HOME > レビュー > パラダイム「Persona B」導入記。「“見える音”を具現化してくれる欠かせない相棒」小原由夫氏

【特別企画】ペルソナを愛する評論家たち(3)

パラダイム「Persona B」導入記。「“見える音”を具現化してくれる欠かせない相棒」小原由夫氏

2022/09/29 小原由夫
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
カナダ発のスピーカーブランド、パラダイム。なかでもブランドの最上位クラス「Persona」シリーズは、オーディオ評論家の間でも愛用者が増えてきている。

小原由夫氏が導入したパラダイムのスピーカー「Persona B」。キャビネットはキャンディアップルレッドメタリック、バッフルはブラック仕上げ

今回紹介するのはオーディオ評論家の小原由夫氏。オーディオ評論家のなかでいち早く「Persona B」を導入した小原氏だが、数多くのスピーカーを所有する同氏がなぜ本機を選んだのか?その理由を紹介しよう。


音の速さと音色の均一性が、機械的なS/Nの向上をもたらす



いつの頃だったか、オーディオ再生において“見える音”を意識し始めた。見える音とはつまり、ステレオイメージの中にボーカリストや楽器奏者が明確な音像定位を伴ってリアルに浮かび上がり、それが3次元的なホログラフィックの如く見えることだ。

しかしながら現実にそれを再現するのはたいへん難しい。音場の見通しが曖昧だったり、音像定位が不鮮明だったりするからだ。その要因としては、伝送系の忠実度だけでなく、スピーカーの「機械的なS/N」が問題になる。エレクトロニクスが介在しないスピーカーでS/Nもへったくれもないだろうと言われるかもしれないが、私がここで言いたいのは、スピーカーが余計な音を出さないことで、機械的なS/Nは高まるということである。

では、機械的なS/Nの向上には何が重要か。第一に、音が速くなければならない。具体的には、インパルスレスポンスが鋭く、トランジェントが良好であること。これは振動板の振動伝播速度も関わるし、エンクロージャーがいかにリジットな構造かにもよる。

そうした視点でスピーカーの振動板の理想的素材を考察すると、「ダイヤモンド」になるのだが、低域を担うウーファーにダイヤモンドを用いることは、その動作的にほぼ不可能。そうなると、次いで振動伝播速度に優れる素材は「ベリリウム」ということになる。

「Persona B」は全帯域をベリリウム振動板で統一した、シリーズ中で唯一のモデル。ウーファー素材が異なる他のシリーズモデルも音色の整合性は図られているが、それでも「Persona B」の均質性は随一といってよい。

スピーカースタンドはティグロンの「MGT-70W」を使用。シャープのプリメインアンプ「SM-SX10」で駆動している

機械的なS/Nでもうひとつ大事なのは、エンクロージャーの構造や造形だ。共振に強い構造であることはもちろん、回折現象が生じにくい形であることも重要だ。ペルソナは7層から成るHDFボードによる高圧プレス成型で、平行面が存在せず、定在波が生じにくい。フロントバッフルは最大厚10oのアルミ製。こうした要素が相まって、エンクロージャーはあらゆるノイズを発生させない基礎となっているのである。

「Persona B」がもたらす“見える音”は、手を伸ばせば触れられそうなリアリスティックな音のフォルムだ。それが広々とした空間の中に整然と居並ぶ。まさにビジュアル的な再生音なのである。

なお、独自の音響レンズ「PPA」の効能は、ペルソナを導入した他者が触れるだろうからここでは割愛させていただく。一言だけ述べると、この機構なしにパラダイムのスピーカーは語れず、外すことなど言語道断。位相と指向特性を司る、言い換えれば“見える音”の重要なファクターなのだ。

エレガンスで精悍な仕上げ、レッドとブラックのコンビ



さて、外装仕上げが真に素晴らしいPersonaだが、標準色の他に用意されたメタリック仕上げは特に美しい。私は鮮やかで艶っぽいキャンディアップルレッドメタリックを選択し、任意に組み合わせられるバッフルと音響レンズは共にブラック仕上げとした。このコンビネーションが精悍さとエレガンスを両立させ、手前ミソながら最高に満足している。

私にとって「Persona B」はセカンドシステムという役割なのだが、プリメインアンプ等のさほど大がかりでないコンポをテストで持ち込まれた際のリファレンスとして欠かせない相棒であり、そのパフォーマンスはメインスピーカーのTAD Reference Oneに勝るとも劣らないと、日々実感しているのである。

スピーカーケーブルはクリプトンのバイワイヤ仕様「SC-HR2000」を使用

創業40周年記念の特別色を発売



今年はパラダイム社の創業40周年にあたり、その記念として日本だけの特別な色の「Persona B」を企画。赤とシルバーによるロッソ・フォッコと黄色と黒のカナリー・イエローの2モデルで、各色共に5ペアの限定品。標準色はもちろん、カスタムにも含まれていない色で、同社が今回のみ特別に製造した限定色モデル。いずれも日本で今回のみ入手が可能だ。

「Persona B Rosso Fuoco(ロッソ フォッコ)」(1,760,000円/ペア・税込)

「Persona B Canary Yellow(カナリー イエロー)」(1,760,000円/ペア・税込)※各色5ペアずつの限定販売。写真はカナダの本社工場で生産中の様子

Persona B スピーカーシステム 1,980,000円(カスタムカラー/ペア/税込) 
Specifications
●構成:2ウェイ・バスレフ型●クロスオーバー:2kHz●周波数特性:60Hz〜45kHz ±2dB●ドライブ・ユニット:1×φ25mm Truextent べリリウムドーム型、1×φ178mm Truextent、べリリウムコーン型●感度:92dB●インピーダンス:8Ω●推奨アンプ出力:15〜 250W●最大入力:150W● 質量:14kg●サイズ:225W× 330D×435Hmm●取り扱い:(株)PDN


取材photo by 君嶋寛慶

(提供:PDN)


本記事は『季刊・オーディオアクセサリー vol.186』からの転載です。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE