PR兄弟モデル「MA910SR」との個性の違いに注目
Maestraudio「MA910SR DC」は “弦楽器もいいが声もいい”。天然杉がもたらす音質を徹底レビュー!
まずはアンバランス接続でMA910SRから聴いてみた。クラシック曲などを聴くと、穏やかな感触だが音色は自然でバランスのよい鳴り方だと感じる。音場の広がりも豊かでホールの響きも美しく再現される。決して高解像度ではないが情報量はよく出ていて、ボーカル曲を聴いても声の質感やニュアンスがよく出る。こちらも十分に優秀なイヤホンだとわかる。
MA910SR DCに切り替えて聴いてみると、いっそう鮮明でクリアな音だと感じる。個々の音の粒立ちがよくなって、音場もより解放感のある広がり方になる。そのため、出音の勢いやエネルギー感がよく伝わる、溌剌とした鳴り方をする。声もクリアで生き生きとした感触だ。
アニメ映画『ルックバック』の主題歌「Light song」を聴くと、聖歌のようなみずみずしい歌声が力強く再現された。後ろにいる聖歌隊との前後感も豊かで、教会のような天井の高い場所での録音と思うような解放感のある音場が気持ちいい。
小編成の弦楽四重奏曲などを聴くと、高域はきれいに伸びるがあまり鋭くはならず、やさしい感触だ。だから、ヴァイオリンの音色の艶やかさが増すというよりも、弦の擦れやふるえ、そして楽器の胴鳴りをふくめた音の響きがリアルだと感じる。音色としてはニュートラルなのでヴァイオリンも自然な音で楽しめるが、個人的にはチェロやコントラバスの低音部を朗々と響かせるような鳴り方が好ましいと感じた。
続いては、別売のオプションケーブル「MAW BOOTES」に交換してバランス接続を試してみよう。導体は銀コートOFCとOFCの4芯ハイブリッド構成でPentaconn earコネクター採用。MA910SR、MA910SR DCと組み合わせて使うことができる。もちろん、qdcのQD1はコンパクトながらも3.5mmアンバランスと4.4mmバランスの出力を持っているので、バランス接続とアンバランス接続の両方に対応できる。
まずMA910SRに装着した場合は、音場の広がりも豊かになるし、QD1の持ち味である中域の厚み、力強さがよりしっかりと出てくる。穏やかな感触の持ち味はそのままに、より表情が豊かになる印象だ。バランス接続でもまとまりの良い鳴り方でさまざまなジャンルの音楽を気持ち良く楽しめる。
MA910SR DCに交換すると、音の粒立ちの良さとクリアさが一層際立ち、低音域の力感もさらに豊かになる。「Light song」では、造語による歌詞だがその言葉がわかるような気がするほどだし、ボーカルの実体感がより厚みを増す。後ろのコーラスも大勢の人数が横に広く並んださまが浮かぶほど見通しよく再現される。この立体感は見事だ。
弦楽四重奏曲も音に厚みが出たことで音にリアルさが増し、特に低音弦の深みのある響きが豊かになる。かなり低い音程もしっかりと描くなど、量感だけでなくローエンドの伸びや解像感が増している。
■異なる個性を持つモデルの登場で、“自然な音” の魅力がより広く伝わるはず
MA910SR DCは弦楽器の再現を目的としているが、音のクリアさや出音の勢いの良さ、余韻まで丁寧に再現する音の波形の正確さが印象的だと感じた。弦楽器だけでなく生の楽器の音はいずれも生き生きと再現してくれるだろうし、ボーカルも表情豊かになるなど、さまざまなジャンルを楽しめる音だ。音場の開放的な広がりも、多くの人にマッチすると思う。
その一方で、MA910SRはちょっと穏やかな印象なので、聴き比べてしまうとMA910SR DCの方が印象に残りやすいものの、持ち前のバランスの良さ、聴き心地の良さは魅力的だ。どちらもバランス接続でさらに魅力が増すので、ぜひMAW BOOTESの追加も検討してほしい。
一見するとフェイスプレートの違いくらいで、あまり変化もないと感じてしまう人もいるかもしれないが、それぞれの個性はかなり違っているとわかった。MA910SRのユーザーならば、この音の変化にはきっと驚くはず。MA910SRは、音質的な改善に加えて、アンバランス、バランス接続の両方に対応するなど完成形と言える製品になったと思っていたが、まだその先があったことには感服した。
シリーズ共通のセラミック技術をいかしたドライバーの実力はまだまだ可能性を秘めていると感じたほど。音の個性の点でもバリエーションが広がったことで、マエストローディオの魅力がより多くの人に伝わると思う。
(企画協力:アユート)