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銘機の系譜から分析する

【レビュー】ディナウディオの40周年記念スピーカー「Special Forty」ー 無色透明を極めた再現性

2017/08/03 井上千岳
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ありのままの低音が、当たり前のように鳴ってしまうことの素晴らしさ

自然な音の出方はいつもながらだが、Special Fortyでは特に低域の出方にまず注目される。非常に滑らかに沈んで、深いところまで何の無理もなく楽々と出てくる。ストレスがないのだ。また、だぶついた膨らみやにじみも皆無で、全くありのままの低音がいとも当たり前のように鳴っている。それが再現性の基本を決定していると言っていい。

試聴風景。リファレンスシステムにはいずれもアキュフェーズを使用。SACDプレーヤー「DP-720」、プリアンプ「C-3850」、ステレオ・パワーアンプ「A-70」という構成を用いた

ピアノの低音部がとにかくよく伸びる。ずっしりと深いしまた重量感もあるが、少しもぼってりすることがなく、タッチの明瞭さも響きの豊かさも自然そのものだ。

室内楽はさらに弦楽器の感触がなんとも快い。弦楽四重奏といっても古楽器による演奏という珍しい録音だが、古楽器らしい艶やかさと潤い、適度な粘りを併せ持った柔らかな弾力が様々に絡み合って展開するアンサンブルの綾が愉悦感たっぷりに描かれている。ヴァイオリンもチェロもほとんど付け足す必要がないほど申し分のない鳴り方である。高域の瑞々しい輝きや、トゥイーターの抜けのよさと色のなさを反映したものであるのに違いない。

ディナウディオの特質である空間の正確な再現性もいかんなく発揮

オーケストラは空間の広々とした、精密な再現に惹きつけられる。位置関係ステージに点在するホルンやフルートやティンパニーがその位置関係そのままの形で目の前に浮かび上がる。空間的な正確さはディナウディオの特質のひとつでもあるが、それも本機では飛び抜けた水準にまで達しているようだ。さらに弦楽器のアンサンブルが新鮮で生き生きとしている。低音弦がくっきりして深いことも全体の解像度に寄与しているが、楽器同士の分離がよく、大音量でも全く混濁することがないのだ。スピーカーの中でいま演奏が行われているような感覚が湧いてくる。

取材には、ハイグロス・バーチ仕上げのモデルを用いた

ジャズはキックドラムとウッドベースの明快さ、豊かさにまず驚くべきだ。とにかくよく出る。それも量感ばかり水膨れしているのではなく、ピッチも音色もはっきりしたまま低く低く沈んでいる。こういう明確さを出そうとすると普通は量感が犠牲になるものだが、このスピーカーは違う。ボリュームもたっぷり乗っているので、ライブで聴くのと同じ手応えがある。トロンボーンが躍動感に満ちているのは言うまでもないが、時にシャープに吹き上げるのがまたただのナチュラル系の音とは一線を画すところだ。反応が速いのである。

無色透明を極めたような再現性

本機は確かにディナウディオらしい典型的なナチュラル・サウンドではあるが、トゥイーターの主張のなさがこれまでにないレベルに達している。音調はほとんどウーファーが決定していて、トゥイーターはそれをそのままの形で上の方へ引き伸ばしているだけのように感じられる。だから色がない。この色のなさは、過去のディナウディオ製品の中でも随一と言っていいほどのものである。無色透明を極めたような再現性は、ディナウディオの存在感をまた一段高めたように思うのである。

(井上千岳)

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