オルトフォンのMMカートリッジ「Concorde Music」シリーズを組み合わせ!
50万円以下で実現!テクニクスのアナログプレーヤーが「本格レコード再生」にピッタリな5つの理由!
定額の音楽配信が全盛であるいっぽう、レコードの新譜リリースは年々増加傾向だ。併せてレコード関連のオーディオ機器も毎年登場しており、以前に比べレコード再生に取り組みやすい時代になっている。じっくり腰を据えて調整したプレーヤーで聴くレコードは、デジタルにはない魅力に溢れている。
初心者にとって、アナログプレーヤーは敷居が高そうに見えるだろう。だが昨年登場したテクニクスのレコードプレーヤー「SL-1300G」とオルトフォンのMMカートリッジ「Concorde Music」の組み合わせは、初めて方にとって扱いやすいレコードプレーヤーシステムだ。それどころか既にシステムを構築されている方にとっても、一聴の価値がある侮れない実力機でもある。拙宅での試聴レポートと共に、本システムの魅力ポイント5点をお伝えしたい。
・オススメ理由1【セットアップがカンタン!】
・オススメ理由2【調整がとてもラク!】
・オススメ理由3【レコード盤の取り回しがしやすい】
・オススメ理由4【爽やかな音色。空間表現に長けた表現力】
・オススメ理由5【カートリッジの魅力を引き出す高い実力】
昨秋登場したテクニクスSL-1300Gは、既発売のアナログプレーヤー「SL-1500」の上位モデル。電源部や制御回路のローノイズ化、低歪み化したほか、筐体を刷新し高剛性化。プラッターも真鍮/アルミ/デッドニングラバー3層構造とするなど、高級機らしい内容と風格を漂わせている。
レコード再生において、すぐに定速回転に到達するダイレクトドライブ機は使い勝手がよい。「A面の2曲目から聴きたい」といった際に、針を降ろしてから回転を初めても、すぐに定速になるからだ。
Concorde Musicシリーズは、オリジナル機の誕生から45年の時を経て現代に蘇ったHi-Fi用MM型カートリッジ。細長いヘッドシェル一体化ボディは、針先の動きやすさを追求した結果だ。既発売の2Mシリーズ同様、針先違いでレッド・ブルー・ブロンズ・ブラック・ブラックLVB 250の5種類を用意する。今回は価格的に中間にあたるブロンズとブラックをチョイスした。
MM型フォノカートリッジは、針交換費用が安価で済む、多くのフォノ入力対応機器と接続できるなど実運用におけるメリットが多い。その上でConcorde Musicシリーズは、ボディはそのままで好みの針先ユニットにチェンジ可能。しかも全ての針先ユニットの針圧が統一されているので、曲や気分に合わせて気軽に試せる。
商品が届いたらスグにでも音を出したいものだ。だが他のオーディオコンポーネントと違い、アナログプレーヤーは組み立て作業が必要となる。初めてアナログ機器に触れる方は期待と共に尻込みするかもしれない。だがSL-1300Gは、カンタンにセットアップできるので安心だ。
まず梱包がとても丁寧かつ合理的。発泡スチロールなどを使っていない点もよい。段ボールだけなら元箱を畳んで収納できるし、捨てる場合もラクだ。発泡スチロールだとそうはいかない。プラッターが最下段、その上にプレーヤー本体と、梱包が組み立て順に収められているのも嬉しいところ。狭い部屋で組み立てる際、このような配慮はとても嬉しい。
説明書がとても丁寧に作られているのも好印象だ。最近の製品でよく見かける「詳しくはウェブで」ではないので、説明書を見ながら組み立てる際に大変心強い。
同梱品が充実している点も見逃せない。カウンターウェイトもカートリッジの質量に合わせて2種類用意されているし、ヘッドシェルだって入っている。電源ケーブルは言うに及ばず、フォノケーブル(RCA-RCA)、アース線、EP版アダプターまである。オーナーが用意するのはマイナスドライバーと水準器、定規ぐらいだ。
本体にトーンアームが取り付けられた半完成品状態で梱包されているので、本体の組み立てはプラッターをネジ止めするだけ。Concorde Musicをアームに取り付ければ組み立て作業は完了だ。
あとはSL-1300Gの脚部を調整し水平調整をするだけ。ここまで30分もかからずに作業が終わることだろう。
慣れない方にとってトーンアーム調整は難しいところだ。だがConcorde Musicシリーズはヘッドシェル一体型ゆえオーバーハング調整が不要。アームの高さ調整と針圧調整に集中できる。
