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「GROOVE-TUNED PORT」で低域に厚み

【レビュー】Aurisonics“BRAVO”シリーズを聴く。音質・装着性に注力した新シリーズの実力とは?

公開日 2015/09/08 10:00 中林 直樹
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「基本」に「応用」を加えることで多様な個性が現れた

では、この「EVA-BLUE」から試聴してみよう。使用したのはいずれもハイレゾファイル。Pizzicato One『わたくしの二十世紀』から「あなたのいない世界で」、ORIGINAL LOVE『ラヴァーマン』からタイトルトラック、中島ノブユキ『散りゆく花』から「エスペヒスモ 〜蜃気楼〜エレガンテ・コン・モート」など。

Pizzicato One『わたくしの二十世紀』

Astell&Kernのハイレゾ対応ポータブルプレーヤー「AK120II」と接続した。ちなみにインピーダンスはHARMONY-GOLDとFORTE-REDが18Ω、後の2モデルは16Ωとポータブル機でも非常に鳴らしやすい設計。

Pizzicato Oneではフィーチャーされた女性ボーカルをマイルドに表現した。バックに配されるチェロやアコースティックギターの低域とまとまるようだ。ORIGINAL LOVEでもやはりボーカル部にフォーカスしたような音づくり。重低音の迫力や高域の伸びはやや物足りないが、全体としてラウドになり過ぎないのが好ましい。

ORIGINAL LOVE『ラヴァーマン』

また、中島ノブユキのこの曲ではバンドネオンが牽引役として活躍するのだが、その音色が浮き立たず、ストリングスやピアノと混ざり合う。このまろやかさこそが新開発のφ9.25mmダイナミック型ドライバーの素の味わいなのだろうか。

「EVA-BLUE」のひとつ上位のモデル「KICKER-GUNMETAL」から「GROOVE-TUNED PORT」が採用されているのだが、早速その効能を感じることができた。たとえばPizzicato Oneでは、冒頭のアコースティックギターの低域が深みを伴って響き出す。チェロの鳴りも同様で、音楽全体の濃度がアップしたように感じた。

ORIGINAL LOVEでは、ベースやドラムスがぐっと前方に迫り出す。重心が低く、勢いのあるそのサウンドはコンサートPAとまでは言わないが、大きなスピーカーから聴こえる音の雰囲気と近い。中島ノブユキでもこってりとした濃厚サウンドが堪能できた。バンドネオンは太く、ストリングスは低域が強調され、音楽の底から盛り上がりはじめる。

中島ノブユキ『散りゆく花』

続いてハイブリッドタイプの「FORTE-RED」を聴く。Pizzicato Oneでは、ボーカルに透明感やリアリティーが加わり、バランスドアーマチュア型ドライバーの利点を感じさせる。ただし、アコースティックギターやチェロの深みは失われておらず、バランスのとれたチューニングがなされているのがわかった。

また、ORIGINAL LOVEではこれまでの2モデルよりも広い音場を狙っているように思える。ボーカルやエレクトリックピアノ、ドラムスなどが左右に大きく、そして力強く広がってゆく。そんな立体感のたっぷりのサウンドは中島ノブユキでも同様。バンドネオンやストリングスなどの伸びやかさとうねりが両立した。音の立ち上がりも俊敏だ。アコースティック楽器主体のこうした音楽と最もマッチするのではないだろうか。そこでジャズも聴くことにした。

山中千尋の新譜『シンコペーション・ハザード』。これはラグタイムを基調にした新作である。「イージー・ウィナーズ」を聴くと、大胆にあしらわれたエレクトリックピアノが伸びやかで、高域には輝きも感じられた。低域も余すことなく描き出し、中島ノブユキで感じたような2つのドライバーのコンビネーションの良さを思い知らされた。

山中千尋『シンコペーション・ハザード』

最後は最上位モデルの「HARMONY-GOLD」。山中千尋はドラムスも含め、各楽器の響きがタイト。そのため分離感や立体感が引き立ってくる。ピアノの弱音も丁寧に拾い上げ、高域もクリアだ。ORIGINAL LOVEでは、勇ましいほどのスピード感がある。ボーカルのニュアンスやハリもしっかりと表現。鮮度も上がるようだ。中低域も鈍くならず、音楽を的確に下支えしている。

さらに、Pizzicato Oneでもフレッシュなボーカルが聴けた。声がさらりとし、若返ったかのようにも思える。アコースティックギターの鳴りも深い。思わず聴き入ってしまう。すると、3分44秒というトータルタイムがあっという間に過ぎてゆく。また中島ノブユキはストリングスが滑らかで、かつ不要な色づけがない。さらにバンドネオンは楽器としての音色の面白さを感じさせつつ、他の楽器とも調和している。それはまさに、製品名通りの音づくりだ。

ダイナミック型ドライバーという「基本」をしっかりと押さえつつ、「GROOVE-TUNED PORT」やバランスドアーマチュア型ドライバーといった「応用」を加えてゆく。その手法で多様な個性が、ここに姿を現したのである。

(中林 直樹)

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