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丁寧に調律された楽器のようなイヤホン

フィリップス“Fidelio”の最上位イヤホン「S2」で中林直樹が注目ハイレゾ音源を聴く

公開日 2014/02/28 10:30 中林直樹
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『Lost Memory Theatre act-1』の最後を飾る「Petal」は、ピアノを中心として、ギターやベース、フルートが重奏する。特にピアノにはしっかりとした芯があり、そこから広がる余韻も深く、美しい。そして「劇場」に集められたミュージシャンやオーディエンスが、家路についてゆくかのような寂しさも感じさせる。映画でいうならエンドロール的な効果をもたらしているのだ。耳と心を包むようにして、やがて音楽は終わる。

■ホールの響きの余韻まで再現してくれる

もうひとつの作品はリリースされたばかりの、ピアニスト中島ノブユキの『clair-obscur(クレール・オブスキュア)』(5.6MHz)だ。埼玉・秩父ミューズパーク内の音楽ホールで録音されたピアノソロアルバムである。一台のピアノが紡ぎ出すのは、アルバムタイトルが示すように、明かり(clair)と暗がり(obscure)というアンビバレントな要素がブレンドされた世界だ。楽曲は全て中島のオリジナルである。そして、演奏はジャズ的なインプロビゼーションを一切排し、あらかじめ用意した譜面と向き合った丹念極まるものだ。

中島ノブユキ『clair-obscur』(5.6MHz/1bit)レーベル:SPIRAL RECORDS 配信:e-onkyo music 3,000円/アルバム

ピアノはイタリア人ピアニスト、アルド・チッコリーニが所有していた名器グロトリアン・シュタインベックを、中島の知人の調律師が譲り受けたものだという。それをホールに持ち込み、エンジニア奥田泰次氏がレコーディングを敢行した。それは、ホールの響きを幾分多めに含ませた、優しげなサウンドとして仕上がっている。

ホワイトモデルも用意されている

S2で聴く『clair-obscur』は、ただマイルドなだけではない。弱音強音がくっきりと描かれるため、音楽の起伏や濃淡が伝わってくる。また、ホールの響きや余韻と、セミオープンバック形式とは相性が良いようで、音がこもって聴こえることはなかった。特に6曲目「reflection #2」では、低域成分を多く含んだ演奏だが、その力強さや厚みを感じることもできた。ピアノから音が大きく膨らみ、ホールの隅々にまでゆきわたり、そしてゆっくりと空気の中に消えてゆく。これは、三宅の作品でもいえることだが、やはりDSDの長所であろう。静謐な音楽だが、音場は豊かで高密度だ。


中林直樹の評価
次いで聴こえてくる「clair」は中高域のミニマルなフレーズに、低域で構成されたメロディーがオーバーダビングされている。中高域は適度に拡散し、低域はそこに堆積するかのようだ。そんなストラクチャーも鮮やかに浮かび上がってくるのである。楽曲、演奏、音色、響き。それらのいずれもが高いクオリティを有していることを、S2は教えてくれた。






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