高機能、なのにスマート。値下げでさらに注目の“今買うべき”ヘッドホン「Sonos Ace」をVGP審査員3名がクロスレビュー
マイクの位置、遮音性……絶妙なバランスで作られた高品位ノイキャン
筆者:VGP審査員 海上忍
いまや多くのヘッドホン/イヤホンに搭載されている「ノイズキャンセリング」。電車の走行音や航空機のジェット音など、音楽鑑賞の妨げになる周囲の雑音を低減する機能だ。近年では、消したい音と真逆の振幅(逆位相波)をSoCでリアルタイムに算出し使用する「アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)」が主流となっている。つまり、SoCの演算能力がANCの効果を左右する、強力なSoCを積むほうが有利、というわけだ。
しかし、事はそれほど単純ではない。ノイズ低減は消したい音へ逆位相波を重ねるだけにあらず、ヘッドホンの場合イヤーカップ内に侵入してくる音も減らさなければ意味がない。イヤーカップの素材を吟味し密着度を高めるといった設計、つまり「パッシブ・ノイズキャンセリング」の性能も重要となるのだ。
ANCについても、打ち消したい音をいかに正確に拾うかが鍵となる。マイクをイヤーカップのどこに配置するか、向きをどうするか、数はいくつ必要か……イヤーカップ内外の音響構造も考慮しなければならない。しかもANCの効果は数値化しにくい部分があり、最終的には音質同様に官能評価が決め手となる。耳の形は人それぞれ、慎重にチューニングを重ねなければ誰もが満足する結果を得られないという難敵も控えている。
Sonos Aceは、上述の要素がうまくバランスした労作だ。提供予定のバイノーラル・レンダリング機能で必須とされるSoCの高い演算能力もさることながら、左右イヤーカップへ慎重に配置されたマイク(計8基のマイクのうち6基をANCに使用)、装着感のみならずパッシブ性能をも意識してデザインされたイヤーカップが、ANCの効果を確かなものにしている。
道路に面したカフェで音楽を聴いているとき右イヤーカップにあるANCボタンを押すと、すっとロードノイズが遠ざかる。周囲の人の気配はあるものの、会話のトーンは数段階下がり煩わしさは消える。側圧も適度で装着疲れを感じない。
街中でサティのピアノ曲を聴くと、ANCを有効にしたイヤホンでもノイズに埋もれてしまいがちだが、Sonos Aceではタッチの細かいニュアンスまで聴き取れるから驚く。航空機内の環境を模すべく自宅の換気扇近くでも試したが、かなり耳障りな「強」の回転音が「弱」程度にトーンダウン。空の旅にも安心して連れ出せそうだ。
「アウェアモード」も完成度が高い。ヘッドホンを装着していない状態と同じとまではいかないが、周囲の音が自然に聴こえる。音の方向は正確で、特定の帯域が強調/低減されることもない。エンジニアの丁寧な仕事ぶりを伺えるフィーチャーだ。
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