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【特別企画】なんて不思議で、なんと魅力的

Persona Bに恋する音楽生活 -飯田有抄のスピーカー導入記-

2022/02/02 飯田有抄
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■あまりに美しい「Persona B」との馴れ初め

クラシック音楽にまつわる文章を書いたりお話しすることを仕事としている私にとって、仕事部屋でオーディオに向き合う時間はとても大切です。毎月のように最新アルバムのレビューなどを書くので、音源の良さを引き出せる装置で丁寧に聴くのは大事なお仕事なのです。

クラシック音楽ファシリテーターとして、執筆や翻訳、コンサートの司会、ワークショップなど多方面に渡って音楽の楽しさを伝える飯田有抄さん。昨今はオーディオ関連の執筆にも活動の幅を広げており、自宅にも本格的なオーディオを導入して日々音楽を楽しんでいる

とはいえ、実を言いますと、仕事部屋にきちんとオーディオを設置し始めたのはごく最近です。2020年の夏、コロナ禍からでした。急激にいろんなことを勉強したり、熱中して取材したりしているうちに、気づいたら部屋の中にはいろいろな機材が集まっていました(笑)。真空管アンプ、レコードプレーヤー、ネットワークプレーヤー、手作りキットで作ったスピーカーなどなど……。自宅近くに借りている私の仕事部屋は小さな和室、六畳一間。なので、小スペースに見合った、心地よく聴けるシステムをいろいろと試して楽しんできました。

そんな私の仕事部屋に昨年末から仲間入りしたのが、パラダイムのスピーカー、「Persona B」です。何年も前に、雑誌に掲載されていた薔薇窓のように美しい“音響レンズ”に目を奪われ、「うわ〜!」と感動したのを覚えています。

昨年末に自宅に導入したばかりのパラダイム「Persona B」。トライオードの真空管アンプとティアックのアナログプレーヤーを組み合わせて

チェンバロという古い鍵盤楽器がありますが、その響版には「サウンドホール」という穴があり、「ローズ」と呼ばれる洒落た装飾を施した蓋が付いています。Persona Bの音響レンズを見た瞬間、その装飾が放つ存在感のことを思い出しました。存在自体がうっとりとするほど美しく、魂を抜かれてしまいそうな楽器がこの世の中には存在しますが、Persona Bはまさにそうした名器を思い起こさせたのです。

クラヴィシンバルムの響板に刻まれるサウンドホール。Persona Bを見た瞬間、このサウンドホールが頭に浮かんだという(※クラヴィシンバルムはチェンバロの前身と言われる鍵盤楽器)

まさか自室にそのスピーカーを設置する日がくるなんて、ゆめゆめ思っていなかったのですが、ご縁とは不思議でありがたいもの。実際に音を聴く機会に恵まれました。聴いてびっくり。私にとって、とてもとても良い音だったのです。

「良い音」とは何か。これは主観的なものでいいと思いますし、正解のない問いですね。私の場合は、いかに「自然」に聴こえるかがとても大事なポイントです。オーディオで楽しむ音源はいろいろとありますが、クラシック音楽を一つの視点にして見た場合、いかにそれが「自然な響き」として感じられるかどうかは、私にとって非常に重要です。

演奏者が伝えたい音楽のあり方をそのまま伝えてくれるのがPersona Bの魅力と語る飯田さん

仕事柄、音楽ホールでピアノ・リサイタルやオーケストラ・コンサートを聴くことが多く、プロの演奏家たちが鍛錬を積んで実現している繊細な音色、豊かなダイナミクス、みずみずしい解釈などに触れ、大きな感動をもらっています。彼らが制作したアルバムを聴くときも、奏者が届けようとしている音楽のあり方、方向性、表現を、違和感なくそのまま伝えてくれるということが、私がオーディオに求めるポイントになります。

その意味で、Persona Bは理想的な選択でした。不自然で過多に強調するような低音はなく、高音域は伸びやかに飛翔しながらも音色は鋭すぎない。ふくよかな中音域がハーモニーに厚みを伝え、アタック(音の立ち上がり)は子音的要素も精細に残しつつ、音楽的に滑らかに回収されてゆく。オーケストラの音圧は迫力たっぷりに、一方で先ほど引き合いに出したチェンバロなどのピリオド楽器の音は生き生きと清朗に鳴らしてくれる。

その響きは、私がこれまでに重ねてきた音楽経験と照らし合わせると、あまりに「自然」。実際にPersona Bの音に触れてふたたび「うわ〜!」と感動したのでした。これはまさに、楽器のようである、と感じました。そして、もっと言うなら、そこにはただただ、音楽がある、と。スピーカー然とした存在感が、スッと消えていくのです。

芸術的で美しいものを鑑賞させてくれるモノは、それ自体が芸術的で美しくあるべきだと、個人的な考えに過ぎませんが、私はそう思っています。Persona Bはその美しさから十分な存在感を放ちながらも、ひとたび音を発すると、けっして目に見ることのできない音楽そのもののように、その存在感をスッと消す。なんて不思議で、なんと魅力的な道具なんでしょう! 恋し過ぎでしょうか? いいんです。お気に入りの道具には、恋してなんぼ、です。

■Persona Bが来て楽しくなったこと

というわけで、私の小さな部屋にブックシェルフ型のPersona Bにお輿入れいただくことになりました。お色の選択は、さんざん迷い、吐きそうなほど悩み苦しみ、出した結論は以下。

キャビネット:ブリティッシュレーシンググリーンメタリック(名前長っ!)
バッフル:銀
音響レンズ:銀

キャビネットのカラーはカスタムで、バッフルと音響レンズはシルバーとブラックから選ぶことができる。飯田さんは「サウンドホール」のような音響レンズの美しさにも惹かれたので、バッフルと音響レンズはシルバーを選択

