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【特別企画】1964 EARSの技術を受け継ぐブランド

“第二の鼓膜”とは? 新生ブランド64 AUDIOのカスタムIEM「ADEL Aシリーズ」に迫る

2016/03/04 レビュー:NetAudio編集部 浅田陽介/記事構成:Phile-web編集部
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2015年末、“64 AUDIO”という新しい米IEMブランドが日本市場に登場した。低価格カスタムIEMの開発で日本でも注目を集める“1964 EARS”の創業者が、1964 EARSとは異なるコンセプトのハイエンドIEMを展開するブランドだ。


日本では現在までに、カスタムIEM“ADEL Aシリーズ”合計8機種が発売開始している。今回は64 AUDIO製品の核となる独自の“ADELテクノロジー”を軸に、注目の“ADEL Aシリーズ”に迫っていきたい。

ADEL Aシリーズ

<目次>
【1】 “64 AUDIO”のIEM開発思想
【2】 耳を守る独自技術“ADELテクノロジー”とは?
【3】 Net Audio編集長・浅田がADEL Aシリーズを試聴レビュー!


【1】カスタムIEMブランド“64 AUDIO”ストーリー

まずは、64 AUDIOがIEMに採用するADELテクノロジーの開発概要から迫っていこう。キーパーソンは、スティーブン・アンブローズという開発者だ。

▼世界初のワイヤレスIEM技術を開発したアンブローズ氏

アンブローズ氏は1965年に初のワイヤレスIEM技術を開発したという人物で、そのワイヤレスIEM技術はスティーヴィー・ワンダーやKISSなどの著名アーティストたちに提供されてきている。

スティーブン・アンブローズ氏

そんなアンブローズ氏は、ヘッドホン/イヤホン製品の一般普及に伴い、「難聴の音楽リスナーが増えること」を危惧した。特にイヤホンリスニングの際にイヤホンから生じる音圧は、鼓膜に損傷を与える恐れがある。また、誰でも音楽を携帯できるポータブルミュージックプレーヤーが一般に普及する時代を迎えてからも「必然的にイヤホンで音楽を聴く機会が増えるということになり、鼓膜に負担をかける機会が増えることに繋がる」とアンブローズ氏は考えていた。

そこで、音楽リスナーの難聴リスクを減らせるよう、アンブローズ氏は音圧が鼓膜に負担をかけないようにする技術の開発に取り組んだ。そこで開発されたのが、音圧を吸収して外に逃がす仕組み“RealLoudテクノロジー”で、このRealLoudテクノロジーをIEMに実装できるようにしたのが“ADELテクノロジー”だ。名称は「AMBROSE DIAPHONIC EAR LENS」からきている。



ADELテクノロジーの開発は、耳にかかる負担を減らして鼓膜の筋肉の緊張を取り、自然にイヤホンリスニングを楽しめる技術として、全米科学財団と国立衛生研究所からの助成金を受けてスタートした。70年代から開始した開発は、実に40年以上にわたったという。このADELテクノロジーを世界的に広めるため、アンブローズ氏は米国のトップサイエンティストらと共に、Asius Technologies LCCを設立する。このAsius Technologies LCC設立を期に、独自のカスタムIEM開発を行ってきたブランド 1964 EARSとの出会いが生まれる。

▼1964 EARSとADELテクノロジーの出会い − 64 AUDIOからカスタムIEM展開へ

続いて、64 AUDIOというブランドについて紹介していこう。冒頭で述べた通り、日本でも馴染みのあるカスタムIEMブランド 1964 EARSが関わってくる。実はこの1964 EARSブランドを運営してきたのが、64 AUDIOという名の会社組織だ。これまで64 AUDIO社が、1964 EARSというブランドを掲げてカスタムIEM開発及び販売を行ってきた。

鼓膜に負担をかけないというADELテクノロジーのメリットに注目した64 AUDIO社(1964 EARSブランド)の創業者Vitaliy Belonozhko氏は、ADELテクノロジーを搭載したアーティスト向けのIEM開発のため、Asius Technologies LCCとの技術協業を発表。低価格帯でコスパの高いイヤモニ開発を行ってきた1964 EARS製品とは異なる路線の、ハイエンドIEM制作を行うことを決定した。

Vitaliy Belonozhko氏

取り組みの第一歩として2014年11月6日に、Asius Technologies LCCと共同で「ADELテクノロジーを搭載するIEMの製品化」をテーマに、Kickstarterで出資を募った。一週間で目標資金20万ドルを集めることに成功し、さらに開発品目にマイクリモートケーブルを追加するなどして目標資金調達を35万ドルに変更するが、これも10日ほどで達成。さらにその後、“U-Series”(ユニバーサルシリーズ。日本未展開)向けのシェルカラーオプション追加や、開発品目にカスタマイズイヤホンケースの追加などを行い、最終的に同年12月14日に約65万ドルを調達して製品開発がスタートする。公式発表によれば、支援者はトータルで1,296人にのぼったという。

そして2015年、ADELテクノロジーを搭載するハイエンドIEM製品の販売にあたり、64 AUDIOの社名をそのまま冠したブランド“64 AUDIO”を立ち上げたという流れだ。

次ページでは、64 AUDIO製品の“核”ともいえる独自技術ADELテクノロジーについて、Aシリーズの実機写真と共にご紹介する。

次ページ耳を守る独自技術“ADELテクノロジー”とは?

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