HOME > レビュー > マーヴィン・ゲイ“あの名盤”を徹底聴き比べ!プレス工場違いのオリジナル盤からMQA-CD/ハイレゾまで

【特別企画】「ZEN One Signature」をデジタルハブとして活用

マーヴィン・ゲイ“あの名盤”を徹底聴き比べ!プレス工場違いのオリジナル盤からMQA-CD/ハイレゾまで

公開日 2022/02/24 06:30 田中伊佐資・菅沼洋介(ENZO j-Fi)/構成:ファイルウェブオーディオ編集部
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
マーヴィン・ゲイの『What's Going on』は、モータウンレーベルから1971年に発売になったソウルの不朽の名盤である。音楽メディアの移り変わりとともに、さまざまな形式でリイシュー、再発がなされてきた。

マーヴィン・ゲイ『What's Going on』

音質面でも定評があるため、オーディオファンにも愛好家は多く、2019年にはMobile Fidelity Sound Labから45回転2枚組のレコードでも再発された(なお、後述の通りこの再発には賛否両論ある)。発売から50年を経たいまもなお、音楽ファン・オーディオファンを引き寄せ続ける輝きを放っている。

今回は、このマーヴィン・ゲイ『What's Going on』聴き比べ企画をお届けする。プレス工場違いのオリジナル盤を含むアナログ盤4枚、MQA-CD、ハイレゾのダウンロード音源、ストリーミング音源を“対決”させようというテーマである。

今回試聴した8種類の『What's going on』。上記のほか、fidataに入れたハイレゾ音源も試聴

対決の審判は、音楽&オーディオライターの田中伊佐資さんと、ENZO j-Fiの菅沼洋介さんのオーディオ馬鹿2名。PHILEWEB AUDIOの担当編集も加えた3名でお送りしよう。

■ヴィニジャン田中、デジタルに不満あり?

田中 そもそも僕はヴィニジャン(=ヴァイナル・ジャンキー/レコードのフリーク)なわけですよ。レコードを聴きたいからオーディオをやってるわけ。でも今日来たら、あれなんかデジタル機器がいっぱいあるじゃん!

今回の試聴機材。スピーカー:B&W「803 D3」、パワーアンプ:Accuphase「A-46」 プリアンプ:Accuphase「C-3900」

菅沼 もちろんそれは知ってますよ。でも、だからこそあえてこの企画にお誘いしたわけです。というのはですね、いわゆる昔の名盤のハイレゾの復刻って、なかなかこれぞ!という音源に巡り合うのは難しくて。あくまで個人的な印象ですが、オリジナルにも勝るとも劣らないと思えるのって、全体の1割くらいしかないと思っています。その中のひとつが、今回持ってきたこのマーヴィン・ゲイの『What's Going on』なわけです。

田中 で?

「デジタル聴くなんて聞いてないよ!」と言いつつ案外ノリノリな田中伊佐資さん(右)と菅沼さん(左)

菅沼 以前のYouTube企画「やっぱオーディオ無茶おもろい」で、音質的にはこの2019年に出たMobile Fidelityのレコードが決定盤だと結論づけていたわけなんですが。果たしてそれで本当にいいのかと。やっぱりオリジナル盤を聴いてみないといけないんじゃないかとオーディオマニアの血が騒ぎまして。

田中 オーディオマニアはこれだからめんどくさいんだ。

菅沼 ということで今回は、いわゆる“オリジナル盤”と言われる3種類のレコードと、先程のMoFi盤、それにいま比較的手に入れやすい「ハイレゾCD」(MQA-CD×UHQCD)を用意しました。あと、ダウンロード購入できるハイレゾと、Amazon music HD、Qobuzのストリーミング、全部で8種類を聴き比べたいと思います。

【閑話休題】『What's Going on』のオリジナル盤が3種類あるとは?
『What's Going on』が発売された当時、大ヒットが予想されるアルバムであったため、アメリカの東部・中部・西部の3箇所の工場で同時にプレスされた。下記の通り、品番、レーベル面の印刷なども少しずつ異なっている。



田中 僕が持っているのもこの東部盤の「T310」というやつですね。今みたいに価格が上がっちゃう前に買ったから2 - 3000円くらいじゃなかったかな。あと、さっきも話題に出たMobile Fidelity盤も持ってます。

