旗艦機Grandiosoの思想を凝縮したモデル

エソテリック一体型SACDプレーヤーの新フラグシップ「K-01X」を聴く

大橋伸太郎
2014年10月31日
昨季から続く現象として、ディスクプレーヤーの新製品が活況を呈している。ハイレゾダウンロード配信全盛の時代だというのに、である。プレーヤーソフトやDAC、PCとの不適合でしばしば再生エラーを起こすこともあるデジタルファイルに対して、CD/SACDの安定した再生互換性が見直されたことが背景の一つに挙げられよう。

そして、CDの音質がこのところ非常によくなっている。ドイツグラモフォン(クラシック)の有力アーティストの新譜がe-onkyoからハイレゾファイルで平行して発売されているが、96kに対する44kというハンデがあるものの、音質は一長一短…というか、しばしば音場表現が対照的な部分があって興味深い。CDにはCDの魅力がある。こうした背景で、ディスクプレーヤーの価値とニーズが高まっているのである。

国内オーディオメーカー各社から、ディスクプレーヤーの意欲作が続々と発表されている。その中でひと際注視される存在がエソテリックの「K-01X」である。同社は昨季“Grandioso(グランディオーソ)”というイメージシンボル的なプレステージを発売し、数々のアワードを受賞した。その中のトランスポートが「P1」である。容易に想像が付く事だが、K-01XはP1のエッセンスを投入したトランスポート/DAC一体型ディスクプレーヤーである。

K-01X

ディスクプレーヤーの心臓部はメカニズムである。エソテリックは高精度のドライブメカVRDSを自社開発・生産しディスクプレーヤーに搭載、このカテゴリーで世界のリーディングメーカーに躍り出て座を譲らない。K-01Xには、P1(¥2,500,000)と同一のVRDS(VRDS-NEO「VMK-3.5-20S」)が搭載された。これは凄いことである。さらにP1と比較してみると目立つ違いはトランスでK-01Xの方は、LDAC用、RDAC用、メカ専用、スピンドルユニット用の4トランス構成としている。

K-01Xが搭載したVRDS-NEO「VMK-3.5-20S」

VRDS-NEOのスピンドルモーターの駆動用には、専用のスピンドルサーボドライバー「VS-DD」を搭載


専用のトロイダル電源も搭載
DACは旭化成エレクトロニクスのステレオDAC「AK4495S」を各chに4基搭載。バランス出力なので差動8回路16出力で動作する。ここもD1と基本的に同じ着想。同社がエソテリックの要求に最も応え、ボードテストでメカユニットの志向する音質と一致したことで採用したという。P1と共通で下位機種K-03Xと大きく異なるのがドライブにシャッター機構を搭載することで、外部からの音圧振動の影響をシャットアウトする。

■“Grandioso”「P1」「D1」と共通の、色付きがないニュートラルサウンド

試聴は東京多摩市のエソテリック本社で行った。使用機器は、プリアンプにエソテリック「C-02」、パワーアンプに同「Grandioso M1(×2)」、スピーカーシステムにタンノイ「Definition DC8Ti」を使用した。

最初に再生した数曲のソロピアノ(CD/SACD)で打たれたのが帯域の圧倒的な広さであった。新装されたティアック本社試聴室は30畳を有に越す広さで天井が高く、スタジオと呼んだほうが似つかわしい空間である。その空間を使い切るように前方に広々深い音場が現れ、原寸大のコンサートグランドピアノが出現する。ディスクの音楽情報を出し切りノイズの妨害を完璧に排除しているためである。ディスク再生に関してほぼ完璧なアキュラシー(正確性)を実現した印象だ。ジッターやエラーというデジタルディスクにつきまとう問題を現時点で最も制圧したプレーヤーといえよう。

音の質感はグランディオーソP1/D1と共通で色付きがないニュートラルサウンド、音のエネルギー量が非常に高い。ショスタコーヴィッチ交響曲第5番(EXTON OVGL-00017 アレクセイエフ指揮、アーネム・フィルハーモニー)の第4楽章のオケの荒ぶる表現を、一切矮小化せずに再現する。加えて楽器セクションの色彩感が豊かだから、聞き手を演奏の真只中に連れ去るリアリズムがある。

本機は、光/同軸デジタルに加え、USB入力でDSD2.8/5.6MHz、PCM384kHz/32bitに対応する。USB伝送時はアシンクロナス伝送もサポート。DSD5.6MHzのJ.S.バッハ/ゴルトベルグ変奏曲(MA Recordings 伊藤栄麻(pf))は、安定した再生でかつ5.6MHzらしい分解能の精密感があり音場が澄み切っている。しかし、無色透明、無味乾燥ではない。汚れがなく中間色が豊富で美しい。剛体設計と高品位パーツによる物理特性を極めた結果出現したエモーショナルなオーディオの境地、エソテリックらしい〈知・情・意〉のバランスがとれたプレーヤーといえよう。

(大橋伸太郎)

関連記事