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【特別企画】オーディオ銘機賞2024<金賞>受賞モデル

アキュフェーズ「A-80」は音楽の躍動感を鮮明にする。進化を重ねる旗艦 純A級パワーアンプを聴く

2023/12/01 角田郁雄
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ACCUPHASE(アキュフェーズ)の「A-80」は、同社A級ステレオパワーアンプのフラグシップモデルである。A級モノラルパワーアンプのトップモデル「A-300」のステレオ・バージョンとして企画され、開発期間には5年を要したという。その技術内容が高く評価され、「オーディオ銘機賞2024」の金賞を獲得した。

ACCUPHASE パワーアンプ「A-80」(価格:1,540,000円/税込)

演奏会さながらの深い味わい再生を実現するアキュフェーズ「A-80」



静謐のなかに浮かび上がる、ドビュッシーの『最後の3つのソナタ集』。その一つは、ヴァイオリン・ソナタだ。ピアノの響きは、巧みな打鍵により、自然な立ち上がりを示し、デリカシーに富んだ美しい余韻が空間に広がる。そこに静かにヴァイオリンの響きがクレッシェンドしてくる。ストラディヴァリウスは、しなやかで、胴の響きには濃厚な木質感を憶える。

やがて迎えるフォルテッシモ。ここでは、二つの楽器の音色が空間に溶け込み、演奏の躍動を噴出する。リスナーは、その響きを受け止め、この上ない感動を得る。そして、奏者が創り出す、わずかな旋律の間や楽章の間にも意味があることを理解する。まさに演奏会さながらの深い味わいのディスク再生。

この演奏を堪能させてくれたのは、ACCUPHASEの最新A級ステレオパワーアンプ「A-80」だ。プレーヤーは「DP-1000」「DC-1000」、プリアンプは「C-3900」。スピーカーはBowers & Wilkins「803 D4」で試聴した。

入力端子はRCAとXLRを各1系統装備する。極性切り替えスイッチにより、XLR入力の極性を変えることができる。スピーカー出力端子は2系統で、オリジナルの大型端子が用いられている

次に、マイルス・デイビスの貴重なライヴ盤『コンプリート・ライヴ・アット・ザ・プラグド・ニッケル1965』を聴いた。とても58年前とは思えない、リアルな臨場感だ。マイルスのトランペットは鮮烈な響きを放ち、ウェイン・ショーターのテナーサックスは、リードの響きを鮮明にし、木管楽器のような濃厚極める響きを放つ。この響きが絡み合い、空間に丁々発止する様が浮かび上がる。ロン・カーターのベースとトニー・ウィリアムスのシンバルは速いテンポを創り出し、ハービー・ハンコックは、流れるようなメロディアスなピアノを展開する。

フラグシップモデル「A-300」の技術をステレオ化



A-80は、今まで以上に、あたかもスピーカーの存在が消えてしまうかのような駆動力や諸特性を身につけ、まさにライヴに臨席しているかのような感覚にさせられてしまう。その進化に、少し触れておこう。

デザインは、トッププレートをヘアライン仕上げにするなど、斬新さが加えられているが、シャンパンゴールドのフロントパネルにブラック・スクウェア・メーターを配置する伝統の顔や重厚なヒートシンクは踏襲されている。

今回、内部技術で注目されることは、フラグシップ機「A-300」の技術をステレオ化したことだ。具体的には、出力がA-75よりもA級領域が8%も高出力化され、65W/8Ωとなったこと。電力増幅段(出力段)はMOS FET使用の10パラレル構成で、ダンピング・ファクターが保証値1000であること。

ヒートシンクに取り付けられた電力増幅部。基板上部にNチャンネル用MOS FET 10個、下部にPチャンネル用MOS FET 10個が配置されている

さらに、ノイズレベルを7%も向上させ、ディスクリート構成の信号入力部と電力増幅部のゲイン配分を変更したことだ。前者は、12.6倍(22dB)というハイゲイン。後者は2倍(6dB)だ。信号入力部のゲインを上げることにより、出力ノイズを大幅に下げることができた。

パワーMOS FETは、許容損失電力約200W、ドレイン電流約30Aの大電力オーディオ用が用いられている

しかも、信号入力部アンプは、2素子並列駆動、上下対称差動入力回路。電力増幅部の電圧増幅段もディスクリート構成で、MCS+という2並列回路を構成している。キーポイントは、同じ回路を並列駆動することにより、歪み率特性などの諸特性を向上させていることだ。これが同社伝統の技術の一つで、デジタル機器にも投入されている。例えば、同社のSACDプレーヤーでは、DAC素子を並列駆動することにより、ダイナミックレンジなどの諸特性を向上させている。

信号入力部は、ディスクリート構成によるフルバランス回路を採用。プラス入力とマイナス入力の条件を理想的にそろえることで、バランス回路の性能を高めている

内部回路の技術進化とともに精密さを感じる



そのほかで特筆すべきことは、パワーアンプの電源配線、入出力部の配線を最短化したこと。増幅回路全体での低インピーダンス化が行われたことだ。これはダンピング・ファクターに関係する。具体的には、基板直付けの大型スピーカー端子の採用。さらに大型バスバーを採用による出力の低インピーダンス化と理想的なアース構造の両立だ。

内部は電源部が中央に置かれている。電源トランスと電解コンデンサーの配置が、モノラルパワーアンプA-300とは逆になっている

スピーカー端子の直近からフィードバック(帰還)をかけることにより、逆起電力を完全に制御するバランスド・リモートセンシングという技術も投入されている。リレーを使用しないMOS FETスイッチによる保護回路も搭載。これらにより、ダンピング・ファクター向上に大きく貢献している。

これらの増幅回路の性能をフルに発揮するのは、電源部だ。高効率大型トロイダル・トランスを新開発し、12万μFのカスタムメイド・フィルターコンデンサーを搭載した。

低インピーダンス負荷ドライブに求められる電流供給能力に優れた、大電力容量の大型トロイダル・トランスを搭載する

アルミ電解コンデンサーは特注品。71V/120,000μFの超大容量型を2個搭載している

主たる技術を説明したが、私個人が歴代のモデルを愛用し(現在はA-75を使用中だ)注目していることは、内部回路の技術進化とともに随所に精密さを感じることだ。ヒートシンクに取り付けられた電力増幅基板は、高周波測定器などにも採用されるガラス布フッ素樹脂基板(テフロン基板)。高速伝搬特性に貢献する。精密なディスクリート構成増幅段など、ここでは書き尽くせない魅力がある。

アルミ材のトッププレートは、ダークブラウンの染色とヘアライン仕上げが施されている

その音楽は、冒頭のとおり。音楽の躍動感を鮮明にする。新しいA-80は、世界の多くの愛好家を魅了することだろう。

(提供:アキュフェーズ)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です。

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