HOME > レビュー > アップル「AirPods Max」レビュー。61800円は高くない、唯一無二のヘッドホン

あらゆる角度から真価に迫る

アップル「AirPods Max」レビュー。61800円は高くない、唯一無二のヘッドホン

公開日 2020/12/13 18:54 山本敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

ほかのヘッドホンでは味わえない、空間オーディオとダイナミック・ヘッドトラッキング

続いて、AirPods MaxをiPad Airにペアリングし、「空間オーディオ」と「ダイナミック・ヘッドトラッキング」による没入感あふれる映像エンターテインメントを体験してみよう。

AirPods Maxはアップルの「空間オーディオ」と「ダイナミック・ヘッドトラッキング」技術に初めて対応するワイヤレスヘッドホンだ。

空間オーディオの仕組みと体験できることの詳細については本誌で繰り返し紹介してきたので、例えばこちらの記事などを合わせて参照してほしい。

iOS14/iPadOS14以降の端末との組み合わせで、空間オーディオに対応するビデオコンテンツの臨場感あふれるサウンドが楽しめる

空間オーディオはiPhone/iPadとAirPods Max/Proのシンプルな組み合わせだけで楽しめる。ユーザーの頭と体が向いている方向をトラッキングしながら、コンテンツの音像をあるべき位置に正しく定位させる「ダイナミック・ヘッドトラッキング」の効果も合わせて楽しめることによって、まるで映画やドラマのコンテンツの舞台に入り込んでしまったかのようにリアルな没入感あふれる立体サウンドが体験できる。プレーヤー機器であるデバイスとポータブルオーディオ、そして両者を高度に制御するソフトウェアを一体のものとして開発するアップルだからこそ実現できた、最先端のモバイルエンターテインメントだ。

筆者が本稿を執筆している2020年12月現在、日本国内で楽しめる空間オーディオ対応のビデオコンテンツは「Apple TV」アプリで楽しめるApple TV+のオリジナル作品、またはiTuens Storeからレンタル/購入してApple TVアプリで見られる作品だ。音声がDolby Atmos、または7.1ch/5.1chのフォーマットにより製作されている必要もある。そしてAirPods Maxは空間オーディオに対応したOSを入れたiPhone、iPadと直接ペアリングされている必要がある。

第4世代のiPad AirでApple TV+のオリジナル作品「グレイハウンド」を視聴した

映画視聴編:あの話題作でひと味違う没入感を満喫した

はじめにApple TV+のオリジナル作品である映画『グレイハウンド』を視聴した。舞台は第二次世界大戦下の大西洋、アメリカとドイツの海軍による洋上戦を迫力たっぷりに描いた大作だ。

冒頭の13分から23分あたりまで展開する、主演のトム・ハンクスが演じるクラウス艦長の駆逐艦“グレイハウンド”の乗組員が連携してUボートを撃沈するまでのシーンは空間オーディオとダイナミック・ヘッドトラッキングの体験に持ってこいだ。

荒波に飲まれそうになりながら洋上を進む船の甲板を、高いところから降ってくる波しぶきが激しくたたきつける。縦方向のダイナミックな空間の広がりが、舞台の情景に生々しい奥行き感を生む。水測員が息を殺しながらソナーで敵潜水艦を探知するシーンでは、AirPods MaxのANC機能により、役者のささやくような声と息づかいを耳元のすぐ側で感じられる。

顔の向きを変えてみると、ダイナミック・ヘッドトラッキングにより役者のダイアローグが正面に定位したまま、周囲をぐるりとエフェクト音に囲まれた臨場感が楽しめる。海中で炸裂する機雷がUボートを撃沈するシーンでは、ずしんと腹の底に響くような爆音がリアルだ。アクション映画の低音もAirPods Maxは破綻させることなくタイトに引き締め、緊張感あふれるサウンドを響かせる。

2018年に大ヒットを記録したロックミュージカルの『ボヘミアン・ラプソディ』も、空間オーディオと抜群にマッチする。ラストのウェンブリー・スタジアムのライブ演奏は、緊張に包まれた静寂から第一声を解き放ち、そのまま熱いグルーヴに昇華させていくクイーンの演奏にぐいぐいと引き込まれてしまう。

バンドの楽器を前面に立てながら、巨大なウェンブリースタジアムを埋め尽くす圧倒的な歓声の包囲感とのバランスをAirPods Maxが見事なまでにリアルに再現した。映像を見ながら、まるで自分がクイーンのメンバーになってステージで演奏しているような感覚に舞い上がってしまった。これは空間オーディオとダイナミック・ヘッドトラッキングに対応している、アップルのAirPodsシリーズでなければ味わえない極上の体験だ。

マット・デイモンとクリスチャン・ベールが主演したモータースポーツドラマ「フォードvsフェラーリ」では、物語中盤で、主人公のキャロルがフォード社長をレーシングカー「GT40」の助手席に乗せてサーキットを滑走するシーンを見た。

ドスのきいた太い轟音をあげるエンジン、タイヤが路面を鋭く切り裂く音が頭のまわりを高速で旋回する。サウンドエフェクトを派手に盛りすぎず、シンプルに原音を再現するAirPods Maxは、リアリティさに定評のある本作の“クルマの音”を忠実に再現できるヘッドホンのひとつではないだろうか。ダイナミック・ヘッドトラッキングの効果もやはり目覚ましく、レーシングカーのハンドルを握りながら運転しているかのような体験にのめり込んだ。

次ページノイズキャンセリングとヒアスルー機能を試す

前へ 1 2 3 4 5 6 7 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: