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【特別企画】FS U5 SLIM/BS U5 SLIMを試聴

エラック「Uni-Fi SLIM LINE」を聴く ー 名匠が手がけた同軸ユニット搭載スピーカー

2017/02/17 山之内 正
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■FS U5 SLIMを聴く
同軸ユニットの完成度を物語るフォーカス感。余韻は奥行き方向にまで広がる

まず、フロア型のFS U5 SLIMから音を聴いてみよう。最初にオーケストラの音源(ショスタコーヴィチ交響曲第9番、ネルソンス指揮ボストン響)でレンジ感や情報量などの基本性能を確認する。

FS U5 SLIM

外見はスリムでウーファーも小口径だが、構えのしっかりしたスケールの大きなサウンドが展開することに驚かされた。駆動力に余裕のあるアンプを組み合わせたこともあり、家庭では大きすぎるぐらいの音量でも再生してみたが、打楽器や低弦の強奏でも頭打ち感がなく、瞬発力が強大。重心が低い低音だが、アタックがなまらないので、重く引きずるような音調とは対極にある。グランカッサの音像がぶれないことにも感心した。

3ウーファーということで音を聴く前はそのあたりが少し心配だったのだが、それは杞憂に終わった。余韻は左右だけでなく奥行き方向にも伸びやかに広がり、スケールの大きさを見事に引き出している。

鈴木雅明指揮タピオラ・シンフォニエッタが演奏したストラヴィンスキー『プルチネルラ』は、弦楽器の瑞々しい音色と管楽器の澄んだ響きが自然なコントラストを引き出し、起伏の豊かな演奏を繰り広げる。ソロを受け持つそれぞれの楽器の音像が非常に鮮明で、きれいにフォーカスが合っているのは、同軸ユニットの完成度の高さを物語っている。ワンポイントステレオ収録など、シンプルなマイク配置にこだわるBISレーベルならではのナチュラルな空間再現を素直に引き出していることにも感心させられた。

背面からみたところ。バスレフポートが合計3つ配置されている

FS U5 SLIMには、400LINEのフロア型モデルでも採用されたバー・タイプのベースプレートとスパイクを採用

今回、スピーカー後方にやや広めの空間を確保したとはいえ、試聴室のエアボリュームはそれほど大きくないし、左右の壁との距離もかなり近かった。そんな条件でも余韻がフワッと広がる感触を引き出すことができたのは少し意外だったが、そこにも指向性を精度高く追い込んだ同軸型ユニットならではのアドバンテージがありそうだ。

アレッサンドロ・ガラーティの「Seals」は、ジャズのピアノトリオとしては異色と言えるほど響きと音色を吟味し尽くした演奏、録音である。FS U5 SLIMで再生すると、スタジオとスピーカーの間に介在する余分な要素を取り去ったような澄んだ音場が広がり、ミュージシャンとの距離の近さを実感することができた。シンバルにスティックが当たる瞬間の引き締まった感触、バスドラムの余韻が上の方に抜ける心地良さ、テンションの高いピアノの高音域など、聴きどころはたくさんあるが、特にベースはE線の最低音まで音色が緩むことなく、いい意味でエッジの効いた音を引き出してくる。

■BS U5 SLIMを聴く
音場の透明感の高さは特筆小型スピーカーではトップクラスの水準

次に、ブックシェルフ型のBS U5 SLIMを同じ条件で聴く。オーケストラの量感はもちろんフロア型に一歩譲るものの、余韻が広がる空間の大きさと見通しについては、むしろ本機の方が鮮やかに引き出してくると感じた。ネルソンスのショスタコーヴィチは各パートの関係を克明に描き出しているので、再生するシステムを吟味すると、演奏のディテールを面白いほど豊かに聴き取ることができる。小型スピーカーで大編成の管弦楽を聴くのは一般的にはハードルが高いのだが、BS U5 SLIMはその制約を感じさせない。

次ページ一音一音が鮮明。トップクラスの小型スピーカーである

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