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【特別企画】話題の10万円台スピーカーにも注目

ATOLLの中核シリーズを人気スピーカーと組み合わせ!個性をどう引き出すか検証

公開日 2022/03/01 06:30 井上千岳
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■電源やパーツをさらに強化。100シリーズのサウンドは?

続けて、中級価格帯の本格モデルとなるCD100/IN100 Signatureの「100シリーズ」との組み合わせを見てみよう。

ATOLL「IN100 signature」198,000円(税込)

ATOLL「CD100 signature」231,000円(税込)

「IN100」は電源トランスを2基搭載したデュアルモノ構成。出力は100W×2/8Ωを備える。「CD100」はTI社製電流出力型DACを採用し、アナログ出力はディスクリート差動構成としている。このコンビで、「50シリーズ」よりワンランク価格帯が上となる注目のスピーカーを3機種聴いてみることにした。

■KRIPTON「KX-0.5II」 〜ハイスピードで強力、説得力の高さに目をみはる

ブックシェルフ型の定番とも言えるクリプトンの最新モデルで、14cmウーファーとリングダイヤフラム・トゥイーターを搭載する。当たりがよく立ち上がりも明瞭なクリプトンの特質を十分に把握しながら、さらに闊達に駆動している雰囲気がある。イメージしていたよりも、もっと瞬発的なエネルギーが高く、ジャズではトロンボーンやドラムの起伏が大きくまた速い。いつものイメージより、ハイスピードで強力なのが注目される。

KRIPTON「KX-0.5II」(価格:214,500円/ペア/税込)

バロックは弾みがよく、楽器ひとつひとつのエネルギーが高まった印象だ。暴れはなく高域での硬質感も見られないが、スピーカーに最大限の力が伝わっている。ピアノはスケールが大きく、タッチの彫りが強い。低音部の力感も高く強弱のダイナミズムが広く、本機のポテンシャルをぎりぎりまで引き出した鳴り方が見事だ。

室内楽も滑らかでしかも躍動的だ。弦楽器の質感と音色が滑らかで艶やかな色彩を持ち、一音一音がくっきりとした輪郭で時には峻烈なフォルテも聴かせる。

オーケストラも同様に緻密で彫りが深く、音楽の意味の重さを実感させる再現である。高低両方に伸びやかでエネルギッシュに鳴り渡り、弱音部でもひとつひとつの音が実在感を持つ。説得力の高さに目をみはる思いである。

■QUADRAL「SIGNUM 70」 〜音楽の起伏が豊かで表情に富んでいる

SIGNUMはトゥイーターに新開発のリングラジエーターRicom Σを搭載した注目のシリーズで、本機は2機種あるフロア型の小型の方になる。アトールとこういう形で組み合わせるのは初めてのことだが、両者の性格から考えて悪いはずはないと思った通りの鳴り方がする。情報量とその精密さが予想以上だ。

QUADRAL「SIGNUM 70」(価格:217,800円/ペア/税込)

手始めに鳴らしてみたジャズが、ふくよかなタッチで優しい出方をする。ちょっと柔らかいかとも感じたがそうではなく、歪みっぽさがないため当たりがよかったのだ。この点をまず強調しておきたい。

バロックはいきなり躍動感に富んだ演奏が始まる。どの楽器も弾むように生き生きとして濁りがない。特筆したいのが中・低域の柔和な質感で、瞬発力も量感も豊かだが当たりがいい。

ピアノは芯が強く弾力に富み、豪快というのとは違うもっと精密な力強さがある。雄渾そのもので、存在感に溢れたリアリズムが格別。室内楽はさらに求心的なイメージで、聴く人を強く惹きこんでゆく。出方がきめ細かく、また立ち上がりのエネルギーに富み、表情の変化が多彩で、彫りが深いのである。

オーケストラは奥行の深い音場にたっぷりとした響きが充満し、艶やかで潤いに満ちた弦楽器や輝かしい金管楽器が自在に鳴り渡る。硬質感や刺がなく、大音量でも耳を刺すことがない。カンタービレは静かで滑らかだが、音楽の起伏が豊かで表情に富んでいる。このしなやかさが真骨頂である。

■ELAC「SOLANO FS 287」 〜現代オーディオならではのリアリズム

ELACの中核となる2021年のニューモデルで、JETXトゥイーターとアルミ・ダイキャスト製フレームのASコーン2基を搭載したフロア型だ。バロックは古楽器らしい艶と粘りがちょうどいい。オーボエが艶やかで、哀調を帯び、その通りと言いたいような手触りがデリケートでほのかにふくよかだ。弦楽器も精妙で潤いに富み、アンサンブルがしっとりとした響きに包まれて、すっぽりと空間に収まっている。

ELAC「SOLANO FS 287」(価格:506,000円/ペア/税込)

ピアノは何はともあれ楽器そのものの存在感が鮮烈だ。まるで目の前で鳴っているのが見えるような手応えで、タッチは強靭で線が太く、低音部の肉質感の豊かさが際立って厚みと深さを感じさせる。音のひとつひとつがものを言っているように雄弁である。

室内楽も同じようなリアリティに溢れている。響きの内部から音が出てくるようなイメージで、アンサンブルが生きているように動く。全てがぴったりなのである。

オーケストラは厳しく、少しの緩みもない。どの楽器も緊迫して、それが空間にも伝わるように響きが透き通っている。トゥッティのフォルテを聴けば実在感の違いが分かる。続く弦楽器のピチカートがいかにそこにあるように感じられることか。音楽が生きて聴こえてくる、現代オーディオならではのリアリズムである。

以上、2ラインナップ×3スピーカーで、合計6モデルのサウンドを聴いたが、それぞれの特質がいずれも定評以上に引き出されていて、そのことが非常に印象に残っている。各モデルの意外な側面が見られたのも大変興味深い。ぜひ実際に聴いて確かめていただきたいものである。

(提供:DYNAUDIO JAPAN)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.184』からの転載に加筆・修正を加えたものです。

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