【特別企画】大橋伸太郎が徹底視聴

東芝<レグザ>「Z8」画質インプレッション ー 「プレミアム2K」の実力に迫る

レポート/大橋伸太郎
2013年11月25日
前回・第1回目のレポートでは、東芝<レグザ>の“プレミアム2K”モデルである「Z8」シリーズに採用された直下型広色域LEDバックライトシステムなど、高画質機能を一つずつ詳しく紹介してきた。今回は画質レポート編として、評論家の大橋伸太郎氏が視聴した「Z8」シリーズのインプレッション報告をお届けしよう。


東芝<レグザ>の“プレミアム2K”モデル「Z8」シリーズ
Z8シリーズから「55Z8」「47Z8」の2モデルの視聴は東芝本社の視聴室で行った。筆者が持参したBDタイトルは4点で、全てシネマのコンテンツモードに新設された「4KマスターBD」で視聴した。

『ザ・マスター』:驚くべき中間色の再現力と、4KのZ8Xに迫る解像感

『ザ・マスター』は太平洋戦線から復員したものの、社会に復帰出来ずにいる男と彼を受け入れた新興宗教教祖の愛憎を描いた作品で支配と隷属を描くが、個人と国家の関係の比喩とも取れる。

後半の重要なエピソードに教祖ランカスター・ドッドが信者宅でセッション(施術)を行うシーンがある。教祖の妻(エイミー・アダムス)の瞳の緑色が、マインドコントロールされたフレディ(ホアキン・フェニックス)の目には、妻が囁きかけるまま青に変わり、次に黒に変わっていく。


Z8シリーズを視聴する大橋氏
筆者は劇場でのデジタルシネマ上映を見た後、各社の4Kテレビ、ディスプレイでこのシーンを見ているが、本来の瞳の色である灰色がかった緑が映し出されたのは、Z8とZ8Xだけである。4Kプロジェクターで100インチ超のインチサイズに投射した場合も、緑から次の青への変化が分かりにくい。これでは映画のテーマである精神的支配と隷属の恐ろしさが表現出来ない。Z8がそれを表現出来るのは、広色域で中間色が正しい色相のまま鮮鋭に再現できることと、直下型でしかも従来比で非常に輝度パワーのあるバックライトを分割駆動したことで、ピンポイントで色解像度の鈍らないヌケのよい再現ができることによる。その一方、エッジ型で同様の再現の出来るZ8Xも褒めなければならない。

『ザ・マスター』のこれに先立つシーンでは、信者の家の前庭で戯れあう教祖とフレディを被写界深度の浅い望遠レンズで捉えているが、レンズの合焦範囲が極めて正確に表出され、ジャストフォーカスの二人と芝生の描写は、パナフレックスのファインダーを肉眼で覗いてレンズをマニュアルで追い込んだような厳しい精度があり、鳥肌の立つような克明感は2KにしてZ8Xの4K解像度に迫るものがある。


『ゼロ・ダーク・サーティ』:暗部に潜む豊かな映像情報を忠実に映し出す

次にZ8で見た作品が『ゼロ・ダーク・サーティ』。やはり「4KマスターBD」で視聴した。本作のクライマックスが、ビン・ラディンのアジトを深夜0:30分(題名の謂れ)、2機のステルスヘリに搭乗したSEALS(米特殊部隊)の精鋭が急襲するシーンである。


コンテンツモードは「4KマスターBD」を選択した
パキスタン北部の荒涼たる山野を息を潜めた獣のようにステルスヘリの機影が飛行していく場面がCGで描かれるが、ここでは戦争という人類悪の否定しがたい凄絶な美がある。階調のボトムに近い暗さのために、少なからずディスプレイが暗部階調の表現で破綻し、黒が浮き上がったり、あるいはRGBの合わせ込みが破綻し不要な色付きが出たりする。黒を早めに引き込んで潰してしまえば破綻を回避できるが、Z8はそれを潔しとせず暗部に潜む豊かな映像情報を忠実に映し出していく。

ステルスヘリの機影が掠めていく夜の底の山野の起伏を、清流の川底を覗いたように生々しく描き出し、臨場感を画面一杯に漲らせる。これでこそ、キャスリーン・ビグローが本作で企図した体験型映画のコンセプトが全開になるというものではないか。

続くシーンでさらにZ8が真価を発揮した。ステルスヘリがパキスタンの都市部に侵入していくと地表に人家の灯火がポツンと現れ始めるのだが、Z8で見るとか細い灯火の輪郭が膨張せず引き締まり一つ一つの明るさ、色温度、形が全て違う。寂寥感と一体の緊迫感がつのる。極小面積で輝度変化する被写体を滲みなく描き分ける表現は、拡散板を介した表現では至難の域であり、Z8が従来の直下型でも到達しなかった世界にまで踏み込んだことが分かる。


