HOME > レビュー > オススメ入門カートリッジ(2)1万円以下から買える!オーディオテクニカの定番モデル6選

ファイル・ウェブ「アナログレコード特集」

オススメ入門カートリッジ(2)1万円以下から買える!オーディオテクニカの定番モデル6選

公開日 2016/09/13 11:28 野村ケンジ
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

前回はカートリッジ交換の基本について解説したが、さて、今回からはいよいよ、オススメのカートリッジ製品の数々を具体的に紹介していこう。金額的には、ポータブルオーディオや自作PCの世界でも“手軽な価格"の上限と認識されている「3万円」までをひとつの区切りとしたが、どうしてもオススメしておきたい定番製品などは、その金額を超えるモノであっても、あえて掲載させていただくことにした。ということで、最初に紹介するのが、オーディオテクニカの製品だ。

いまや、ヘッドホンメーカーとして世界屈指の存在となっているオーディオテクニカだが、皆さんご承知の通り、アナログレコード用のカートリッジ製造からスタートしたメーカーで、現在も数千円クラスのエントリーモデルから数十万円のプライスタグが付けられたハイエンドモデルまで、幅広いラインナップを取りそろえている。

そのいっぽうで、アナログプレーヤー製品の純正カートリッジとしても数多くの採用実績をも持ちあわせるため、今回のような“アップグレード作戦"にはもってこい、まさに王道といえるブランドとなっている。ということで、ここではオーディオテクニカ製のカートリッジのなかでも、定番となっている製品や“アップグレード"に適した製品の数々を、実際に試聴した感想も踏まえて紹介していこう。

野村氏のリファレンスシステム

ちなみに、今回の試聴ではアナログプレーヤーにティアック「TN-570」を、フォノイコライザーにiFI Audio「iPhono 2」を活用させてもらった(両製品の接続にはサエク製のフォノケーブル「SCX-5000R-R」を使用)。なかでも「TN-570」は、製品そのものが10万円超クラスということもあってか、(カートリッジなどをカスタムせず)純正そのままでも十分なサウンドクオリティを持ち合わせている。そのため、カートリッジ交換による“確実なアップグレード感"を得ようとすると、それなりにシビアな製品チョイスとなるのだが、それが結果的にはうまく結びつくことができ、なかなかに絶妙な製品チョイスを揃えることができたと思う。特に、10万円前後までのアナログプレーヤーには太鼓判付きでオススメできる製品ばかりなので、大いに参考にして欲しい。

なお、試聴曲に関しては、今回はポップスやロックをメインにさせてもらった。ポップスは、アース・ウィンド・アンド・ファイアー「Raise!」の「Let's Groove」やkalafina「far on the water」の「ring your bell」、ロック系が定番「レッド・ツェッペリンIV」の「天国への階段」や、nirvanaベスト(再発売された45回転200g重量盤)の「You Know You're Right」など、名盤、新譜を織り交ぜたタイトルでチェックを行った。

オーディオテクニカ「AT100E」 ¥9,400(税抜)[製品詳細

実は、ティアック「TN-570」の純正カートリッジがオーディオテクニカ「AT100E」のOEM向けモデルを採用しているため、まず最初にこちらの試聴レビューを書かせていただくとともに「AT100E」自身の特徴についても紹介していこう。


AT100E
オーディオテクニカのカートリッジ製品をチェックしていると、「VM型」と呼ばれるタイプをよく耳にすると思う。実はこちら、オーディオテクニカ独自の方式で、2本のマグネット振動子をV字状に配置することで、振動系の性能を高めて理想的な動作を実現したというもの。基本的な構造や出力の大きさは「MM型」に準じている(フォノイコライザーなどはMM用をそのまま活用することができる)。

そんなVM型ラインナップのなかでも、定番中の定番といっていい製品がこの「AT100E」だ。接合楕円針やアルミパイプ製カンチレバーを採用するほか、継ぎ目のないコアを2枚積層することで高い発電効率と高域特性の良好さを両立。コイルにPCOCC材を採用することで、よりピュアな音楽信号の伝送を追求しているという。

なお、単体「AT100E」のほか、軽量アルミ製ヘッドシェルとのセット品「AT100E/HSB」もラインナップされている。カートリッジ交換初心者には、こちらがオススメだ。針圧は1.0〜1.8g(1.4g標準)となっている。

はたしてそのサウンドはというと、良好な帯域バランスと、広がり感のある音場表現が特徴。芯のしっかりした、落ち着きのあるサウンドだ。解像感は高いとはいえないものの、抑揚表現がとても丁寧であるため、全くといっていいほど気にならない。いっぽう、どちらかというとリアル志向の範疇に収まる音色傾向のおかげもあってか、幅広い音楽ジャンルに良好な相性を示すため、使い勝手も良い。まさに、リファレンスとしてひとつ持っていても間違いの無い製品といえるだろう。


クオリティチェック(-2〜2)
音の表現  広がり重視 ○●|○○  密度重視(-1)
音の再現  迫力重視  ○○|○○  音場重視(±0)
音の質感  クール   ○○|●○  ウォーム(+1)
帯域表現  低域重視  ○○|●○  高域重視(+1)
高域表現  煌びやか  ○●|○○  伸びやか(-1)
低域表現  硬い    ○○|●○  柔らかい(+1)



次ページ続いてオーディオテクニカ「AT95E」「AT120Eb」

1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE