AKG「Y50」レビュー − 大胆デザインと正統派サウンドを併せ持つ「音楽を愉しむためのヘッドホン」

折原一也
2014年10月31日
ヘッドホンブランド「AKG」は、芸術の都として知られるオーストリア・ウィーンに拠点を置く名門ブランドだ。プロフェッショナル・オーディオ製品の開発をルーツに持ち、日本でもスタジオ・モニターヘッドホン「K812」を頂点とするKシリーズなどで知られる同社が、この秋新たに世に送り出したのが「Yシリーズ」(関連ニュース)だ。

新「Yシリーズ」の最上位モデル「Y50」。大胆なデザインが目を惹く

Yシリーズの第1弾として登場した「Y50」のデザインは、ヘッドホン業界のなかでも衝撃的、そして革新的なデザインと言えるのではないか。「AKG」のロゴをハウジングに配した、大胆で若々しくもファッショナブルなデザインは、伝統あるブランドのイメージを大きく覆す。ちなみに、Y50を始めとするYシリーズの”Y”とは、”Young Pro”を意味し、これまでのKシリーズとは異なる層をターゲットにしている。デザインを手がけたAKGのデザイナーのラファエル氏(これまでPS VitaのUIデザインなどを担当)も2013年に入社したばかりというのだから、フレッシュな感性で生み出された事は間違いない。

デザインを手掛けたRafał Czaniecki氏

Y50のカラーバリエーションはブラック、イエロー、ティールブルー、レッドの4色。筆者が実際に手にしたのはブラックのモデルだが、つや消し加工が施されたアルミブラックのハウジングに、光沢感のあるブラックというデザインが実にクール。ハウジングにアルミを、ベルトにはステンレス素材を使ったシンプルなデザインは、「Y50」の目指すスカンジナビアンデザインらしく、素材の質感を活かし、大胆であると同時に細部の意匠にまでこだわり抜いた、上質感を醸し出すものとなっている。

ビスやハウジング周りに「Y」の意匠があしらわれるなど、細部まで気が配られている。ドライバー部分の「Y」は、音質向上にも寄与しているとのこと。


大胆なデザインだが、色のトーンやツヤ感のバランスにより、けばけばしくならず上質感を醸し出している

AKG流に料理された「音楽を愉しむためのヘッドホン」
どんな音楽ジャンルにもマッチ


「Y50」はファッション性に優れた外観ばかりに目を奪われがちだが、音を聴いてみると思わず唸らされるような高音質を実現しているのだ。

まずY50は、クラブのフロアの低音を彷彿とさせるような余裕たっぷりの重低音を備えていることを最初に述べておきたい。

筆者のリファレンス曲であるDaft Punkのアルバム『Random Access Memories』を聴いてみた。開放型を得意とするAKGのヘッドホンは低音の再生はヌケの良さを押し出したものが多かったなかで、Y50は密閉型ヘッドホンらしい体の芯まで響き渡る重低音が心地良い。一方、中高域については特に高域にカラリとした独特の華やかさを合わせもっており、空間のスケール感も広大。ダンス系ミュージックならではの、包み込まれるような音場を生み出した。

試聴音源のトーンをガラリを変えて、生音の多い女性ジャズボーカルのSHANTIの『BORN TO SING』でも、意外なほどしっかりと鳴らしてくれることも確認できた。低音は量感タップリでムーディーな雰囲気を生み出してくれる上に、中高域は線は細めながら、空気の振動まで伝わるようなウェットな質感で声を前に引き立てる。音場の広さと定位感も本機の持ち味となっており、アコースティックギターの再現性も抜けるような空間の広がりが心地良い。

よりカジュアルに『ラブライブ!』のアニソンの試聴を試聴しても、バンド演奏とボーカルのセパレートが明瞭で、ポップス向けの分解能も持たせている。ボーカルはパワフルな勢いよりむしろ、空間の中にピタリと声の立体的な定位を生み出し、バンドから演奏から差別化を明確にしているタイプ。いずれにせよ音数の多い音源のなかでもバックバンドの曲のなかでも、声を印象的に引き立ててくれるので、声メインのリスニングにもマッチする。音数の多いポップスやアニソン用ヘッドホンとしても、特に重低音のパワー感を同時に両立させるチューンとして上手くバランスが整えられている。

重低音、空間スケールの広大さ、そしてボーカル曲も立体的に鳴らす三拍子揃ったサウンドと、優れたファッション性を併せ持った「Y50」。AKG流に料理された音楽を愉しむためのヘッドホン、と呼ぶのが相応しいだろう。