『ヒッチコック』:色彩の奥から滲み出るような解像感と豊かなディテールを再現

3つ目の映画が、『ヒッチコック』。名作『サイコ』(1960)の製作裏話である。ご承知の通り『サイコ』はモノクロ映画である。映画として対照的な効果を出すのと、全盛期ハリウッドの華やかさを印象付けるカラフルな色彩設計がなされ、クロマレベルも高く設定されている。

Z8で見ると厚塗りの色彩の奥から滲み出るような解像感と豊かなディテールが浮かび上がる。本作はデジタルで色彩調整されているが撮影の段階で照明等に工夫が凝らされ、家庭用のテレビで見る場合、シーンによって色彩が上滑りして俳優(アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン)の肌がイエロー、マゼンタ系に濁る場合が多い。Z8は見事にそれがない。中間色、この場合はスキントーンの認識が的確で透明感を失わず白人らしいスキントーンのバランスを保持する。3Dカラーテーブルの動作が的確に行われている証左である。


色域設定は、映像メニューからオート/x.v.Color/色域復元/標準(BT.709)の4種類が選択できる
中程で『サイコ』の主演女優ジャネット・リーに扮したスカーレット・ヨハンソンがヒッチコック夫妻と面談するシーンは、往年のハリウッドセレブが乗り移ったかのように、ヨハンソンの輝くばかりの白い肌が陶器のように艶やかに描写され、解像力の高さとあいまって質感の高さは指でなぞっているかのような錯覚に囚われるほどだ。


『さよならドビュッシー』:細やかな音声の再現力にも優れるサウンドシステム

「レグザサウンドイコライザー プロ」の効果を日本映画『さよならドビュッシー』で確認した。本作はドルビーTrue HD アドバンスド96kHz/24bitアップサンプリングで収録されている。音楽をモチーフとした軽い味のミステリーだが、日本映画としてサウンドデザインは出色である。

主人公の少女が火事で死別した従姉妹の幻を見るシーンは、子供時代に姉妹のように育った幼い二人の密やかに囁きあう声、彼岸から彼女を呼ぶ従姉妹の言葉にならない呟きが、やっと聞き取れるかどうかの最弱音で表現される。つまり母国語映画ならではの発声とニュアンスが表現出来るかが本作を再生する上での決め手である。

Z8シリーズに搭載されたスピーカーユニット

スピーカーの奥行きを高めるラビリンス型構造を採用。低域の共振周波数を低下させたことで低音の再現力が高まっている

Z8ではS/Nがよく、付帯音が抑えられているので上記の細やかな音声がはっきりと伝わる。音量をある程度上げて聞かねばならないが、スピーカーの磁気回路を強化し、アンプのワッテージを上げた分、音量を上げても歪が少なく汚い音にならない。

まとめ

直下型エリアコントロールバックライトとハイダイナミックレンジ補正、広色域復元と4Kに盛り込まれていない技術提案が<掛け算>になり、Z8の映像が生まれた。しかし、掛け算の結果得られたものは意外にも、映像の濁り、曇り、くすみといった妨害要素を<引き算>して生まれた、原画に肉薄した映像である。

そこに現れる艶、色、彩。第一章で描いたように東芝技術陣にとってZ8Xの4Kは目的でなく「高画質に至る手段」である。Z8は別の手段によって同じ頂をめざした。家庭用テレビでついぞ見られなかった、映像の輝くばかりの<素顔の美>という形容をZ8に与えたい。




【SPEC】
<55Z8>
●画面サイズ:55型 ●チューナー:地上・BS・110度CSデジタル ●端子:HDMI入力×4、映像入力×1、音声入力(L/R)×1、光デジタル音声出力×1、LAN×1、USB×4、ヘッドホン×1 ●消費電力:277W(待機時0.15W) ●外形寸法:1241W×758H×190Dmm(スタンド含む) ●質量:17kg(スタンド含む)

<47Z8>
●画面サイズ:47型 ●チューナー:地上・BS・110度CSデジタル ●端子:HDMI入力×4、映像入力×1、音声入力(L/R)×1、光デジタル音声出力×1、LAN×1、USB×4、ヘッドホン×1 ●消費電力:208W(待機時0.15W) ●外形寸法:1071W×662H×190Dmm(スタンド含む) ●質量:13.5kg(スタンド含む)

<42Z8>
●画面サイズ:42型 ●チューナー:地上・BS・110度CSデジタル ●端子:HDMI入力×4、映像入力×1、音声入力(L/R)×1、光デジタル音声出力×1、LAN×1、USB×4、ヘッドホン×1 ●消費電力:198W(待機時0.15W) ●外形寸法:960W×599H×170Dmm(スタンド含む) ●質量:12kg(スタンド含む)



【問い合わせ先】
東芝テレビご相談センター
TEL/0120-97-9674




大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。

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