懐の深さを感じる幅広い表現力

新時代のシュアサウンドを体現。世界初コンデンサー型イヤホン「KSE1500」を野村ケンジが聴く

野村ケンジ
2016年12月08日
密閉型イヤホンとしては世界初のコンデンサー型ドライバー搭載モデル

E2cからカナル型イヤホンを、E5cから高級モデルを使い始めている自分にとって、シュアサウンドには格別の思い入れがある。モニターイヤホンとしてのクオリティの高さはもちろん、歌声や演奏を活き活きと、躍動的に描いてくれるサウンドキャラクターは、大好きな音楽を存分に楽しむために、いまや欠かせない存在となっている。

KSE1500

そういった、シュアならではの音楽表現を堪能することに関して、フラグシップモデル「KSE1500」はもってこい、ベスト・オブ・ベストな製品だと強く感じている。というのも、「KSE1500」は、密閉型イヤホンとしては世界初となる、コンデンサー型ドライバーを搭載したモデル。そのため、既存モデルとは一線を画す、新時代のシュアサウンドを実現しているからだ。

もちろん、それはBAドライバーやダイナミック型ドライバーを搭載する既存モデルの否定ではない。実際、筆者は現在進行形で「SE535 Special Edition」や「SE215」を愛用しているし、そもそも高級イヤホンの素晴らしさを知ったのが「E5c」だったりするので、ドライバーの種類にかかわらず、シュアらしさ溢れるサウンドを作り上げるチューニングの巧みさは常日頃から実感している。そのうえで、(音質的なアドバンテージを持ちつつも一部の高級ヘッドホンに採用されるのみだった)コンデンサー型ドライバーをどう料理しているのか、大いに興味を持ったのだ。

イヤホン部とDACアンプ部で構成されている

実際、そのサウンドは“素晴らしい”のひとこと。BAドライバー以上にきめが細かく、解像度の高い音質を持ちながらも、シングルドライバーのように自然な帯域バランスと音色傾向を併せ持つ、これまでのイヤホンでは体験できなかった、理想的なサウンドを楽しませてくれる。

たとえば女性ヴォーカルは、まるで目の前で歌ってくれているかのような、熱気溢れる歌声に生まれ変わっているし、かたやヴァイオリンは、奏でられた音のすべてをあまさず伝えてくれることで、普段より幾分強弱の強い、インパクトある演奏を聴かせてくれる。また、ライブ音源との相性もなかなか。ホールの響きや観客の声援などがリアルに伝わってくるので、自分も会場にいるかのような臨場感を味わえる。

そう、丁寧なニュアンス表現と細部までしっかり伝わる高い解像度感をもちながらも、けっして客観的でそつの無い音にこぢんまり纏まってしまうことなく、シュアらしい、躍動感溢れるサウンドを披露してくれるのだ。このあたりのサウンドチューニングの巧みさは、さすがというべきだろう。シュアサウンドが好きな人にとっては、たまらない製品に仕上がっている。


お気に入りのプレーヤーの特長を活かしつつ
KSE1500のサウンドを十全に引き出せる専用アンプ


いっぽう、コンデンサー型ドライバーを採用した故に専用アンプがセットとなっている点については、個人的にはかなりポジティブに捉えている。というのも、プレーヤーのヘッドホンアンプの出来不出来に左右されることが、随分と解消されるからだ。

イヤホンとDACアンプは6ピンLEMOコネクター接続。ケーブルの開発にも注力し、3年の月日を掛けたという

たとえば、iPhoneやスマートフォンと接続する場合、必ずといっていいほどヘッドホン出力のクオリティの低さが話題となるのだが、「KSE1500」専用アンプが持つデジタル接続によって、それが回避できる。かたやハイレゾ対応プレーヤーの場合はというと、こちらはアナログ接続を活用することで、プレーヤー自身の良質なラインアウトを活かしつつ、ヘッドホン出力のクセを緩和させることもできる。せっかく購入したお気に入りのプレーヤーを、単なるトランスポートとして利用するだけでなく、プレーヤーとしての音質的なクオリティや特長を活かしつつ、「KSE1500」のサウンドを十全に引き出せるという、なんとも絶妙な組み合わせとなってくれるのだ。

基本的な操作はボリューム兼用のノブで行う。ユーザー設定も可能なイコライザーも用意

底面のスイッチでアナログ/デジタル接続を切り替えられる

実際、筆者もアナログ接続メインで活用しているのだが、プレーヤーごとの音色傾向が顕著に感じられて、いろいろとつなぎ替えることが面白かったりする。たとえばアステル&ケルン「AK380」は、とてつもなく高解像度で、かつエッジのとがったキレの良いサウンドが楽しめるのだが、同ブランドのアンプユニットと接続すると、今度は抑揚表現がとても丁寧な、ややジェントル方向にシフトしたリアル志向のサウンドを堪能できる。

さらに驚くべきは、「AK70」との組み合わせだ。もともと、価格イメージを越える丁寧な表現とフォーカスの高い低域が魅力のプレーヤーだが、「KSE1500」との相性が抜群に良く、ヴォーカルがグッと前にせり出した、ダイレクト感の高いサウンドを聴かせてくれる。広がり感も良好で、スムーズで自然な音場感を味あわせてくれる。

念には念をということで、AKシリーズは第2世代「AK100II」や「AK240」なども試してみたが、おおむね良好な相性を示した。音質的には「AK240」がよりナチュラルなサウンドキャラクターに感じられたところが興味深く、いっぽう「AK100II」は音質的な良好さだけでなく、サイズ的にもピッタリだった。

いっぽうで、オンキヨー「DP-X1」との組み合わせもなかなか。こちらは「AK380」アンプユニットの音をさらにジェントルに、聴き心地の良いサウンドにシフト。ほんのちょっと艶ののった、活き活きとした歌声を聴かせてくれる。リラックスして長時間聴きたい人にはオススメだ。

しかし、ジェントルな方向性で理想的ともいえる相性の良さを誇ったのは、Questyleの「QP1R」だ。こちらと「KSE1500」との組み合わせでは、まさにオーディオ的な表現というべき、丁寧かつ繊細な、きめの細かいサウンドを聴くことができる。それでいて、シュアらしいダイナミックさは失っていないのだから面白い。


KSE1500の最大の魅力 ― “シュアサウンド”の進化

このように、「KSE1500」はプレーヤーそれぞれの特徴をあまさず拾い上げ、しっかりと表現してくれる。幅広い表現力をもつ、懐の深い製品でもあるのだ。もちろん、デジタル接続によってスマートフォンとは思えない高音質を実現できる点も嬉しい。しかしながら、アナログ接続することによって、数多ある中から選び出したお気に入りのハイレゾ対応プレーヤーならではの音質的な特徴やアドバンテージを大いに活躍させられるのは、いちオーディオファンとして嬉しい限りだ。

「KSE1500」というと、とかくコンデンサー型ドライバーやデジタル接続対応アンプユニットなどのハード部分が注目されがちだが、最大の魅力は、それらを搭載することでいかに“シュアサウンド”が進化したか、ということだろう。ゆえに、これまでシュアを愛用してきた人にとっては最新にして最良の製品といえるし、これからシュア製品を使ってみようという人にとってもベストの選択といえる。

誰でも手軽に手が出せるプライスタグではないが、それを踏まえたうえで手元に置きたくなる、魅力的な製品であることは断言しよう。




※この記事はシュア・ジャパン公式サイトから特別転載しています