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世界的DJとのコラボモデルの音質や使い勝手を中林直樹がレポート

フィリップス「A5-PROi」レビュー。オーディオ用でも活躍するプレミアムDJヘッドホン

公開日 2014/07/22 11:52 中林直樹
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■様々なスタイルのDJにフィットする再現力を有するヘッドホン

では、EDMの代表格で、音質にも優れたダフト・パンクの『Random Access Memories』を聴いてみた。まず感じたのは引き締まったベースラインだ。ドライバーから次々と目の覚めるような低音が繰り出される。音がいつまでも振動板に貼り付かず、耳の奥に飛び込んで来るようだ。確かに低域にフォーカスがあたり、腰の据わった音づくりだが、決して鈍重にならないのが好ましい。ボーカルやシンセサイザーが明瞭なおかげで、立体的でさえある。

様々なジャンルの音楽を使って、A5-PROiのサウンドを確認した

ロックも聴いてみよう。このところのリファレンス、BECKの『Morning Phase』だ。音場の程よい広さが特徴的だ。これはあまたあるDJ用ヘッドフォンでは感じることの少ない部分だ。また、ここでも低域の充実ぶりを感じた。アコースティックギターやピアノの低音はボーカルの周囲に優しく広がる。そのため空間の密度が非常に高く感じる。ドラムスもタイトで輪郭が曖昧にならない。

ジャズボーカリストとしてキャリアをスタートさせたホセ・ジェイムズ。ブルーノート移籍第二弾の『While You Were Sleeping』をリリースした。エレキギターをフィーチャーしつつ、ロックやソウル、ヒップホップなども飲み込んだ刺激的なアルバムだ。それは現在進行形の、いや一歩先行くジャズの姿かもしれない。アルバム冒頭、それを象徴するエレキギターが立ち上がってくるのだが、そのエッジがシャープに表現されている。他のパートとの分離感も高いため、ニュアンスが伝わってくる。同時にどこかひりひりとした感触さえもたらされた。ボーカルは伸びやかだ。ベースやドラムスの低音部分もその芯をしっかりと感じさせるが、演出的にならないところを高く評価したい。この音ならトランス系は言うに及ばず、さまざまなジャンルのDJたちにフィットするだろう。



<主な試聴アルバム>左上:Daft Punk『Random Access Memories』 右上:BECK『Morning Phase』 左下:Jose James『While You Were Sleeping』 右下:中村善郎『ボサノヴァの歴史』

最後にアーミンの得意とするトランスとは、サウンド的にほぼ真逆の傾向にある作品も聴いておこう。日本におけるボサノバの第一人者、中村善郎の最新作『ボサノヴァの歴史』だ。彼の歌とギターを中心とした温かな雰囲気に溢れた1枚である。本機の充実した低域は、ボーカルやガットギターの自然な深みとなって現れた。数曲で加わるチェロも厚みと滑らかさが調和して耳に心地よい。

■低域再生だけに拘泥しない、「音楽的情緒」にあふれたサウンド

DJ用のヘッドフォンとして開発されたA5-PROi。使い勝手の良さとモニター性能の高さで、多くのDJがこぞって手にするモデルとなるに違いない。加えて、低域再生だけに拘泥しない、「音楽的情緒」にあふれたサウンドは、一般のリスナーをも必ずや魅了することだろう。

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