大正解でした。キャビネットの色は、むかし免許を取って初めて乗った車がこの色に似ていたので選んだのです。グリーンは思っていたよりも深く落ち着いた色味で、私の和室にもピッタリでした。あ〜惚れ惚れ(笑)。どんなにヘヴィな原稿を抱えていても、仕事部屋に来て気分が良くなる。これは大事。それだけでもすでに大きな仕事をしてくれています、我がPersona B。

さて、2カ月弱使用してきました。多い日で4〜5時間。短い日で30分〜1時間程度。ほぼ毎日のように鳴らしています。割と最初から硬さなどは感じなかったけれど、だんだん練れてきたのかなぁという感触もあります。

最近めっきりハマっているのが、FMチューナーで受信したラジオ番組を聴くこと! これだけ良いスピーカーから丁寧に鳴らしたことなんてありませんでしたが、ラジオ放送という概念が私の中で完全に変わりました。

かれこれ20年近く眠っていた(私は存在すら知らなかった!)FMチューナーTRIO「KT-7500」が、ある日自宅の奥底から掘り起こされたのです。そこで、トライオードの真空管アンプ「TRV-A300XR」からPersona Bに繋いでみたところ、「え!? これがラジオ?」というくらい、しっかり肉厚な音で鳴ってびっくり! 古い木造建築が功を奏したのか、ほぼノイズなく、NHK-FMでクラシック番組はもちろん、日頃自分ではなかなか選ばない邦楽の長唄をしみじみ聴いたり、パンクやロックも興味津々で聴けるようになりました。広がる! 我が音楽生活!

飯田さんのお義父さんが使っていたというトリオのFMチューナー「KT-7500」。ラジオからこれほどまでに濃密で豊潤なサウンドが聴けるのかとびっくり!

もちろん、クラシックはしっかり聴いています。Amazon、Apple、Spotify、NAXOSという4社と契約しているストリーミングは多用しています。ハイレゾ音源はかなり解像度高く響きます。しかし私は「聴き疲れ」しやすいタイプ。まろやかなアナログ盤が大好きなので、夜な夜なレコードを洗浄しつつ、ハイドンの交響曲や、リヒャルト・シュトラウスの歌曲など、なんでもかんでも聴いています。

ストリーミングの再生にはBluesoundの「NODE 2i」を。現代の音楽レビューにはストリーミングサービスの活用も欠かせない

CDもやはり使いやすいですね。講座で使うモーツァルトやショパンのCDを選んだり、レビュー仕事やインタビュー仕事、またライナーを執筆するための音源などは真剣にスピーカーと向かい合っています。

大和市の文化講座でクラシック音楽史の解説を担当している飯田さん。講座で再生する音楽の選定にもPersona Bは大活躍

最近は、ピリオド楽器(古楽器とも呼ばれますが、作曲家が生きていた時代の楽器)での演奏をよく聴きます。アーノンクールが指揮するモーツァルトの交響曲は、ティンパニの響きがイキイキ! ショパン時代のエラールというメーカーのピアノを用いたオレイニチャクによるマズルカ集は、どっぷりと哀愁の響きを堪能できます。ジャズ・ドラマー福盛進也さんが立ち上げたレーベル「nagalu」からリリースのピアニスト佐藤浩一さんの「Embryo」は、古典調律によるピアノの音色が心を優しく揺らしてくれる最新モノラル録音です。

疲れた時は、大好きな「ポストクラシカル」というジャンルの音源を聴いています。エレクトロニクスとアコースティック楽器を融合させて、アンビエント的で洒落た音響の作品が多いです。ほっと一息つきたい時、耳をリフレッシュさせたいときなどにかけています。

仕事に疲れてホッと一息付きたいときはポストクラシカルをゆっくりと。アンビエンスの広がり感などはやはり優れたスピーカーでこそ美しさが引き立つ

haruka nakamuraさんのアルバム「twilight」は、日常音なども入ってくるので、すごく体温を感じるお気に入りの作品です。友人をお招きしたときに小さい音でかけていたら、「すごくいいですね」と言ってもらえて嬉しかった。スウェーデン出身のミカエル・リンドの「Current Creations」は、エレクトロニクスが演出する凛とした空間の広がりと、味わい深いピアノの音色の織り合わせが素敵です。

また、凄腕奏者たちが、本気で演奏する映画音楽やアレンジ作品なども、心をスッキリとさせてくれるので、私の音楽生活には欠かせません。

箏の貴公子LEOさんの『In A Landscape』、チェリスト宮田大さん、ギタリスト大萩康司さんと凄腕二人が組んだ『Travelogue』、おんがくしつトリオも可憐でグルーヴィー

学校の音楽室で奏でられているリコーダー、鍵盤ハーモニカ、ピアノという楽器編成で、高度な演奏テクニックと泣けるほど感動的なアレンジで聴かせる「おんがくしつトリオ」の映画音楽アルバム「シアトリカル」は、聴いているとおもわず身体が動き出してしまいます。LEOさんのアルバム「In A Landscape」では、古典曲や現代曲のアレンジが、粒立ちよく、なおかつ奥行きのある箏の響きを聞かせてくれます。宮田大さんと大萩康司さんのチェロとギターによるアルバム「Travelogue」は暖かなお二人の音色に包まれる時間が大好きで、ヘビロテしています。

そんなPersona Bとの生活は、まだまだ始まったばかりです。ゆっくりじっくり、いろんな音源、いろんな機材との組み合わせも、しっかり楽しんでいこうと思います。

(提供:株式会社PDN)

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