるという盛り沢山な内容となった。

片岡千恵蔵主演『番場の忠太郎 瞼の母』1931年公開

活弁中の澤登さん。様々な声色を用いて登場人物を演じ分ける

公演後、会場全体が大きな拍手に包まれる中で、澤登さんは「1896〜1897年、日本に初めて映画が入ってきた当時から活動弁士がいた。当時の映画館である"活動写真館"に、専属の弁士が付くスタイルで、日本では弁士の話芸や楽士の音楽を合わせたものとして、映画が大衆娯楽になった」と、日本映画の創世記を担った話芸の一文化として続く活弁の歴史を語った。

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