Anker「Soundcore Liberty 5」を3人の専門家がクロスレビュー!定番機の秘訣を「音質」「ANC」「装着性」から深掘り
Ankerのオーディオブランド “Soundcore” の完全ワイヤレスイヤホンの中でも、定番モデルに位置づけられているのが “Libertyシリーズ”。独自のアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能「ウルトラノイズキャンセリング」に、ドライバーユニットをはじめとする音響設計も磨き上げつつ、価格も手頃に抑えたコストパフォーマンスが魅力だ。
その評価に後押しされ、今年5月には第5世代モデル「Soundcore Liberty 5」が登場。「ウルトラノイズキャンセリング」はさらに効き目を増した新世代の “3.5” に、音質は9.2mmダイナミックドライバーと2本のダクトによるSoundcoreの完全ワイヤレスイヤホンでは初のバスレフ設計に進化。
そしてカラーバリエーションも、前モデル「Soundcore Liberty 4」で日本向けに発売され好評だった “シャンパンゴールド” を含む全5色を展開。日常生活への取り入れやすさも高まった。
このSoundcore Liberty 5の実力について、今回完全ワイヤレスイヤホンで重要な「音質」「ANC」「装着性/使い心地」の3つの要素を、専門家が個別にチェック。
国内最大級のオーディオビジュアル機器アワード「VGP」で審査員を務める評論家の岩井 喬氏が「音質」、同じくVGPアワードで審査副委員長を務める鴻池賢三氏が「ANC」、そして元イヤホン専門店スタッフとして多種多様な完全ワイヤレスイヤホンを取り扱ってきた谷 未来さんが「装着性/使い心地」をそれぞれ深掘りし、Soundcore Liberty 5が定番モデルたる理由を明らかにする。
イマドキの音作りをしっかり押さえた、どんなジャンルも聴ける「シリーズで最もバランスが良い」音
筆者:VGP審査員 岩井 喬
Soundcore Liberty 5は、中高音を歪みなく再生する能力に長けた9.2mm ウールペーパー振動板ドライバーと、ダクトの共鳴を利用したアコースティックな低音強化設計によって、これまでの世代よりもナチュラルでバランスの良いサウンドを獲得している。
高域にかけて自然な際立ちで強調感も抑えた聴きやすい質感としており、低域も必要以上に厚くするようなことがなく、音場の見通しも深い。
LDACコーデックで接続し、クラシック/ポップス/ロックの複数のジャンルを試聴したが、ANCを入れた状態でも低域のバランスは崩れず、S/N良い空間にスッキリとボーカルがセンターへ浮かぶ。音像の分離も良く、楽器の粒立ちやリバーブ成分の階調性も高い。
まずはクラシックの飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜「第一楽章」は、管弦楽器のほぐれ良く開放的な旋律と、余韻の潤い良い広がりが感じられる。木管パートやティンパニの厚みも適度にふくよかで、弦楽器の低域パートの密度感も弾力良くナチュラルに表現。ホールトーンの豊かさも嫌味がなく、スッキリとした爽やかなハーモニーを味わうことができた。
シンガーソングライター 丁の「呼び声」では、ボーカルのハリ良くシャープな口元とボディの程よい厚みをバランス良くまとめ、コーラスワークとの描き分け、音離れ良い定位感を見せる。リッチで厚みのあるベースラインは存在感があり、キックドラムのドライなアタックも太く逞しい。
しかしパワフルなリズム隊に埋もれることなく、ヌケ良く浮かぶストリングスやピアノのナチュラルな際立ち感、滑らかな旋律の分解能の高さも特筆すべきポイントだ。楽器の数も多く情報量の多い楽曲だが、ハープやアコースティックギターの艶感や粒立ち良い爪弾きまでもしっかりと表現している。
ロックのTOTO『TAMBU』〜「Gift Of Faith」はファットな大口径キックドラムのアタックをエアー感たっぷりに押し出す。エレキギターのシャープな際立ちも伸び良くクリアにまとめ、きつさのない滑らかなトーンでディストーションの質感を聴かせてくれる。ボーカルは程よくボトムの密度があり、口元も細くなりすぎない。
オルガンのふくよかに広がる響きと歯切れ良いアコースティックギターのピッキング、ハイハットシンバルの輝きがコントラスト良く融合。ベースの凝縮した力強い旋律が土台となり、ゴージャスなサウンドをパワフルに支えている。
ベース帯域の豊かさ、押し出しの良さは現在の音作りのトレンドを押さえたものであり、過剰にブーストすることなく、中高域の適度なヌケ感と密度の良さと融合させているのでうるさく感じないことも美点である。Liberty 5はシリーズで最もバランスが取れた見通し良いサウンドを持つハイコスパ・モデルといえるだろう。
