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逆位相でピークノイズを打ち消す「T.F.A.T」が鍵

新技術で三度飛躍! Unique Melodyのハイブリッド型カスタム「MAVERICK III」レビュー

公開日 2019/11/22 17:00 編集部:成藤 正宣
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T.F.A.Tは、音導管の先端に配置した専用のBAドライバーを用いる技術だ。このBAドライバーは音を奏でるのではなく、ピークノイズという音の “耳障りな成分” をピンポイントで打ち消す「逆位相」の音を発生させる。ノイズキャンセリングヘッドホン/イヤホンが周囲の騒音を打ち消すのに似たメカニズムだ。

音導管の先端に配置した専用のBAドライバーで、ピークノイズをピンポイントに打ち消す仕組みが、Unique Melody独自の「T.F.A.T」だ

なおMAVERICK IIIとMAVENとでは、使用するドライバーの違いからピークノイズ除去の周波数帯域が異なっている。MAVERICK IIIでは5kHz辺りにT.F.A.Tを効かせているという

音の耳障りな成分を抑制する手段は、昔から様々なメーカーが様々な特許技術を考案している。そういった既存の技術と被らず、かつユーザーの耳型に合わせて内部の容積や構造が変わるカスタムIEMでも安定して採用できるアイデアとしてUnique Melodyが編み出したのがT.F.A.Tという訳だ。“耳障りな成分” を打ち消した結果何が起こるのかは、この後の試聴レポートでお届けしたい。

ちなみに、T.F.A.TのドライバーはMAVERICK IIIの音導孔の先端に配置されており、開口部からは丸見えの状態。「なんだか大事そうなものがこんなに丸出しで大丈夫……?」と思うかもしれないが、Unique Melodyの開発者によれば、一般的なカスタムIEMと比較しても特別耐久性や耐汗性が劣るわけではないそうなので、安心してほしい。

T.F.A.T用BAドライバーは、通常のBAドライバーと異なり真横に開口部のあるセミオープン構造

ただ、ホコリや耳垢のような汚れが入り込みやすい構造であることは確か。何かゴミのようなものが付着していたら、MAVERICK IIIに同梱されているクリーニングツールを使い、BAドライバーに傷を付けないよう優しく取り除くといい。

技術の進歩により、ユニークなドライバー構成もとうとう変化

T.F.A.T用ドライバーが加わったことで、搭載ドライバー数はMAVERICKシリーズ共通のダイナミックドライバー1基+BAドライバー4基の計5ドライバーから、ダイナミックドライバー1基+BAドライバー5基の計6ドライバーに増加した。

MAVERICK IIIの構造図。計6ドライバー構成となり、低域はダイナミックドライバー1基がカバーするかたちに

しかし、ドライバー構成の面では、数以上に大きな変更がある。低域担当のドライバーが、ダイナミック+BAの2基から、ダイナミック1基だけになったのだ。

これまでダイナミック+BAドライバーという特徴的な構成で鳴らしていた低域は、MAVERICK IIIにてダイナミックドライバー1基に改められた

円形の振動板で空気を大きく震わせることができるダイナミックドライバーを、低い周波数帯専門で再生させる。これはハイブリッド型でごく一般的な考え方だ。しかし、立ち上がりの鋭いキレの良さ、硬質な芯を感じさせる点では、BAドライバーの低音にも見るべきものがある。

そこで、これまでのMAVERICKシリーズでは、ダイナミックドライバーとBAドライバーをセットで低域に割り振り、立ち上がりと厚みを両立させていた。他にあまり類を見ないユニークな試みで、シリーズのアイデンティティにもなっていたはずだ。それが一般的なハイブリッド型イヤホンと同じような構成へ、いわば先祖返りしたともいえるが、どういうことなのだろうか。

宮永氏によれば、低域をダイナミックドライバーのみに任せる事を決断できたのは、ダイナミックドライバーの性能向上が大きなポイントなのだそう。初代MAVERICKから5年、BAドライバーの助けなしでも立ち上がりのレスポンスが良く、キレの良さを備えたダイナミックドライバーがようやく登場するに至ったという訳だ。

これに伴い、ドライバーの担当周波数帯域を分けるクロスオーバーポイントが再調整され、BAドライバー1基が改めて中低域に割り振られている。また、低音域の量感が、これまでよりやや多めに調整されている。これはT.F.A.Tによって存在感を増した中高域と釣り合わせる為とのことだ。

T.F.A.Tの効果は想像以上。いつも以上の大ボリュームで聴きたくなる懐深いサウンド

宮永氏はMAVERICK IIIの進化点について、「S/N」そして「音像」という2つのキーワードを繰り返し強調する。筆者の手元に届いたMAVERICK IIIをソニーのウォークマン「MW-WM1A」や、Astell&KernのDAP「A&ultima SP2000」と接続すると、その2つのキーワードがMAVERICK IIIの特徴を正しく、端的に言い表していると理解できた。

編集部に到着したパッケージを開梱。Dignis社製のセミハードケースの中に、MAVERICK IIIは収められている

筆者はMAVERICK IIIの到着まで、予習がてらユニバーサルタイプのMAVRICK/MAVERICK IIを聴き込んでいた。その記憶と比較しても、MAVERICK IIIはシリーズのコンセプトの大部分をしっかりと受け継いでいると言える。

筆者のMAVERICK III。シリーズのコンセプトを受け継ぎつつ、進化の感じられるサウンドに仕上げられているのはさすがだ

T.F.A.Tの導入に伴って中高域が強まり、合わせてやや低音の量感を増やしたとはいうものの、帯域バランスは低音から高音まで大きな偏りなく、まんべんなく整っている。

種類の異なるドライバー同士の馴染ませ方もあいかわらず巧みだ。シャープでクリアなBAドライバーの中高音、空気感や余韻の豊かさを演出するダイナミックドライバーの低音。それぞれ個性は活かしながらもすり合わせ、全体的には引き締まった音に統一している。ダイナミックドライバー1基となった低域も、立ち上がりやタイトさでは見劣りしない。

中高域の印象が一新。明瞭ながら耳に刺さる事のない、聴き心地の良いサウンドになっている

しかし、従来のMAVERICKからガラリと印象を変えていたのが、中高域の印象だ。例えば、日本語のサ行のような歯擦音、またトランペットやサックスの高音。聴き手に鮮烈な印象を与えるけれども、出すぎると耳に刺さってしまう帯域が、ちっとも耳を刺激しないのだ。

次ページ主張の強い帯域も耳に刺さることなく、聴きやすさが倍増

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