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マランツ「SACD 30n」「MODEL 30」を聴く。70年の伝統を受け継ぐ新たなマイルストーン

2020/10/07 山之内 正
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音色とダイナミクスを描き出し、演奏の本来の表情を引き出してくれる

ベースモデルのSA-12とPM-12の再生音をあらためて確認したうえで、まずはプレーヤーをSACD 30nに変更、その後アンプをMODEL 30に変更する形で聴いた。

D&Mの試聴室にてSACD 30n、MODEL 30の試聴を行った

SACD 30nは音色を描き分ける性能が優れている。演奏家ごとの発音やタッチの違いだけでなく、たとえばヴァイオリンの製作者やピアノのメーカーなど、楽器固有の音色の特徴を聴き取りやすいのだ。ハイメ・ラレードとマーゴ・ギャレットのデュオを聴くと、テンポや曲想に応じて弓の速さを変えたときの発音の違いやピアノのレガートの柔らかさなど、奏法の違いがそのまま伝わってくる。穏やかなフレーズはよりなめらかに、フォルテで演奏する主題は太く力強い音色が際立つという具合で、演奏の起伏がとても大きく感じる。

ジェーン・モンハイトのヴォーカルは声のなめらかさに惹かれる。中低音域には包み込むような柔らかさとウォームな感触があって、豊かなボディ感を実感。マイケル・ブーブレのヴォーカルも声の甘さが際立ち、良い意味でウェットな感触がある。ホーン楽器はアタックが速く動きが敏捷。カラッと明るい音色でヴォーカルとの鮮やかな対比を引き出した。

SACD 30nは、楽器固有の音色の特徴や奏法の違いをそのままに描き出してくれる

アンプをMODEL 30に替えて同じ曲を聴くと、ヴァイオリンとピアノの二重奏では弦の高音域がさらになめらかになり、ピアノの余韻は柔らかく広がる。ヴァイオリンが重音で弾くフォルテに力みや硬さは皆無だが、ピアノ伴奏から主役にまわるフレーズでは、決然とした力強い音色が前面に出てくる。音色とダイナミクス両方の違いを正確に描き出すことで演奏から本来の表情を引き出すのはSACD 30nとMODEL 30に共通する資質のようだ。

モンハイトの曲ではホーン楽器が歯切れ良さと明るい抜けの良さをキープしつつ、突き刺さるような線の細さはなく、いい具合に芯のある音を出す。ピアノとベースが刻むリズムが緩まないので、サポートの楽器群がテンポを引きずらず、軽快に前に進んでいく。俊敏な運動性を自然に引き出すことはマランツのコンポーネントに共通する美点の一つで、今回の新製品群もそれを引き継いでいると感じた。

音色やダイナミクスの違いを正確に描き出す。俊敏な運動性を自然に引き出すというマランツ製品の美点もしっかり受け継いでいるようだ

SACD 30nとMODEL 30の組み合わせで大編成のオーケストラを聴くと、敏捷な動きと量感がバランス良く両立していることに気付く。ショスタコーヴィチの交響曲のなかでも凶暴な一面が際立つ第11番の第4楽章をストゥールゴールズ指揮BBCフィルの演奏で聴くと、トランペットの鮮烈なアタックをトリガーにして全楽器がめまぐるしく動き回り、音が激しくぶつかり合う。演奏の熱気がダイレクトに伝わり、テンションの強さで体温が上がりそうだ。

ムジカ・ヌーダのヴォーカルは声のフォーカスが鮮明で、ベースが刻むリズムに緩みがない。声と楽器が一体となって動く爽快なまでのスピード感がこのデュオの聴きどころなのだが、SACD 30nとMODEL 30のペアは、まさにその一体感をリアルに再現してくれた。ベースはA線やE線の太い音を緩みなく再現するが、大音量で聴いても制動が緩むことはなく、その後の音にかぶらない。

今回はマランツの試聴室に常設のB&W「802D3」で試聴を行った。ご存知の通り、アンプの性能を容赦なく伝えるスピーカーだ。ミドルクラスのプリメインアンプにとって、802D3のウーファーを適切に制動しつつ、十分な量感を引き出すのは若干荷が重いのではと懸念していたのだが、余計な心配だったようだ。チャンネルあたり200Wの大出力を確保し、インピーダンス変動の影響を受けにくいHypexのクラスDアンプが強みを発揮したものと思われる。



30シリーズは12シリーズの後継という位置付けで、SA-12とPM-12は生産完了となる。OSEバージョンの2機種は引き続き販売されるようだが、これを機に世代交代が進んでいく可能性もある。

デザインを一新した30シリーズは、クオリティ面でも単純には従来機と比べられない領域に上がってきた。既存ラインの後継というより、マランツのコンポーネント群の中核を担う新グレードと位置付けた方が良いのではないか。70年の歴史を刻んできた名門ブランドに新たな潮流が生まれたことを、まずは歓迎したい。

(協力:D&Mホールディングス)

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