最新シリーズ「Performance」についても話を聞いた

独ULTRASONE本社で「Editionシリーズ」の製造現場を見た − その驚くべきクラフトマンシップとは?

山本 敦

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2014年11月14日
ULTRASONEのドイツ本社を山本敦氏が訪問。究極の“こだわり”を詰め込んだULTRASONEの限定プレミアムヘッドホン「Editionシリーズ」がどのように製造されているのか、そのモノづくりの現場をレポートする。さらに、そのDNAを受け継ぐ新作「Performanceシリーズ」も確認することができた。

ウルトラゾーンは2013年に業務拡張のため現在のオフィスに移転した。元々は農家だった建物をリフォームしたという、アンティークな趣のある社屋だ

音質・デザイン・マテリアル、全てにおいて“ヘッドホンの常識”に囚われずに理想を追求しているULTRASONEのプレミアムヘッドホン、「Edition」シリーズ。ハイレゾという言葉がまだオーディオに浸透していなかった2006年に、シリーズ最初のモデルである「Edition 9」が発売された。ULTRASONEはマスター音源のクオリティに日々対峙するプロのスタジオエンジニアから信頼を得て、成長してきたブランドだ。いま改めて初期Editionの音を最新ハイレゾプレーヤーで聴いてみると、驚くほどに忠実な再現力が実感され、時代がようやくEditionに追いついてきたことがよくわかる。

音質やデザインはもちろん、マテリアルにもこだわり抜いた限定プレミアムヘッドホン「Editionシリーズ」。左から密閉型ヘッドホン「Edition 8 Romeo」、オープンエアー型ヘッドホン「Edition 10」、そして「Edition 5」

そのEditionが生産されているドイツのULTRASONE本社を訪ねて、こだわりのモノづくりの現場に触れる機会を得ることができた。本社はドイツ南部バイエルン州の州都・ミュンヘンから車で1時間ほどのWielenbachという豊かな自然に恵まれた小さな町にある。本社に巨大な工場や生産装置があるわけではなく、同じバイエルン州に拠点を構えるパートナー企業が各パーツをそれぞれの工場で製造。ULTRASONE本社では集められたパーツの品質チェックや最終の組み立て作業が行われている。今回は2件のパートナー企業の工場も訪ねてきた。

ULTRASONEのCEOであるマイケル・ウィルバーグ氏(右)と、COOのマイケル・ジルケル氏(左)

長閑な南ドイツのバイエルン地方にウルトラゾーンの本社をはじめ、今回訪問した金属メッキ加工や木工製作の企業が拠点を構えている

ドイツらしさにあふれるクラフトマンシップ

最初はEditionのハウジング製作と金属メッキ加工を担当する企業に足を運んだ。ドイツの人気観光ルートであるロマンチック街道のクライマックス、フュッセン近郊にある。ここでは金型から「Edition 8」や「Edition 10」のハウジングを作成して、メタルコーティングをかけるという一連の流れを覗かせていただいた。

左写真はコーティング処理されたハウジングを乾燥させているところ。右写真は、塗装が終わったEdition 8のハウジングを掛けておくための専用ハンガー。約90個のハウジングが45分で塗装できる

圧巻だったのは「Edition 8 Romeo」のハウジングにも採用されている「PVDコーティング」の装置。クリーンルームに配置した専用の機械により、パラディウムなど金属をプラマガスのアルゴンと反応させて物理蒸着塗装を行うことで、ハウジング表面に硬質なコーティングを形成する。スタッフによれば、「蒸着塗装のメリットとしては塗りの厚みが色味を調整しやすく、加工時間も早い」ことだという。

メッキ工場にて


「Edition 8 Romeo」のハウジングにも採用されているPVDコーティングは、写真の装置で一気に塗装する

ラボにはEdition 8 Romeoのカラバリを選んだ際の試作サンプルがずらり。PVDコーティングのメリットの1つは、ナノメーターレベルで厚みや色合いが容易にコントロールできること


左写真は「Edition 10」の金型。重量143kgの金型背面から樹脂を流し込んみ、右写真のハウジングのパーツを形成する



次は木工製作の企業に足を運んだ。普段はカスタムオーダーの高級家具を多く手がけている木工のスペシャリスト集団だ。こちらでは「Edition 5」のハウジングをつくる工程を拝見した。

生産完了となったEdition 5のハウジングやEdition 10、Edition 8のインレイ、ヘッドホンスタンドを製作する木工製作所を訪問。Edition 5の埋もれ木によるハウジングは、大型の自動掘削機械で大枠の形をつくってから一つずつ手作業でヤスリを掛けて細部を整える

大型の加工機械を使って一枚の“埋もれ木”の板材から左右のハウジングを彫り上げていく。できあがったパーツはひとつずつ手でヤスリをかけながら細部を整える。スタッフによれば「埋もれ木はとても堅い木材なので、一枚板のどこかに節目があるとヒビが入ったり歪みが生じてしまう」のだという。形を整えた後はラッカーで計7回コーティングしていく。コーティングをかける度に木が変形するので、毎度表面をサンドペーパーで平らに磨きながらコートしていく作業の繰り返しだ。ハウジングのパーツを1ペア作るのに約2時間はかかるという、相当な集中力と根気を要する作業だ。

木工所にて


大型の木材加工機械に1枚の「埋もれ木」をセット。「Edition5」のハウジングになるパーツを作っていく

自動掘削機にEdition 5のハウジングのCADデータをプログラム。左右のハウジングを一度のプロセスで加工する


片耳側の片面が仕上がるまでおよそ7〜8分前後。最初にハウジングの内側を掘り、続いて板材を裏返して表側を加工する。埋もれ木は非常に堅い材質のため、元もと材木にヒビが入っていたり、節目があると機械掘削が狂うこともあり、歩留まりは低め。掘削したパーツを計6回コーティング。Edition 5のエンブレムを貼り、サンドペーパーで細部を磨いて整えながら、ハウジングをワンペアつくるのに約2時間かかるという…


Edition 8 Juliaのインレイ。木製の本体に薄く加工した貝を、一つずつ色味を確認しながら貼り付ける。最終的にハウジングの高さに調節しながら、薄い木の本体を丁寧にヤスリ掛けして高さを合わせる。エッジの部分には柔らかな丸みを付けている


左写真はEdition 10のゼブラーノ製インレイ。強度を得るために薄い板を2枚重ねて、曲げ加工を施すために裏側から切り込みを入れている。右写真はEdition 10のハウジングにインレイを装着したところ


こうしてできあがったパーツがULTRASONEの本社に到着して、社内のスタッフによりハンドメイドで1台ずつ組み立てられる。ドイツの巧みたちの技と情熱がひとつになって、Editionシリーズは次第に形を成していく。

新社屋でのヘッドホン組み立ての様子をレポート

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