ヘッドホンリスニングの奥深さを体験できる
AirPods MaxがUSB-C有線接続でロスレス再生に対応!メリットや設定のコツは?
アップルのワイヤレスヘッドホン「AirPods Max」の第2世代モデルが、4月に実施されたソフトウェアアップデートにより、USB-CケーブルでiPhoneやiPad、Macと有線接続し、最大48kHz/24bitのロスレス音声を楽しめるようになった。どんな機能なのか実機で詳しく解説しよう。

最大48kHz/24bitのロスレス再生をサポート
第2世代のAirPods Maxは2024年9月にアップルが発売した、ノイズキャンセリングやダイナミックヘッドトラッキング対応の空間オーディオ再生も楽しめるワイヤレスヘッドホンだ。筆者は本誌にミニレビューを寄稿しているので、こちらの記事も一読してほしい。
発売当初、第2世代のAirPods Maxは有線リスニングに対応していなかった。USB-Cケーブルを挿してできることは充電のみ。初代のAirPods Maxでは変換アダプターを介して有線リスニングが行えたので、ガッカリした。あれから約半年が経ち、無事に有線リスニングが復活して本当によかったと思う。単に有線接続できるというだけではない。本体内蔵のDAコンバーターによって最大48kHz/24bitのUSBオーディオ再生もサポートする。

USBケーブルはAirPods Proに付属する純正のアクセサリーでもいいし、例えばオーディオグレードのUSBケーブルも使える。AirPods Max側がUSB-C端子であればよい。筆者が日頃USBリスニングに愛用している、Beats Studio Proに付属するUSBケーブルを挿しても、音楽を聴いたりハンズフリー通話することができた。
AirPods Maxが内蔵するDAコンバーターのスペックは、やはり上限が48kHz/24bitなのだろうか。アップルが発表したスペックを念のため確かめた。AirPods MaxをiPhone 16 Proにつなぎ、HF PlayerとNePlayerで96kHzのハイレゾ音源を再生すると、48kHzにダウンサンプリングされた。発表の通り、ハイレゾロスレス再生には非対応だった。

USBとBluetooth、オーディオ再生を切り替える方法
AirPods Maxはワイヤレスヘッドホンだ。USBオーディオとの切り替えや、有線と無線の選択はどう行うのだろうか。これは、アプリによって振る舞いが少し異なるようだ。
iPhoneやAndroidスマホの場合、Bluetoothより「USBオーディオが優先」になる。この時にヘッドホンへの給電も同時に行われる。
iPhoneの場合、アプリによる振る舞いの違いもあった。iOSのミュージックアプリの場合、画面下のAirPods MaxのアイコンをタップするとUSBオーディオで再生中であることが表示されるのでわかる。またAmazon Musicの場合、音楽を再生するとAirPods MaxはBluetooth接続を優先してしまう。ヘッドホンをBeats Studio Proに変えて試してみたところ、Amazon MusicでもUSBオーディオが優先された。


AirPods Maxを使って、有線接続でロスレスリスニングを楽しんでいるつもりが、アプリによっては「実はBluetoothだった」ということが起こり得るため混乱する。
またiPhoneやiPadとAirPods Maxを接続した場合、Bluetooth接続も維持される。空間オーディオ再生、ダイナミックヘッドトラッキング、Siriがそのまま使えるし、パーソナライズされた空間オーディオの効果も維持される。
現状では、Bluetooth接続を解除してしまうと、USBオーディオも聴けなくなる。「空間オーディオは不要なので、USBオーディオ出力を強制的に選びたい」という時に、ユーザーが設定を選べるようになると便利だ。
Macの場合も、AirPods MaxをUSBケーブルで接続すると、基本的にBluetoothオーディオよりもUSBオーディオが優先される。ただシステム設定の表示に若干困惑させられる。システム設定の「サウンド出力」メニューの表示は「AirPods Max Bluetooth」のままで、コントロールセンターに加わるAirPods Maxの接続ステータスが「AirPods Max USB Audio」になる。

この状態でドルビーアトモスによる空間オーディオに対応するコンテンツを再生すると、ダイナミックヘッドトラッキングと「パーソナライズドされた空間オーディオ」も効かせて楽しめる。
Macの場合、Bluetoothオーディオをオフにした状態でAirPods MaxとMacを接続し、いわば「強制USBオーディオモード」でリスニングを楽しむこともできた。この場合は空間オーディオやダイナミックヘッドトラッキングの機能は無効になり、ステレオリスニングになる。AirPods Maxの内蔵マイクによる音声通話も使用不可になる。

48kHz/24bitのロスレス再生の音質は、AirPods Maxが対応するAACコーデックのBluetoothオーディオ再生と比べて、劇的に変わる感じはない。逆にいうと、BluetoothオーディオでAirPods Maxによるベストチューンが引き出せているということで、アップルの丹念な音づくりが見事であるとも言える。
低遅延伝送。電子楽器や機内エンターテインメントともつながるメリット
有線リスニングのメリットはロスレス再生の他にも色々ある。例えばワイヤレスオーディオのペインポイントである遅延が抑えられる。たとえばゲームをプレイするときに、操作とサウンドとのズレが解消される。
筆者は趣味でサイレントギターを弾いたりする。ヤマハのSLG200 SeriesはBluetoothオーディオに対応していないので、AirPods Maxによるモニタリングがやりづらかった。別売のUSB-C/3.5mmオーディオケーブルを使って直接つなげるようになったことが嬉しい。

このタイプのケーブルにはApple純正のアクセサリーもある。価格は6,480円(税込)。第2世代のAirPods Maxをパワフルなポータブルオーディオプレーヤーでガンガンに鳴らすのも悪くなかった。

最近、若い音楽ファンを中心にAirPods Maxが人気だ。ミュージシャンやスタジオエンジニアにとって、一般に広く普及したコンシューマーオーディオ機器をリファレンスにして、作品の音づくりを仕上げる工程は大切だ。有線接続ができるようになると、AirPods Maxをスタジオ環境で使いやすくなる。
そして有線接続ができるようになると、AirPods Maxで飛行機の機内エンターテインメントも手軽に楽しめる。今はBluetoothオーディオトランスミッターも複数の製品が発売されているが、やはり“ケーブルで直結”するのがシンプルでいい。
いま第2世代のAirPods Maxを愛用しているユーザーは、ぜひ有線接続によるリスニングも試してほしい。ヘッドホンリスニングの奥深さに触れることができるはずだ。