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振動板の素材から再検討したフラグシップユニット

究極の“自作スピーカー”を追求できる!フォステクスのフルレンジユニット「FE208SS-HP」 の魅力を堪能した

公開日 2023/03/30 06:35 生形三郎
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振動板も新規開発! フラグシップとなるフルレンジユニット「FE208SS-HP」登場



フォステクスから、自作スピーカー用のフルレンジユニット「FE208SS-HP」 が登場した。SS-HPシリーズは、同社伝統のフルレンジユニットである「FE」の特別バージョンで、数量限定で発売される。

フォステクスの試聴室にて、生形三郎氏が「FE208SS-HP」 の実力をチェック!

ユニット径は同社最大規格の20cmで、今回のFE208SS-HPは、2021年に発売された16cm径の「FE168SS-HP」 、2022年に発売された10cm径の「FE108SS-HP」に続く、第3弾モデルだ。先述のように、同社における20cmサイズは最大径のモデルとなり、いわばフラグシップとも言える存在で、まさに満を持して登場したわけである。

「FE208SS-HP」(価格:55,000円/税込)。FEシリーズはフォステクスのフルレンジユニットのトップシリーズで、「FE208SS-HP」は20cmサイズとこれまでで最大口径となる

このSS-HPシリーズの特徴は、なんといっても印象的な形状と色味を持った振動板にある。星型のように5分割された形状の振動板は、今回このユニットのために完全新規に起こしたHP形状振動板で、剛性を高めるとともに共振を抑える狙いがある。

振動板も本機専用に独自開発。素材にこだわることはもちろん、表面のコーティングや星形の彫りの深さも、音質を考えた上で選定されている

HPとはHyperbolic Paraboloid(双曲線状放物面)の略で、この形状は同社のFE-EΣシリーズや同じく限定ユニットなどにも採用されてきたものだが、SS-HP用に形状が改められるとともに、モデルごとに完全に新規に開発されている。

同じくフォステクスの20cmフルレンジ「FE208EΣ」(クリーム色)の振動板と比較

SS-HPシリーズの振動板は、基層の表面にセルロース・ナノファイバとマイカでコーティングを施すことによって、ヤング率(歪みにくさ)、比曲げ剛性、音速を向上しながら内部損失の低下を抑制するという現代的な技術やノウハウを取り入れたハイテク仕様。薄紫がかったグレイに染められたその色も実に印象的で、振動板形状と相まってハイテク感を高めているように感じる。

また、振動板を支えるエッジや、ボイスコイルを支えるダンパー部分も、同社のユニットでお馴染みUDRT(Up-Down Roll Tangential)形状とすることで、共振周波数を高めつつも分散させてピーク発生を抑制するという、これまでのフォステクスが培ってきた技術が継承されていることも大きな特徴だ。

ボイスコイルの素材や手触りもチェック

切れの良さやスピード感を大切に、「音楽再生の心地よさ」を狙って開発



加えて今回20cm径となる「FE208SS-HP」では、振動板のサイズアップに伴って振動板素材の最適化を実施。16cm「FE168SS-HP」 の振動板素材配合に加えて、新たにアラミドのミルドファイバを加えることで剛性をアップし、振動板サイズの大型化に対応した。

振動板の素材一式。アラミドのチョップドファイバに加えて今回は「アラミドのミルドファイバ」を配合。マイカ、セルロースナノファイバをコーティング。この素材の選定や配合もフォステクスが培ってきたスピーカー技術が込められている

また、磁気回路には大型フェライトマグネットを二枚使用して十分な磁束密度を確保するとともに、ポール部には銅キャップを装着して電流歪みを低減。さらに、T型のポール形状を採用して磁束密度分布の均一化を図ったほか、ボイスコイル径を拡大して低域再現の質感向上を狙うなど、限定ユニットならではの充実した物量投入による積極的なアプローチが実施されている。このあたりの采配は、まさにSS-HPシリーズの音質傾向を実現するためのキーポイントといえる。

「FE208SS-HP」の構成パーツ(左上)とそれを組み立てたところ。T字型のポールにキャップをはめ、2枚の強力なフェライト磁石を組み合わせている

そもそもSS-HPシリーズは、これまでフォステクスから発売されてきた限定ユニットのサウンドの流れから変革を伴っていることが特徴でもある。これまでの限定ユニットは、バックロードホーン(バックローデットホーン)形式のエンクロージャーに取り付け、鮮烈かつハイスピードなサウンド質感の実現に振り切ったものであった。

そこから変革を掲げ、「音楽再生の心地よさ」を狙って開発されているのが、この「SS-HP」というシリーズの流れだ。とりわけ、切れの良さやスピード感を大切にしつつも、耳触りの良い音の質感やサウンドバランスにもフォーカスされているのである。

FE208SS-HPの製品開発を担当した乙訓克之氏(右)に話を聞く生形氏

独特の淡い甘みを伴った音色感が何よりも魅力



これまでに筆者も16cm、10cmと、実際にユニットを使った作例を作りそのサウンドを堪能してきた(10cmは、実は自宅でも愛聴している)。そして、今回の20cmの音も同社の試聴室で確認したのが、当然のこと、これまでの2モデルの魅力が継承されたサウンドがそこにあった。

筆者は、このシリーズのユニットは、明瞭な輪郭表現と底力のある低域再現、そして、振動板独特の淡い甘みを伴った音色感が、何よりもの個性及び魅力であると体感している。それがやはり20cmのFE208SS-HPでもしっかりと引き継がれているのである。

フォステクスの試聴室にてフルレンジユニットの実力をチェック!

独特の音色感のあたりは振動板の素材配合が醸し出している部分であろうし、低域表現の部分も、今回の20cm径でもこれまでと同傾向の音質を達成するべく、まさに先述の剛性強化やボイスコイル径拡大などを経てこそ実現されたのではと推察した。

試聴には、同社が用意したバックロードホーン・エンクロージャーを用いたが、このユニット専用設計の箱ではなかったものの、上記のサウンドの魅力は存分に感じ取ることができた。20cm径ユニットとなると、箱は巨大なバックロードホーンスピーカーとなってしまうが、やはり十分なロード長を持った箱を用意してユニットが持つ低域再現力を最大限味わいたいところだ。

加えて、20cm径フルレンジとなると、高域再生を補うスーパートゥイーターの併用が常套手段と言える。今回のFE208SS-HPも、筆者としては単体で使用しても自然なまとまり感が心地よかったが、よりハイファイかつ明瞭な再生音を求める場合は、やはりスーパートゥイーターのアドオンが望ましいだろう。

試聴用のバックロードホーン・エンクロージャーには、「BK208-Sol」(生産終了)を使用

今回の試聴で実に興味深かったのが、先月記事で紹介した、フォステクス初となるフォールデッド・ダイヤフラム型、つまりハイルドライバー型のトゥイーターユニット「T360FD」との組み合わせだ。意外な組み合わせともいえるが、高能率な両ユニット同士の快活さが遺憾なく発揮された魅力的な組み合わせであった。

スーパートゥイーターのアドオンも効果的!

音色感こそT360FDのキャラクターが前に立つ印象だが、鮮烈なレスポンスが楽しめるそのサウンドは、自作ならではの醍醐味に溢れたもので、まさに最新フォステクスユニットのサウンドが堪能できる組み合わせだと感じた。 FE208SS-HPは、自作スピーカーファンはもちろんのこと、自作は未体験という方にこそ聴いて欲しいサウンドなのだ。

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