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【第75回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

『バービー』の監督が描く半自伝的物語。高校生活最後の1年を過ごす少女の痛々しくも輝かしい青春映画

公開日 2023/08/11 06:30 ミヤザキタケル
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サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2017年製作の『レディ・バード』をご紹介します!


『レディ・バード』(2017年・アメリカ)

『レディ・バード』Blu-ray 2,075円(税込) 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(配信:U-NEXT)

話題作『バービー』などの監督でも知られ、俳優としても活躍するグレタ・ガーウィグの半自伝的初単独監督作。片田舎にあるカトリック系の高校に通い、自らを“レディ・バード”と呼ぶクリスティン(シアーシャ・ローナン)。華やかなニューヨークの大学への進学を希望するも、母親は猛反対。恋に進路に家族との関係性に悩む17歳の少女の、痛々しくも心温まる成長物語。

誰もが通る10代という時間。肉体的には大人と遜色ないが、精神的にはまだ未熟で、そのギャップを埋めようともがいていた時間。家族のしがらみや友人関係、恋愛や将来への不安など、様々な葛藤を抱えるクリスティンの姿を目にすれば、きっとあの頃抱えていた様々な想いがよみがえる。大人になれば、人の親になれば、否が応でも身に沁みる親の愛や親への感謝。しかし、10代の内は、親に守られているのが当たり前の内は、きっと気が付けない。

僕たちはどのようにして大人になったのか。子どもから大人へと至るまでの過程で生じる繊細で危なっかしくて不安定な心の機微を丁寧に描くこの作品は、あの日踏み締めた大人の階段の一歩目を、そして、親の存在がどれだけ偉大で、故郷があることがどれだけ安心できることなのかを思い出させてくれると思います。

(C) 2017 InterActiveCorp Films, LLC. All Rights Reserved.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。

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