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<山本敦のAV進化論>第2回

ハイレゾをワイヤレス伝送「WiSA」は「有線よりも高音質」? − 詳細をキーマンに訊く

2014/04/02 山本 敦
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メーカーや特性の異なる製品を組み合わせても、WiSAの認証テストに合格した製品同士であれば高品位な再生環境をつくることができる。受信機を内蔵するスピーカーなどの機器には、製品ごとに異なるアコースティック性能がプロファイルデータとして登録されており、送信側でこれを読み取ることで、受信機の特性に合わせ込んだ音場補正やボリュームコントロールが行われる。この仕組みの特徴を鎌田氏は「簡単に、完璧なかたちでレベル調整が行える」と表現する。

WiSA用回路を組み込んだ基板

送信機から受信機へ伝送可能な距離は、屋内約10m四方/14m対角。96kHz/24bitロスレス伝送時のレイテンシーは2.6ミリ秒で固定。アクションゲームのようにシビアなタイミングが求められるコンテンツを扱うのにも好適だ。マルチch再生時のスピーカー間ディレイは独自のタイムシフト技術により約5マイクロ秒以下と極小化されている。

ブライアン・ウィリス氏

さらにスピーカーなど受信機機の側にはリクロック回路を搭載したことで、「品質の高いオーディオケーブルで接続するよりも低ジッターを実現している」と鎌田氏は強調する。8つのチャンネル全てで、送信機から送られたオーディオ信号を受信機で受け取る際にパケットを揃えてから再生することから、「有線接続よりも高音質なワイヤレスオーディオ」だと鎌田氏は胸を張る。

スピーカー側に設置する基板

今回の取材で、サミットセミコンダクターの視聴室に設置されたWiSAのデモシステムでBDのマルチサラウンド再生を試聴した。プロトタイプモデルによるものだが、実際のサウンドを体験した感想も述べておこう。

試聴に使用したスプロトタイプのアクティブピーカー

スピーカー背面。電源コードのみでスピーカーケーブルは接続されていない

各チャンネルともに再生がピタリと揃い、驚くほどに透明な空気感を備えたサラウンド再生だ。ノイズフロアが全体的に極めて低く、今までに感じられなかった鮮度の良いサラウンド音声を味わえる。

鎌田氏は「各スピーカーに積んでいるリクロック回路や、マルチチャンネルスピーカー間の低遅延性能が優れていることによる効果も大きいのだろう」と説明。「リクロック回路の効果がとても大きい」と言葉を続ける。今回聴いたデモシステムはスタンダードなスピーカーをベースに制作されたものだが、ハイエンドクラスのサウンドと遜色ないパフォーマンスを実現していた。

一般的なワイヤレスオーディオに起こりがちな「音切れ」の発生が非常に少ないこともWiSAの特徴だ。その背景には他のワイヤレスオーディオ技術には前例のない、ある特殊なアプローチがある。


■音切れ回避と高音質化のための独自技術

WiSAのワイヤレス伝送規格は5GHz帯のIEEE802.11aが基本。日本国内で使用できる周波数である5.1GHz帯には4つのチャンネルがあり、ひとつのチャンネルあたり20MHzのバンド幅が割り当てられている。11aの技術が出始めた頃は5GHz帯は電子レンジやBluetoothの干渉を受けにくく、使用する機器が少ないことから安定した通信が行えるとされてきたが、同じ5GHz帯を使用する「11n」や「11ac」などの最新規格が登場してきたことで、対応機器も増えてきた。今では以前よりもずっと5GHz帯の帯域が混み合っていて、対応機器が発生させる電波の干渉が起きやすくなっている。

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