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日常リスニングにもマッチするDJヘッドホン・AKG「Y55」をレビュー

公開日 2014/12/08 10:00 中林直樹
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ヘッドホンやマイクロフォン分野で、ハイエンドやプロユースを軸に製品を展開してきたオーストリアのAKG。近年ではそれらと平行してカジュアルな製品を積極的に展開しはじめた。その象徴が今年の8月から上陸を開始したYシリーズである。ボディにブランドロゴを大胆にあしらった「Y50」や、コンパクトなオンイヤー型で低価格も狙った「Y40」などがラインアップされている。


Y55
ここで紹介するのはDJスタイルヘッドホン「Y55」である。なにゆえにDJを謳うのか。ひとつは2,000mWという高耐入力を可能としていることが理由に挙げられる。DJブースなどの騒がしい環境で、ヘッドホンにたとえ大音量が流れたとしても壊れる(ドライバーユニットなどに不具合が生じる)危険を回避できる。普段使いではなかなかそんな心配をする必要はないが、ドライバーユニットに余裕があるとも言え、歪みっぽさを抑えられるメリットもある。マグネットにはネオジウムを採用し、レスポンスの良い音を狙った。

2つ目は素材と構造にある。ヘッドバンドには剛性の高く、かつしなやかなエラストマーを採用し、ラフに使っても壊れにくい。ハウジングは90°回転させることが可能で、さまざまなモニタリングスタイルに対応してくれる。

また、コンパクトかつフラットに収納可能。DJはレコードやCDなど何かと持ち運ぶ荷物が多くなるものだ。そんな際にもこの小ささはありがたい。カラーはブラック、ブルー、レッド、ホワイトが用意されている。

コンパクトかつフラットに折りたたみが可能。キャリングポーチも付属する

DJユースを視野に入れたヘッドホンはとかく、ヒップホップシーンを意識した派手なデザインを纏ったものが多い。Y55はそれらとは対極で、シンプルであか抜けた佇まいだ。それは後述するようにサウンドにも表れている。なお、ケーブル長は1.2mで着脱することができ、スマートフォン対応のマイク付きリモコンを搭載する。

Y55は全体的にシンプルでスッキリした佇まい。ヘッドバンドにはAKGのロゴが配されている

イヤーパッドも肉厚。L/Rも判別しやすい


■低音だけでなく、立体感や解像感にも優れる


プリンス『アート・オフィシャル・エイジ』
ではプリンスの新作『アート・オフィシャル・エイジ』を聴いてみる。44.1kHz/24bitのFLACファイルだ。これをハイレゾ対応ポータブルプレーヤーに収めて試聴した。まず感じたのは、シンセベースやドラムスの低域に十分なパワーがあること。しかも、ただ聴こえるのではなく、タイトで膨らみ過ぎないところに好感が持てた。特に、このアーティスト独特のシンセベースの音色がしっかりと耳に伝わって来る。それは『1999』や『パレード』 『サイン・オブ・ザ・タイムズ』といった過去の名盤でも聴けたものだ。長年のプリンスのキャリアを脈々と流れる、まさに通奏低音なのか…。そんなことも考えされられるほど、ベースの溌剌とした鳴りに耳を奪われた。エレキギターのカッティングも解像度が高く、立ち上がりも速い。ボーカルの粒立ちの良さも感じた。

また、「WHAT IT FEELS LIKE」では、アンディ・アローのボーカルがフィーチャーされている。その声の強弱や抑揚も丁寧に描き出している。楽曲に詰め込まれた音の輪郭が明瞭で、しかもそれらがきれいに配置されているようなイメージだ。オンイヤータイプなので、一般的には音漏れが気になるところだ。だが、イヤパッドの素材や厚み、ヘッドバンドの側圧などが巧みにバランスして、密閉感が高く遮音性能にも優れている。また、それが音楽を余すことなく聴かせてくれる要因にもつながっている。


フライング・ロータス『You're Dead!』
ジャズやヒップホップなど様々なジャンルの音楽を、独自のセンスで取り込み、カオス的かつダークなサウンドを提示する、フライング・ロータス。新作『You're Dead!』(44.1kHz/24bit)はハービー・ハンコック、スヌープ・ドッグ、サンダーキャットなどを呼び込み、ややジャジーな方向に。混沌としたサウンドはいつものとおりだが、サウンドは意外にも解像度が高いのが特長だ。そんな音楽を「Y55」は、プリンスでもそうだったように、立体的に聴かせる。サックスやベース、キーボード、サウンドエフェクトなど、盛り込まれた音のメロディーラインや強弱が聴き分けられる。各パートで異なるビートを刻んでいるようで、実は一体感がある。いくつもの要素を織り上げてひとつのサウンドにする、そんなフライング・ロータスの音づくりの秘密さえ見えてくるようだった。

DJユースというと低音がことさら強調されている製品が多い。確かに、DJブースの中では音楽と音楽をつなぐため、低域のリズムを聴き取ることが肝心だ。BPM(Beats Per Minute)をコントロールし、次曲へスムーズにつなげるためである。Y55はその点をもちろんクリアしている。しかし、ポイントとなっているのは、普段のリスニングにも有用だということ。立体感や解像感という点でも、DJユースではないモデルとも十分に張り合える。そこにこのブランドのインテリジェンスと気品を感じた次第だ。

【Yシリーズレビュー一覧】
・「Y50」レビュー:http://www.phileweb.com/review/article/201410/31/1393.html
・「Y45BT」レビュー:http://www.phileweb.com/review/article/201410/31/1394.html
・「Y40」レビュー:   

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