その高さ調整とて、SL-1300Gはとてもラクだ。多くのトーンアームは精密ドライバーや六角レンチなどを使い、定規とニラメッコをしながら、少し動かしては仮固定という作業を繰り返す。ちょっと上げようとしたら、やり過ぎてやり直すのは日常茶飯事だ。
いっぽうSL-1300Gのトーンアームは、ベース部の大型ダイアルを使って行う。調整範囲は0〜4mmの範囲で目盛りが振られている。少しだけ上下させたいという作業がカンタンだし、落ち着いて作業に集中できる。
インサイドフォースキャンセラーの調整も、アームの高さ調整同様にダイアルを回すだけだ。フォノカートリッジを色々と試す際、針圧とこれらの数字をメモしておけば、ある程度は再現できる
SL-1300Gはレコードをかければかけるほど、よく出来たプレーヤーだと感じる。というのもレコード盤の取り回しが容易だから。まずスピンドルの直径と頂点のカーブ形状が絶妙で、レコード盤のセンターホールにスッとセットできる。また他のアナログプレーヤーに比べてセンタースピンドルが低めであるところも、取り回しの良さに貢献している。
そしてプラッターとレコード外周部の “はみ出し具合” と、ターンテーブルマットの厚みによる “横から見た時の隙間”、そしてプラッター外周部の傾斜により、レコード盤がストレスなく取り外せる。さらにプラッター外周部がマット仕上げなので、鏡面仕上げに比べ手垢が目立ちにくいのも美点。こうした部分は、長年プレーヤーを作り続けてきたからこそのユーザビリティだと思う。
いくら使いやすいといっても肝心なのは音だ。アームリフターを使うと、優しく盤面に針が落ちる。このアームが下りる速度と針先が盤に触れるタッチが絶妙だ。そしてPLAY/STOPボタンを押す。カチンという音とクリック感に指先が喜ぶ。レコード再生において、このような操作感はとても重要だ。
振れる部分でいえば、アームリフターとヘッドシェルの指かけ部分の形状がとても良いところも記したい。
優れたオーディオ機器は見た目と音が一致することが多い。SL-1300GとConcorde Music Bronzeは、その好例といえるだろう。曖昧さがなく、ニュートラルな音色のハイレゾリューションサウンドは、聴きなれたレコードから新たな発見を引き出し、聴き手の知的好奇心を満たしていく。
1999年のヒット曲、ジャミロクワイの『キャンド・ヒート』(USシングル盤)は、複雑にうねるベースラインに軽やかで切れ味のよいパーカッションが綺麗に絡み合う。リズム隊がシッカリと楽曲を下支えするのは、高剛性な筐体による恩恵だろう。そこにブラスやオルガン、そして爽やかなジェイ・ケイの歌声が重なると、振ったコーラ缶のごとく、スピーカーからゴキゲンなサウンドが噴き出す。あまりの気持ちのよい音に、思わず体が動く。
対照的な曲として、2005年に発売された中島美嘉のベストアルバム『BEST』(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)から「雪の華」を聴いてみた。軽やかで優しいピアノの音色と若々しくも脆く儚い中島の歌声は、どこか日本的な美を感じさせるピュアな世界。スレンダーな出音は、筆者が思う彼女のイメージにピッタリ合致する。
レナード・バーンスタインの死去を受け、カルロス・クライバーが代わりに指揮棒を振った1992年の『ニューイヤーコンサート』(ソニー・クラシカル)は、SL-1300GのS/Nの高さもあってか、サウンドステージの広さと深さを綺麗に表現。弾むような活気と切れ味が魅力のポルカ、しなやかで美しい旋律の中に微妙な間をもたせるワルツと、各楽曲の魅力を伝えてくれた。試しにシバタ針の「Concorde Music Black」にしたところ、高域が伸びて、より空間表現が豊かに拡がる。
ハンク・ジョーンズ(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムズ(ds)によるライブセッション『アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(ステレオサウンド盤)は、1曲目「ムーズ・ザ・ムーチ」のドラムソロが聴きどころ。グレッチの24インチのバスドラムの咆哮を危なげなく再生し部屋を揺らした。こちらはブラックよりブロンズの方が好ましかった。
