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フランスの美意識と卓越したクラフトマンシップ

FOCALの歌声は絶品、陽の中に哀しみが潜む。フランスの美学が詰まったDSオートモーティブ「No.8」

公開日 2026/11/03 06:35 栗原祥光
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大統領専用車も手掛けるDSオートモーティブは、フランスの誇りともいえる自動車ブランドだ。それゆえ搭載するカーオーディオシステムは、同郷・FOCAL(フォーカル)が採用されている。電動フラグシップEVにして、世界初の電動大統領専用車でもあるNo.8を紹介する。

DSオートモーティブ「No.8」(価格:11,000,000円〜税込)

フランスの美意識と卓越したクラフトマンシップの融合

FOCALのカーオーディオ搭載車は、以前アルピーヌA110でご紹介した。麻を用いたFLAX振動板のよる2ウェイスピーカーシステムを核とした2.1チャンネルシステムは、陽性の音色と素直な表現で心打たれた。だがアルピーヌA110は生産終了。日本国内でFOCAL・インサイドの車種は、プジョーとDSのみとなってしまった。

さて、本稿で紹介するDSのNo.8とはいかなる車両か。まずはDSという聞きなれないブランドについてから話を始めよう。DSは、1955年から1975年まで製造していたシトロエン・DSに着想を得て、2009年にシトロエンの高級サブブランドとして誕生。

2014年にシトロエンから独立し、現在はプジョーやシトロエン、そしてクライスラーやFIATなどを擁するステランティスグループの高級ブランドを担っている。ちなみにDSの語源は、「Désirée Spéciale」(デズィへ・スペシアレ、特別な憧れ)から、とも言われているが、実のところ所説あり不明だ。

DSのクルマは、フランスの美意識と卓越したクラフトマンシップの融合といえる。それゆえか、フランスの政治体制が「第五共和政」となった1958年以来、シトロエンDS、シトロエンSM、DS 5 やDS 7といったモデルが大統領専用車として選ばれてきた。No.8もその1台であり、特別仕様車PRESIDENTIAL DS No8が、世界初の100%電気自動車の大統領専用車として、2025年の戦勝記念パレードから使われている。

No.8は、いわゆるセダンではない。ハッチバック形状のリアゲートと、SUVのような車高を有するクロスオーバーと呼ばれる車種にあたる。案外使い勝手のよいパッケージなのだが、実車を前にすると「なんか車高が高くて変なクルマ」と思うことだろう。

全長×全幅×全高=4820×1900×1580mmという威風堂々とした躯体

No.8の後側。ハッチバック形状のリアゲート

それよりも前に感じるのが「デカい!」ということ。それもそのはず、全長×全幅×全高=4820×1900×1580mmという躯体に加え、フランス大統領が乗るという威風堂々としたフロントマスクは、只者ではない感を抱かせる。

上質なインテリアに、本格的なオーディオを搭載

インテリアも素敵だ。上質なアレザン(栗毛色)のナッパレザーのシートと、独創的なデザイン。美しさ重視で使い勝手は二の次、という面は否定できないものの、このインテリアに惹かれない人はいないだろう。

上質なナッパレザーによる独創的なデザインで

そしてフロントドアに見えるFOCALの文字。搭載するスピーカーは14基で、合計690WのクラスDパワーアンプで駆動する。ウーファーの振動板はポリグラス、トゥイーターはアルミニウム/マグネシウムによる逆ドーム型など、FOCALらしさに溢れている。

フロントドア上部と下部にスピーカーを設置

独創的なデザイングリルに、ELECTRA 3D BYFOCALの文字

運転席と助手席のピラー付近にはサラウンド・スピーカーが設けられている。サラウンドモードを選択すると、ここから音が出ていることがわかる。サラウンドレベルは大きくわけて3段階。また細かく設定もできるようだ。

サラウンドスピーカーも設置されている

ドア下部のウーファー部

設定をみると、グライコのレベルが中央とは違う位置に設定されていた。なので、これをフラットにしてみたのだが、逆に音のバランスが悪くなった。どうやらこれがデフォルトなのだろうと思い、戻して聴くことにした。

イコライザーもカスタマイズ可能

歌声は絶品、陽の中に哀しみが潜む

フランスということで、シャンソンから始めることにした。バルバラが1967年に残したスタジオアルバム「Ma plus belle histoire d'amour」(邦題:我が麗しき恋物語)から、反戦ソングといえる「マダム」を聴くと、FOCALの歌声は逸品であることを改めて思った。陽性の中の哀しさは、まるで秋空に舞うひばりのよう。

バルバラ「マダム」を再生中

サラウンドをオンにすると、包みこまれる感じというより、高音が降ってくるかのよう。にも関わらず、音の定位感は変わらないから不思議だ。

「より臨場感のあふれる」サウンドを提供するという3Dサラウンド機能 

ジョン・コルトレーンの名バラード「ロニーズ・ラメント」は、哀愁を帯びた旋律が心に染み入る。エルヴィン・ジョーンズのシンバルが、この上なく美しく、ジミー・ギャリソンのベースが底なしに深い。音の陰影、コントラストが適切なのだ。

ジョン・コルトレーン「ロニーズ・ラメント」を再生中 

カルロス・クライバーの椿姫も素晴らしかった。サラウンドをオンにすると、コンサートホールの特等席にいるかのような錯覚に陥った。このサラウンドは、ポップスやロック、ジャズよりも、クラシックに適しているようだ。クライバーらしい熱演が、大きなうねりとなって聴き手を包み込む。この気持ちよさ、快感である。

カルロス・クライバーによる「椿姫」再生中

1000万円もするフランスの電気自動車を、あえて買おうとする人は多くはいないだろう。だが、前衛的にも見えるデザインと、聴き心地のよい音、なにより静粛な走りは、確かに価値がある。トータルパッケージでフランスの美学が詰まったNo.8は心に響くものがあった。

フランスの美学が詰まったDSオートモーティブ「No.8」

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