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【特別企画】オーディオ銘機賞2022 銀賞受賞

さらなる低ノイズ化を実現。アキュフェーズのプリアンプ「C-2900」のスリリングなサウンドを味わう

2022/03/07 石原 俊
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アキュフェーズの新製品プリアンプ「C-2900」が、オーディオ銘機賞2022銀賞を受賞した。本機最大の特徴は、バランス回路で構成した「Balanced AAVA」を搭載したことにある。さらなる低ノイズ化を実現する本機の実力を掘り下げてみよう。

ACCUPHASE プリアンプ「C-2900」(価格:1,430,000円/税込)

■独自の音量調整回路AAVAをバランス化して搭載

アキュフェーズがセカンドトップのプリアンプ「C-2900」を発売した。その祖であるC-2800が世に出たのは2002年のことで、それから4世代にわたる改良がなされてきた。本機の最大の特徴は、アキュフェーズ独自の音量調整回路であるAAVAがバランス化されたことである。

AAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)について、ざっとおさらいしておこう。これは、音楽信号の電圧をV-I(電圧-電流)変換器で1/2の1〜16乗の電流に変換し、CPUで制御された16基のスイッチのON/OFFによる組み合わせで、ボリュームノブの位置と整合性のとれた電流値を得、それをI-V(電流-電圧)変換器で音楽信号の電圧に戻して出力するものである。

AAVAは回路規模が大きいので、大型のフォノイコライザーモジュールのスペースを確保しなければならない同社のプリアンプに搭載するのは不可能と思われていたが、それをアキュフェーズはやってのけたのだ。ちなみにAAVAのバランス化によってマイナス2dBの低雑音化が達成された。

他にも高音質を得るための取り組みが満載されている。回路は全段ともディスクリート構成だ。入力段の利得を高くし、出力段の利得を抑えるという、アキュフェーズのお家芸的な低雑音化手法が用いられた。入力アンプに低雑音、高ゲイン、低歪みな電流帰還アンプを採用し、出力アンプに完全差動型アンプを搭載することで高音質化が図られている。

本機の内部(フォノイコライザーユニットAD-2900が装着された状態)。信号回路、電源部ともに左右チャンネルで独立している

筐体の剛性は前モデルの「C-2850」と同様で極めて高い。電源回路は左右chに各一基の電源トランスを擁する贅沢なものだ。4基の新開発ブロックコンデンサーの静電容量は40,000μF。この値は12基/120,000μFの「C-3900」に比べて見劣りがするかもしれないが、電源部のコンデンサーの容量は単に大きければいいというものではない。

入力端子はRCA×5とXLR×2。RCA端子のREC IN/OUTも装備する。出力端子はRCAとXLR各2系統。別売のフォノイコライザーユニット用のスロットが背面左側に設けられている

本機はヘッドホンアンプにも手を抜いていない。プリアンプ部と同じくディスクリート構成で、利得を3段階切り替えられることとから、さまざまなヘッドホンに対応可能だ。

先にも触れたが、フォノイコライザーモジュールはオプションだ。本機と並行して新型の「AD-2900」が開発された。以前のモデルに比べて低雑音化が図られているほか、200Ωの負荷抵抗ポジションが新設された。

■ワイドレンジで聴感上のSN比が高い。まさに「アキュフェーズの音」

テストはアキュフェーズの試聴室で行った。本機のボリュームノブの感触は、上級機のC-3900とはいささか異なっている。どちらも高級感に満ちているのだが、C-3900がどちらかというとゆったりと動かすのが心地よいのに対して、本機は直感的にサッと回しても音量がピタリと決まるような感覚だ。

これは音質とも微妙にリンクしていて、C-3900は重量級のセダンを大排気量エンジンの分厚いトルクを利して操るかのような趣であるのに対して、本機は高級クーペを高回転エンジンで疾走させるかのようなスリリングさがある。両者の感覚の微妙な差異は、スピード感という月並みな言葉で片づけられない。

基本的には「アキュフェーズの音」である。ワイドレンジで聴感上のSN比が高く、カラーレーションが極めて少ない。音場は極めて広大で、音場は清潔で輪郭線がない。音楽的には楽曲・演奏に不介入な客観型なので、ある程度の知識がないと音楽がつまらなく感じられるかもしれないが、そのあたりはユーザーの精進に期待しよう。ともあれ、極上のプリアンプの登場を喜びたい。

(提供:アキュフェーズ)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』からの転載です。

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