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Google アシスタント ビルトインとは?

Google アシスタントが家電にどんどん入り込む − Alexa/Siriを含めた今後の展望

公開日 2018/06/06 08:00 海上 忍
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ところで、「Works With Google アシスタント」をうたう製品も存在するが、こちらは “Google アシスタントから命令を受けて動作が可能な” デバイス全般をいう。日本ではまだ目立たない存在だが、米国など海外ではコンセントや電球、掃除機などいろいろな種類がすでに販売されている。「ビルトイン」がOSにGoogle アシスタントの機能を組み込んだ製品を指すことに対し、Works With...にはネットワークに接続しクラウド経由で命令を受けられるが、人間の声を直接受け付けない製品も含まれる。

Googleは厳密な定義を設けていないようだが、マイクを備え、人間の言葉を受け付けられるデバイスが「Google アシスタント ビルトイン」、クラウド経由で(他機器に搭載の)Google アシスタントから指示を受け、何らかの処理を行うデバイスが「Works With Googleアシスタント」と理解すればいいだろう。

CES 2018では、Android Thingsベースのスマートディスプレイが展示されていた(写真は「Lenovo Smart Display)

ここまでGoogle アシスタントの話ばかりしてきたが、音声アシスタントサービスにはAmazon「Alexa」やAppleの「Siri」、LINEの「Clova」もある。結論から言うと、現実的な選択肢として家電製品に組み込み可能なサービスはGoogle アシスタントとAmazon Alexaの2択という状況なのだが、その部分を簡単に説明しておきたい。

一つは、サーバレスアーキテクチャ対応の有無だ。Google アシスタントは「Cloud Functions」、Amazon Alexaは「AWS Lambda」というFaaS(Function as a Service)を利用することで、開発者は任意のプログラム(関数)をクラウド上に実装できる。GoogleとAmazonはデータストレージサービスも提供しており、それらを組み合わせればクラウド上で動作し、リクエストを待ち続けるアプリを自由に開発できるのだ(活用事例はこちらを参照)。

一般的にアプリといえば、ローカルで処理を完結させる (内蔵ストレージに保存されたアプリをCPUで実行する)という構図だが、サーバレスアーキテクチャの場合、ほぼ全てをクラウドで処理できる。実際、Google アシスタントやAmazon Alexa向けに公開されているサードパーティー製アプリ(スキル)の多くは、サーバレスアーキテクチャにより開発されている。

筆者が試作したAmazon Alexa用スキル。プログラムはクラウド上に存在するため(FaaS)、テストにはWEBブラウザを利用する

もう一つは、機器への組み込みをサポートしていること。Googleは前述したとおり、Android TVやAndroid Thingsの家電製品へ組み込み可能なOSを提供している。AmazonもAVS Device SDKという、Linuxに組み込み可能なAlexa用開発ツールキットを用意しており、日本のメーカー向けにも3月から提供を開始している。

一方のSiriはといえば、Appleは家電製品でSiriを利用するためにHAP(HomeKit Accessory Protocol)という通信仕様を定義しているが、やり取りは家電とiOS端末間に限られてしまう。製品として販売する場合、認証用ICの搭載に加えてMFiプログラムの認証が必要になるため、コストも跳ね上がる。現状でサーバレスアーキテクチャがサポートされていないことも、長い目で見ればネックとなるはず。クラウドサービスおよび開発環境においては、GoogleとAmazonが大きく先行していることは確かだ。

Clovaは日本が開発拠点ということもあり、日本語の扱いに期待できる部分はあるが、本稿を執筆している5月下旬現在で、サードパーティーに開発用APIが公開されていない。IFTTTを利用したスマートフォンとの連携は可能だが、できることは取得したRSSを読み上げるなど限定的で、家電へビルトインできる段階にはない。

LINEでは3月からプラットフォーム企画職を募集するなど開発環境拡充への動きを見せるが、Android端末経由でLINEメッセージの送受信を可能にした完全ワイヤレスイヤホン「Xperia Duo」のように、コミュニケーションに特化した対応となる可能性もありそうだ。

では、家電への “ビルトイン” でGoogleとAmazonのどちらが勝者になるのか……そんな質問を受けることもあるが、少なくとも現時点では何ともいえない。

かなりざっくりいうと、開発環境に一長一短ある上、GoogleにはAndroid、Amazonにはeコマースというそれぞれの強みがあるからだ。機械学習/AIという伸び代の大きい分野も残されており、判断するにはまだ早い。おもな進化の場がクラウドであるだけに実感しにくいが、広い視野でこの先数年の進化を見守るべきだろう。

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