だが残念ながら本システムも万能ではない。バディ・リッチ(ds)がバンドマスターを勤め、激しく燃え盛る炎のようなビッグバンド・サウンドが魅力の「ザ・ロアー・オブ '74」(グルーヴ・マーチャント)は、音の厚さに不満を覚えた。このような楽曲との相性が悪いようだ。
そこで試しにフォノカートリッジをマイソニックのMCカートリッジ「Signature Platinum」に変えてみることにした。40万円弱のアナログプレーヤーに約100万円もするフォノカートリッジというのは非現実的な組み合わせだが、SL-1300Gの実力を知りたいという気持ちに抗えず、気づけば手が動いていた。
SL-1300Gには、小さな白いプラスチック製のオーバーハングゲージが同梱する。使い方は針先をオーバーハングゲージの先端に合わせるだけとカンタンだ。
針を降ろした瞬間、想像を超えるプレイバックに言葉を失った。タイトながらも十分な量感の低域に煌びやかすぎない高域。品位の高さ、見通しの良さ、情報の多さ、芯の力強さがありながらも、神経質さはもちろん、これ見よがしな部分が一切ない自然な楽曲表現。SL-1300GはSignature Platinumの魅力を伝えてくるではないか。SL-1300Gのポテンシャルの高さに恐れ入った。
組み立てやすく、扱いやすく、音もよい。さらに将来はグレードアップにも対応できるなど、長く使える本システム。しかもプレーヤー本体とフォノカートリッジで50万円を切る現実的な価格で揃うのも魅力だ。価格的にはミドルクラスと括られるだろうが、本システムはその枠を大きく超えている。初めてのレコード再生はもちろんのこと、既にレコードプレーヤーを所有されている方にもオススメしたい。
かくいう筆者がそのひとり。50年近く前に作られたEMTのヴィンテージプレーヤーに惚れているが、テクニクスとオルトフォンのマリアージュは、愛聴盤に新たな息吹を与えた。ヴィンテージはレコードに閉じ込められた音を魔力で引き出し、現代機は瑞々しさで掘り起こすのだ。
ヴィンテージ機と現代機による競演は、実に豊かな時間であった。だが、試聴機を返却して以来、筆者は今一度本腰を入れてレコード再生をリスタートすべく、夜な夜なソロバンを弾いている……。
初心者にとって、アナログプレーヤーは敷居が高そうに見えるだろう。だが昨年登場したテクニクスのレコードプレーヤー「SL-1300G」とオルトフォンのMMカートリッジ「Concorde Music」の組み合わせは、初めて方にとって扱いやすいレコードプレーヤーシステムだ。それどころか既にシステムを構築されている方にとっても、一聴の価値がある侮れない実力機でもある。拙宅での試聴レポートと共に、本システムの魅力ポイント5点をお伝えしたい。
■安定のクオリティ、テクニクス&オルトフォンのマリアージュ
・オススメ理由1【セットアップがカンタン!】
・オススメ理由2【調整がとてもラク!】
・オススメ理由3【レコード盤の取り回しがしやすい】
・オススメ理由4【爽やかな音色。空間表現に長けた表現力】
・オススメ理由5【カートリッジの魅力を引き出す高い実力】
昨秋登場したテクニクスSL-1300Gは、既発売のアナログプレーヤー「SL-1500」の上位モデル。電源部や制御回路のローノイズ化、低歪み化したほか、筐体を刷新し高剛性化。プラッターも真鍮/アルミ/デッドニングラバー3層構造とするなど、高級機らしい内容と風格を漂わせている。
レコード再生において、すぐに定速回転に到達するダイレクトドライブ機は使い勝手がよい。「A面の2曲目から聴きたい」といった際に、針を降ろしてから回転を初めても、すぐに定速になるからだ。
Concorde Musicシリーズは、オリジナル機の誕生から45年の時を経て現代に蘇ったHi-Fi用MM型カートリッジ。細長いヘッドシェル一体化ボディは、針先の動きやすさを追求した結果だ。既発売の2Mシリーズ同様、針先違いでレッド・ブルー・ブロンズ・ブラック・ブラックLVB 250の5種類を用意する。今回は価格的に中間にあたるブロンズとブラックをチョイスした。
MM型フォノカートリッジは、針交換費用が安価で済む、多くのフォノ入力対応機器と接続できるなど実運用におけるメリットが多い。その上でConcorde Musicシリーズは、ボディはそのままで好みの針先ユニットにチェンジ可能。しかも全ての針先ユニットの針圧が統一されているので、曲や気分に合わせて気軽に試せる。
■オススメ理由1【セットアップがカンタン!】
商品が届いたらスグにでも音を出したいものだ。だが他のオーディオコンポーネントと違い、アナログプレーヤーは組み立て作業が必要となる。初めてアナログ機器に触れる方は期待と共に尻込みするかもしれない。だがSL-1300Gは、カンタンにセットアップできるので安心だ。
まず梱包がとても丁寧かつ合理的。発泡スチロールなどを使っていない点もよい。段ボールだけなら元箱を畳んで収納できるし、捨てる場合もラクだ。発泡スチロールだとそうはいかない。プラッターが最下段、その上にプレーヤー本体と、梱包が組み立て順に収められているのも嬉しいところ。狭い部屋で組み立てる際、このような配慮はとても嬉しい。
説明書がとても丁寧に作られているのも好印象だ。最近の製品でよく見かける「詳しくはウェブで」ではないので、説明書を見ながら組み立てる際に大変心強い。
同梱品が充実している点も見逃せない。カウンターウェイトもカートリッジの質量に合わせて2種類用意されているし、ヘッドシェルだって入っている。電源ケーブルは言うに及ばず、フォノケーブル(RCA-RCA)、アース線、EP版アダプターまである。オーナーが用意するのはマイナスドライバーと水準器、定規ぐらいだ。
本体にトーンアームが取り付けられた半完成品状態で梱包されているので、本体の組み立てはプラッターをネジ止めするだけ。Concorde Musicをアームに取り付ければ組み立て作業は完了だ。
あとはSL-1300Gの脚部を調整し水平調整をするだけ。ここまで30分もかからずに作業が終わることだろう。
■オススメ理由2【調整がとてもラク!】
慣れない方にとってトーンアーム調整は難しいところだ。だがConcorde Musicシリーズはヘッドシェル一体型ゆえオーバーハング調整が不要。アームの高さ調整と針圧調整に集中できる。
その高さ調整とて、SL-1300Gはとてもラクだ。多くのトーンアームは精密ドライバーや六角レンチなどを使い、定規とニラメッコをしながら、少し動かしては仮固定という作業を繰り返す。ちょっと上げようとしたら、やり過ぎてやり直すのは日常茶飯事だ。
いっぽうSL-1300Gのトーンアームは、ベース部の大型ダイアルを使って行う。調整範囲は0〜4mmの範囲で目盛りが振られている。少しだけ上下させたいという作業がカンタンだし、落ち着いて作業に集中できる。
インサイドフォースキャンセラーの調整も、アームの高さ調整同様にダイアルを回すだけだ。フォノカートリッジを色々と試す際、針圧とこれらの数字をメモしておけば、ある程度は再現できる
■オススメ理由3【レコード盤の取り回しがしやすい】
SL-1300Gはレコードをかければかけるほど、よく出来たプレーヤーだと感じる。というのもレコード盤の取り回しが容易だから。まずスピンドルの直径と頂点のカーブ形状が絶妙で、レコード盤のセンターホールにスッとセットできる。また他のアナログプレーヤーに比べてセンタースピンドルが低めであるところも、取り回しの良さに貢献している。
そしてプラッターとレコード外周部の “はみ出し具合” と、ターンテーブルマットの厚みによる “横から見た時の隙間”、そしてプラッター外周部の傾斜により、レコード盤がストレスなく取り外せる。さらにプラッター外周部がマット仕上げなので、鏡面仕上げに比べ手垢が目立ちにくいのも美点。こうした部分は、長年プレーヤーを作り続けてきたからこそのユーザビリティだと思う。
■オススメ理由4【爽やかな音色。空間表現に長けた表現力】
いくら使いやすいといっても肝心なのは音だ。アームリフターを使うと、優しく盤面に針が落ちる。このアームが下りる速度と針先が盤に触れるタッチが絶妙だ。そしてPLAY/STOPボタンを押す。カチンという音とクリック感に指先が喜ぶ。レコード再生において、このような操作感はとても重要だ。
振れる部分でいえば、アームリフターとヘッドシェルの指かけ部分の形状がとても良いところも記したい。
優れたオーディオ機器は見た目と音が一致することが多い。SL-1300GとConcorde Music Bronzeは、その好例といえるだろう。曖昧さがなく、ニュートラルな音色のハイレゾリューションサウンドは、聴きなれたレコードから新たな発見を引き出し、聴き手の知的好奇心を満たしていく。
1999年のヒット曲、ジャミロクワイの『キャンド・ヒート』(USシングル盤)は、複雑にうねるベースラインに軽やかで切れ味のよいパーカッションが綺麗に絡み合う。リズム隊がシッカリと楽曲を下支えするのは、高剛性な筐体による恩恵だろう。そこにブラスやオルガン、そして爽やかなジェイ・ケイの歌声が重なると、振ったコーラ缶のごとく、スピーカーからゴキゲンなサウンドが噴き出す。あまりの気持ちのよい音に、思わず体が動く。
対照的な曲として、2005年に発売された中島美嘉のベストアルバム『BEST』(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)から「雪の華」を聴いてみた。軽やかで優しいピアノの音色と若々しくも脆く儚い中島の歌声は、どこか日本的な美を感じさせるピュアな世界。スレンダーな出音は、筆者が思う彼女のイメージにピッタリ合致する。
レナード・バーンスタインの死去を受け、カルロス・クライバーが代わりに指揮棒を振った1992年の『ニューイヤーコンサート』(ソニー・クラシカル)は、SL-1300GのS/Nの高さもあってか、サウンドステージの広さと深さを綺麗に表現。弾むような活気と切れ味が魅力のポルカ、しなやかで美しい旋律の中に微妙な間をもたせるワルツと、各楽曲の魅力を伝えてくれた。試しにシバタ針の「Concorde Music Black」にしたところ、高域が伸びて、より空間表現が豊かに拡がる。
ハンク・ジョーンズ(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムズ(ds)によるライブセッション『アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(ステレオサウンド盤)は、1曲目「ムーズ・ザ・ムーチ」のドラムソロが聴きどころ。グレッチの24インチのバスドラムの咆哮を危なげなく再生し部屋を揺らした。こちらはブラックよりブロンズの方が好ましかった。
■オススメ理由5【カートリッジの魅力を引き出す高い実力】
だが残念ながら本システムも万能ではない。バディ・リッチ(ds)がバンドマスターを勤め、激しく燃え盛る炎のようなビッグバンド・サウンドが魅力の「ザ・ロアー・オブ '74」(グルーヴ・マーチャント)は、音の厚さに不満を覚えた。このような楽曲との相性が悪いようだ。
そこで試しにフォノカートリッジをマイソニックのMCカートリッジ「Signature Platinum」に変えてみることにした。40万円弱のアナログプレーヤーに約100万円もするフォノカートリッジというのは非現実的な組み合わせだが、SL-1300Gの実力を知りたいという気持ちに抗えず、気づけば手が動いていた。
SL-1300Gには、小さな白いプラスチック製のオーバーハングゲージが同梱する。使い方は針先をオーバーハングゲージの先端に合わせるだけとカンタンだ。
針を降ろした瞬間、想像を超えるプレイバックに言葉を失った。タイトながらも十分な量感の低域に煌びやかすぎない高域。品位の高さ、見通しの良さ、情報の多さ、芯の力強さがありながらも、神経質さはもちろん、これ見よがしな部分が一切ない自然な楽曲表現。SL-1300GはSignature Platinumの魅力を伝えてくるではないか。SL-1300Gのポテンシャルの高さに恐れ入った。
■まとめ【長年レコード再生を愉しまれている人にもピッタリ】
組み立てやすく、扱いやすく、音もよい。さらに将来はグレードアップにも対応できるなど、長く使える本システム。しかもプレーヤー本体とフォノカートリッジで50万円を切る現実的な価格で揃うのも魅力だ。価格的にはミドルクラスと括られるだろうが、本システムはその枠を大きく超えている。初めてのレコード再生はもちろんのこと、既にレコードプレーヤーを所有されている方にもオススメしたい。
かくいう筆者がそのひとり。50年近く前に作られたEMTのヴィンテージプレーヤーに惚れているが、テクニクスとオルトフォンのマリアージュは、愛聴盤に新たな息吹を与えた。ヴィンテージはレコードに閉じ込められた音を魔力で引き出し、現代機は瑞々しさで掘り起こすのだ。
ヴィンテージ機と現代機による競演は、実に豊かな時間であった。だが、試聴機を返却して以来、筆者は今一度本腰を入れてレコード再生をリスタートすべく、夜な夜なソロバンを弾いている……。