PRオーディオアクセサリー銘機賞2025〈グランプリ〉受賞モデル
ティグロン、電源ケーブルの新境地に到達。“白虎” 「TPL-3000A-WT」の実力をクロスレビュー!
■エネルギーの流れが強力で、確かな飛躍を感じる(井上)
新たな特許技術も加えてこれまでの集大成とした電源ケーブルで、価格も随分高額化してしまったが、構造の説明を聞くとそれも無理のないことと思わざるを得ない。大変手のかかるシールドを施しているためで、これが音質に大きく関与していることは間違いない。
音数が非常に多く、どの音も輪郭がはっきりして立ち上がりに勢いがある。パワーが強いというよりも、エネルギーの流れが強力なのである。またスピードも速い。
音数が多いというのは、例えばオーケストラ・ソースなどで低音部、木管楽器、打楽器といった幾つかの部分が、どこもにぎやかさを増しているように感じるからだ。単に楽譜どおりの音が鳴っているというだけでなく、もっと多様な何か、例えば楽器どうしの響き合いというようなものが細かく引き出されているようなイメージである。その細かな信号が、微小ではあるが明確なエネルギーを持って流れている。それがこのにぎやかさの正体ではないかという気がする。言い換えればそれだけ緻密な再現性が発揮されているということだ。確かな飛躍と言っていい。
■これまでのノウハウを結集させ辿り着いた新境地(生形)
「White Tiger」は、ティグロンが到達した新たな地平を示すフラグシップ・パワーケーブルである。構造を見直して徹底的にシンプル化し美しい外観を獲得しつつも、新たな特許技術のフォトンテクノロジーの搭載などによって、さらなる音質追求を結実させている点が秀逸だ。
これまでのトップエンドであったTPL-2000Aと聴き比べると、音色的なキャラクターが排され、トランスペラレントな方向にシフトしていることがよく分かる。低域方向を充足しながらも剛性感の高い再現で滲みがなく、中・高域方向もニュートラルなレスポンスなのだ。それによって、音楽全体を客観的に俯瞰する視点を獲得している。
加えて、音楽演奏のスピード感や軽快さも充実しており、推進力に富むパワーや時間描写が快い。総じて、ディップ・フォーミング材に一貫してこだわるティグロンが、その素材の持ち味を徹底的に引き出すため、これまでのノウハウを結実させ再度練り直して辿り着いた新境地だと実感する。これに引き続くであろう3000シリーズの展開が、今から大変楽しみである。
■細やかなニュアンスが素晴らしく、まさに筆者が目指す音質(鈴木)
拙宅のCDプレーヤーの電源ケーブルとして試聴したが、ダニール・トリフォノフがソロピアノを弾いている『ラフマニノフ:変奏曲集』から「パガニーニ狂詩曲」を聴くと、全体的にエネルギー感が高いし、最低域の音の馬力も反応良く出るのに、肩肘張ったところのない、ナチュラルな音色感である。分解能は悪くはないが、これ見よがしに見せつけてくるタイプではない。
演奏の細やかなニュアンスの再現性が素晴らしく、音楽自体と向き合える。この音の方向性は筆者の目指しているところでもあり。全面的に賛成したい。
■一閃の強音から残響の消え際まで音色がシームレスにつながる(炭山)
TPL-2000Aの超絶豪快パワフルサウンドで電源ケーブルの頂点へ達したかと思われたティグロンが、より上級の製品を繰り出した時には驚いたが、音を聴いてさらに驚いた。超ワイドレンジで全域に力が漲り、適度なメリハリを立てつつ音楽を骨太に表現するTPL-2000Aに対し、TPL-3000Aは一聴して “力こぶ”らしきものが片鱗もない。聴きようによっては「普通の音」と表現されてしまいかねない傾向のサウンドだ。
しかし、じっくりと時間をかけて聴けば聴くほど、このケーブルはその実力を垣間見せてくれるようになる。まず、全域超ハイスピードなのに、アタックのタイミングがそろっているためかそうと気づきにくい。また、一閃の強音から残響の消え際まで、音色がそろっているせいかごくシームレスにつながっていて、「うわ、これは凄いぞ!」という印象に残りにくいのだ。
それが何を意味しているかといえば、本製品が究極というべき自然さを獲得しているということだ。本当に大変な製品だが、それだけに周辺環境のよく整った装置へ使ってやってほしい。
■圧倒的な音場空間表現力を再現(園田)
TPL-3000Aは既に2回、自宅のシステムに繋いで聴いたことがあった。2回とも、あまりの音の素晴らしさに驚き、耳がこの極上の音に慣れてしまわないようにと慌てて外している。気安く買える価格ではないからだ。
そして今年度の銘機賞にノミネートした同モデルを改めて自宅で聴いてみると、やはりとんでもなく素晴らしい。超絶高解像度ながら耳障りな成分は皆無。質感の硬軟レンジ、音色の明暗レンジはきわめて広い。そして圧倒的な音場空間表現力!音場の前後をここまで明瞭に表現できる電源ケーブルは稀有。日本の電源ケーブルも遂にここまで来たのだ。
ケーブル本体が硬めゆえ取り回しに苦労することがあり得るが、欠点として思いつくのはそれくらいである。新技術フォトンテクノロジーがこの圧倒的な音場空間表現力をもたらしているようだ。下位機にも搭載されたら凄いことになりそうである。ともあれ、今回も本ケーブルを外したあとの音の寂しいことといったらなかった。私も遅かれ早かれ導入せざるを得まい。
■録音ソースそのものを聴くようで感動が込み上げる(林)
タイガーマークをまとった白いジャケット。シリアルナンバーも刻印されたその電源ケーブルは、一聴してハイエンドの存在感を放っていた。
フォトンテクノロジーによって安定したエネルギー伝送が確保されるためか、音楽の流れが実にスムーズで大地にしっかりを根をおろしたピラミッドバランス。かつ超ワイドレンジですみずみまで立体的に展開され、クラシック系の声楽もジャズも生々しい音場の緻密さを実感させる。そんなサウンドだ。
筆者のリファレンスである幸田浩子の『オペラ・アリア名曲集』は、過去のどの電源ケーブルよりも録音ソースそのものを聴くようで、内面からふつふつと感動が込み上げてきた。この表現力は唯一無二かつ極上だ。声に血が通い、ヴィオレッタの喜びや苦脳がリアルに伝わった。チェコのホールでの収録だが、オーケストラのしなやかで気品のあるサウンドが、柔らかく華のある歌声に寄り添うのだ。響きの純度が極限まで高められ、「四季」の古楽器演奏は弦、木管のシルクの光沢が素晴らしい。
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です