■デジタル再生はCD、ハイレゾなど4種類を聴き比べ

菅沼 ちなみにデジタルに関して言うと、2013年にスターリング・サウンドのケヴィン・リーヴスがオリジナルマスターからDSDに起こしたものが元になっています。これがね、なかなかいいんですよ。

田中 僕はデジタルはどうなってるからわからないから新鮮な気持ちで聴きたいですね。

菅沼 今回はCDとハイレゾとストリーミングと聴くわけですが…それにこのiFi audioのDAC「ZEN One Signature」、49,500円(税込)を使いたいと思ってます。

iFi audioの「ZEN One Signature」。USB入力、S/PDIF(同軸)入力、Bluetooth入力と様々な入力をオールインワン!で実現できる。さらにMQAのデコーダーとしても使用できる

田中 あ、宣伝入った。

菅沼 宣伝が仕事なんで(笑)。この「ZEN One Signature」は、Bluetooth、S/PDIF、USBで入力できます。こいつの入力を全部試してみようというわけです。スマホのAmazon music HDからBluetooth再生、それからMQA-CDのデコーダーとしてS/PDIF入力を試し、ストリーミングとハイレゾのローカル再生はUSBで入力しようと。


田中 なるほどいろんな使い方ができるってわけね? ストリーミングはね、僕も興味あるんだ。なんでかというと、買いたいレコードを探すのにめっちゃいいジュークボックスだと思ってるから。いや楽しみだな〜。

■“オリジナル盤”3種はどう違う?盤質の違いも音に影響あり

菅沼 ということで、早速アナログから行きたいと思います。今一番価格が上がっている「東部盤」(2D)からスタートして、マトリクスを遡る形で、「西部盤」(2C/2B)「中部盤」(2A)の順で行きます。

レコード再生は、ラックスマンの「PD-171A」に、フェーズメーション「PP-2000」を組み合わせ。フォノイコライザーはAccuphase「C-47」

田中 僕はわりと「西部盤」が好きかな。微妙な違いだけどね、鮮度感がいい感じがする。

編集 私も「西部盤」がいいですねぇ。What's Going on〜ってコーラス入る直前の指パッチンとか、一番リアリティがあるように感じました。「中部盤」は少し遠くにある感じ。

田中 全体を俯瞰して聴きたいのか、ガーンと来てほしいのか!っていう違いはありそうだね。オーナーはどうなの?

菅沼 ……どれもいいかなって……

田中 !! いやいやそうじゃないでしょ!! それなら僕だって言うよ。


菅沼 まぁ、そうですね。ボーカルの立ってる感じとか口の小さい感じとかは「西部盤」がいいと思うんです。ただ、「中部盤」のほうが空間が出て、音像もぴしっと決まるのでオーディオ的な快楽は一番あるかなぁと思います。

■音さえ良ければそれいいのか、作品への冒涜か? 賛否両論のMoFi盤

菅沼 賛否両論のMoFi盤です。


田中 これ、45回転の2枚組だから、曲の流れが途中で切られちゃうんだよね。それが、作品への冒涜だって思う人もいるみたいで。音だけ聴きたいオーディオマニアはいいんだけどね。

菅沼 僕もその点についてはフィフティ・フィフティなところです。

MoFi盤のレコードとレーベル面。180g重量盤、45回転の2枚組構成

田中 このMoFi盤は僕も持っているんだけど、オーディオ的にむちゃくちゃ違うじゃない。解像度も情報量も。だけど、いまこうやって改めて聴き比べると、オリジナルのモータウン臭さっていうの、あれもいい気がするんですよね。

菅沼 MoFi盤はホントオーディオって感じの音じゃないですか。

田中 モータウンのちょっとモワッとした感じ、なんかもうちょっとスッカーン!って抜けてほしい感じがあったんだけど、それをMoFi盤は一掃してくれたんだよね。だからすげぇ!って思ったんだけど、でもいま聴くとこのモワッとした感じも悪くないね。

編集 ちょっと、きれいになりすぎてませんかね。いろんな発見があるし、こんな音まで入ってたんだ!っていろいろ聴こえてくるけど、果たしてそれが本当に聴きたかったものなのかなと。

菅沼 そうなんですよ! それを聴きたいわけじゃないんです! そういう盤じゃないんです!!

田中 自己否定したり肯定したりオーディオマニアは忙しいね。

次ページCD、ハイレゾ、ストリーミングを徹底チェック

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

トピック: